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ボッチ21 ボッチと武技



『では、武技の話に戻りますね』


女神様が再び武技の話に戻す。


「どうすれば使えるんですかね?」


俺も元の話に戻そうとはしない。

引っかかりは残るが、あそこで終わらせておくのが懸命だと勘が告げているからだ。


取り敢えず話してみたらそこまで変な発言では無かった。この結論が一応は得られたのだからそれでいい。

そこで止めておくべきだ。


『簡潔に言えば、武技は魔力を対価に型を引き出すものです。つまりゲームのように、魔力があれば同じ技を何度でも使う事が可能です。感覚的には、一時的にその身に英雄を宿すかのように、完璧な技を使えます。残念な言い方をすれば超補正ですね』

「じゃあ、魔力を流せばいいんですね?」


早速俺は手で十字を作りながら、魔力を流してみる。

どう流せば良いかは聞いていないが、多分手に集中させれば何とかなるだろう。


『いや、ですからゲームのような技であって、更には型も決まっていますから、そんな光の巨人みたいな技は―――』


うわっ!

貯まり過ぎた!

スパークがまで発生している!

暴発しそうな雰囲気だ!


取り敢えず放出!


バシュンッッ!!


すると透明の雷とビームの狭間のようなもの、透明の真っ直ぐな雷の光線が出た!


直線上にあった木はベキベキと折れ裂け、薙ぎ倒される。

派手に爆発したりはしておらず物理的な破壊のみだが、それでもちょっとした空き地程の面積が拓けた。

オリジナルには遠く及ばないだろうが高威力だ。


魔力を止めると、透明の雷にバラけ消える。


『なんかそれっぽい技、使えましたね……』

「どうです? 俺の初の武技は!」


全てが狙った通りでは無かったが、どう見ても見事な必殺技。

少し胸を張りながら女神様の感想を待つ。


『いや、それは武技ではありませんよ』

「へ?」


しかし待っていたお褒めの言葉は無かった。


『魔力を流すと言っても、あれはただ魔力を放出しただけです。そもそもまず前提として、スキルありきの技が武技です。魔力を放出して攻撃する“魔力弾”と言う武技もあるそうですが、これは無属性魔術の武技、つまり貴方には発動出来ません』

「じゃあ、あれは? 結構な威力が出ましたけど?」

『普通の魔力放出です。魔力操作と大量の魔力による力技ですね。この流れで言うのもあれですが、魔力弾よりも高難易度かつ高威力ですよ。何故貴方は毎度難易度の段を踏めないんですかね? しかも毎度奇行付きと、せめて行動だけでも普通にできないんですかね?』


聞けば武技を使うよりも凄い事をしたのに、何故か貶される。

しかし奇行の辺りは弁明も何も出来無い。

ちょっとハイになって試してしまったが、十字ビームを出すのは確かに奇行。厨二病どころかチビっ子がやる様な事だ。


くぅ〜、やるなら亀の拳法の方にすれば良かった!


『そう言うところです。奇人に奇行をするなと言う方が間違いだったかも知れませんね』


嫌味と言うよりも、溜息と共に素でそう言われた。


……以後、気を付ける事にしよう。


幸いまだ現地人に会っていないし、高校デビューならずの異世界デビューのチャンスがまだ俺には残されている。

まだまだ挽回出来るどころか、友達百人も夢じゃない!


『うぅ………貴方と言う人は』


そんな決意を固めるとハンカチ片手の女神様。


「本当に俺の事、何だと思っているんですか!?」



何故か俺もハンカチを持つハメになったが、やっと本格的な武技の説明に入る。


『実のところ、貴方は既に武技を使用していました。鑑定です』


武技を知る過程でかなり脱線してしまったが、答えはとても単純なものだった。


「えっ? あれが武技だったんですか?」

『正確には、戦闘と関係のない技を文技と呼ぶのですが、呼び方以外は全く同じです。スキルがあるだけで対価を支払えば達人級のことが出来る、それが武技ですから。そしてさっきの光線のような一から構築する技は武技ではありません。簡単に本来なら出来ないレベルの技を使える、この点が武技の最も大切な要素です』

「じゃあ、鑑定みたいに念じるだけで使えるんですか?」


思えば、アイテムボックスだって当たり前のように使えている。

魔術のように術式を覚えるまでもなく、使おうと思うだけで使えた。

それにギフトだって、悔しいがボッチギフトに関しては自由自在、超変身だって使おうと思えばそれだけで使える。


『スキルによって違います。鑑定やアイテムボックスのように元々出来ない行為に関しては、スキルがあるだけで使える場合が多いです。しかし剣術など元々スキルがなくとも出来る行為だと、スキルだけでは使えない場合が多いです』

「普通出来ないスキルの方が簡単に使えるって変ですね?」

『そうでもありません。普通に出来る行為は出来てしまうからこそ武技の障害となります。

例えば剣術の武技“回転斬り”ですが、剣を持って体を軸に回転する必要があります。つまり仮に簡単に発動出来たとして、元々の体勢を整えておかないと大惨事に発展します。発動した時踏ん張っていたら足を盛大に捻りますし、だからと言って体重をかけないと剣が何かに衝突した場合そちらが軸となり体の方が回転してしまいます。

武技と通常の行動が一致しなければそもそも武技の形にならないんです。武技が通常の行動よりも優先される事もありません。同時に動いてしまいます。脳は一つでも、武技は意思だけで発動してしまうものですからね。

対して鑑定やアイテムボックスは元々出来ないものですから、動きを阻害しようがありません。だからスキルがあるだけで使えるそうです』

「魔術の場合はどうなるんですか?」

『魔術も一応剣術などと同じく、通常の行動も一致していなければ使えません。変に意識して魔力を動かこそうとすると、魔術が破綻しますから。しかし完全に同じでもありません。

まあここら辺は実際に試した方が早いでしょう。“ファイヤーボール”……は危ないので“ウォーターボール”を使いたいと念じてみてください』


うん、俺も女神様に同感。

ファイヤーボールは危ない。

火の魔法は暫く封印だ。


「念じるだけでいいんですか?」

『はい、それだけで結構です』


出でよウォーターボール!


うわっ! 念じただけで出た!

術式も組んでいないのに自動で組まれた。

しかし早くて便利なだけじゃない。


「なんか消費魔力が、自力で発動したときよりも多いような?」

『それが武技の特徴です。勝手に発動してくれる分、魔力が対価に必要な訳です。そして魔術の場合は元々魔力を必要としていますから、武技で魔術を発動する場合、負担が大きくなってしまいます。剣術などの武技で例えると、二回武技を使用しているようなものです。

しかし武技で魔術を使うのが主流です。低難易度で強力な魔術を使えますから。そして武技として使うからこそ、真の術式を教えられる者が極端に少なくもあります。そこで魔術師は主に武技としてしか魔術を使えず、それに伴って魔力量の多い者しか魔術師に向かなくなっています。なので、魔術師はそこそこ希少らしいですよ?

魔力量も多く自力で魔術を発動出来る貴方は結構有望株ですよ?』


おっ、珍しく女神様がお褒めの言葉をくれた。


『とてもそうには思えませんが』


いや、女神様は女神様だったらしい。


でも、悪口っぽくても、悪意は感じない。


もしかしてこれまでの悪態も女神様の優しさだったのかも知れない。

俺は今までこんな面と向かって悪口を言われた事が無かった。

友達がいな……少ないからだ。


認めてくれていたからこそ、そう言ってくれたのかも知れない。


思い返せばいつもそうだ。ふとして失言して怒られても、悪意自体は無かった。


あっ、女神様の耳が、微かに赤くなった。



本編三周年連続投稿は今話で最後です。

次話はおそらくハロウィン投稿になると思います。それ以前に何かしらのいい祝日があれば投稿するかも知れません。とりあえず通常日の投稿の予定はありません。あっても祝日からの連続投稿になります。

長い目でお待ち頂ければ幸いです。


因みに、これでも完結してこそ意味のある作品なので、最後までは続ける予定です。

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設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。ボッチは本編のアンミール学園で裸体美術部(合法的に女性の裸を見ようとする部活)の部員です。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
ボッチと同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

兄弟作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
ボッチと同じ部活に属する皇帝が主人公です。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
ボッチと同じ学園の風紀委員(ボッチ達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

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