ボッチ20 ボッチと必要技
「で、どうやったら早くスキルを上げられるんですか?」
『実現出来るかはともかく、方法としては簡単です。目指すスキルレベルで使えるようになる力を自力で使えれば簡単に上がります』
「それってめちゃくちゃ難しいんじゃ?」
『はい、ですがそれにも抜け道が有ります。武技と言うものです』
「武技?」
武技と言われて思い浮かべるのは、ゲームキャラクターの技。
ゲームによってはアクティブスキルとか呼ばれているアレだ。
でもアクティブスキルのレベルを上げようとしているのに、アクティブスキルを使うのは矛盾している。
実行できる時点で求めるものを持っている。
『貴方の思い浮かべるアクティブスキルと、貴方の持っているアクティブスキルは全くの別物です。貴方の持っているこの世界のアクティブスキルは技ではありません。現に水属性魔術は技ではなく魔術の分類です。
ですが、武技は貴方の思い浮かべたアクティブスキルとほぼ同等のものです。必殺技のようなものですね』
「おお必殺技! そんなのがあったんですか!?」
さっそく試しに腕を十字にクロスさせたり、両掌を球を掴むようにして引いてみたり、頬に電気を溜めようとしてみるも、うんともすんとも言わない。
もう少し型に拘らないと駄目か?
アイテムボックスから、大量の衣装の中に紛れ込んでいた赤白帽を取り出す。
そしてつばを縦にして装着。
再び十字。
ダメ押しで超演技発動!
我ながら完璧な構えだ。見よ! この完璧な猫背!
しかし何も出て来ない。
こうなれば赤メガネも装着。
額でダブルピース。
やはり出ない。
サイズの問題かな?
よくよく考えたら赤メガネは変身アイテムだし。
超演技をしたところで差異が有り過ぎる。
気を取り直してオレンジの道着に着替える。
こっちは外見上人間だし何とかなる気がする。
そして何故かこちらは衣装一式が揃っていた。
後はツンツン頭にしてと。
「か〜〜〜!」
…………。
「〜〜〜〜!」
両掌を開いて何か溜まってくるのを待つも、何も来ない。
「め〜〜〜!」
まだうんともすんとも言わない。
これはサイズの問題ではない。
この場合はきっと中身だ。
俺は安全第一の平和主義者。強い奴を見つけてワクワクしたりしないし、闘った後に仲間になるようなコミュ力を身に着けていない。
会っただけでポンポン友達になるパリピでは無いのだ。
俺は友達をしっかり選ぶ人間。
断じて居ないのではなく、基準が医師免許取得ぐらい難関なだけだ!
…………ぐすん。
気を取り直して別の方向から。
髪を赤に染め……早速難関にぶち当たった。
流石に染料は無い。
この様子だと流石に電気鼠の必殺技とかは無理そうだし…どんな必殺技を試すべきか?
『……ごほん。そんな事しても必殺技は出せません。試すのは結構ですが言われる前に察してください』
そんな風に考えていると、女神様がイタイ子を見る目で俺を見てきた。
『貴方は一体何歳ですか?』
「……男の子はいつまでも幼心を忘れないんですよ……」
振り返れば随分恥ずかしい事をしていた。
また黒歴史だ……。
「それで、本当はどんな必殺技なんですか?」
『人が主人公のゲームみたいな技です。ドラゴンのクエストのような。それなら何となくイメージ出来ませんか?』
「何となくなら」
そうならそうと早く言ってほしかった。
『ゲームで言うアクティブスキルのようなものだと初めから言ってました。必殺技の部分だけを聞いて行動したのは貴方です。人のせいにしないでください』
「それならそれでもっと早く止めてくださいよ! 絶対俺を弄んでいたでしょう!?」
『はい』
「即答!?」
『さて、武技の話に戻りますが』
「気にも止めない!? もはや俺で遊ぶのは当然なんですかね!?」
『そんな当たり前の事はさておき、武技の話をしますね』
本当に何事も無かったかのように俺の訴えをスルー。
俺の人権どこ行った!
『貴方と共に有りますよ。ただし私にも神権と言うものが有ります。つまり貴方に人としての権利が保証されるように、私にも神としての権利が保証されているんです。神々は見守るお仕事ですから、相手のプライバシーを気にしなくても良いんですよ』
「なんですかその本物の免罪符みたいな権利!? と言うか本当に有っても基本的人権の尊重って言葉知らないんですか!?」
『知っていますが私は神なので守る義務はありません』
本当に神様かこの神!
『考えてもみてください。貴方達人間は動物を愛護します。しかしトイレは丸出し、閉じ込めつつも壁の無い檻。それと同じようなものです』
「人間をペット扱い!?」
『つまり神々は貴方達人間を愛していると言う事です』
「今の話からどうやってそこに飛びました!?」
『人間からして動物に動物権はありません。しかし動物に対して責任を持とうとします。それでいて新たに動物を飼いならそうとする。つまり権利や義務では無く、枷をはめる分責任を持とうとするんです。住む場所を奪った分何とかしようと、飼うと決めたからには最期まで面倒を見ようと。
そしてそれを成り立たせるのが愛です。愛故に動物に関心を向ける。愛故に自ら責任を持とうとする。だから根底にあるのは愛なんです』
「つまりプライバシー無視して見るのも愛故だと、そして義務は無くても結局愛しているからその分は保護するって事ですか?」
『まあそんな所ですかね。我々は面白……じゃなくて好きであることが始まりと言う事です』
今、面白いと言おうとしていたが、結局人間を愛しているからこそ見ているから義務が無くても果たすと捉えていいのだろうか?
好きが何よりも優先されるから他はどうでもいいとかじゃ無いよね?
うん、その筈。
少なくとも動物だとその筈。
……なんか女神様の微笑みが恐ろしげに見えてくる。
いつも俺の心を読んで来るのに、こんな時に限って沈黙の微笑み。
せめて何かを言ってほしい。この状況で何も言わないのは、本当に言えない事だからだと思えてしまう。
はっきり言ってくれた方が冗談だと思える。
『勿論、前者ですよ』
ふふふと笑みを浮かべながらも、そうはっきり言った。
いやいや、はっきり言うのはこっちじゃない!
いや内容的にはこっちを圧倒的に求めるべきだけども!
と言うか今答えるって、前者って、俺の心を読んでいたって事だよね!? 何故このタイミングで発言!?
『勿論、貴方をからかう為です』
「…………女神様、俺を一体なんだと思っているんですか?」
『玩具』
はっきり言われてもこの発言はどうしてだか冗談っぽく聞こえない。
『でも安心してください。人類を玩具と思っている訳ではありませんから』
「何だ、もうからかうは止してくださいよ? ん? でも?」
何故かこの接続詞が引っかかるが、まあ気のせいだろう。
そう言う事にして、しておく。
次話までは何とか今日中に投稿出来ると思います。おそらくきっと多分……。




