ボッチ123 ボッチの戦略級魔法
年末年始投稿です。
衝撃的光景、それは衝撃的に過ぎる。
ショッキング過ぎる光景は悲惨過ぎる光景よりもある種ショッキングで、理解が出来ない。
女神様が鼻血を流すほどにショッキング。
滅茶苦茶良い言い方をすれば愛し合っている光景が、そのままぼやかして言えば酒池肉林の惨状を肉だけ再現した様な目を覆いたくなる光景が広がっていてた。
しかも、ボーイズでラブな、もしくはおっさんずでラブな…………。
な、何故?
何がどうしてそうなった!?
と言うか、肉林の時点であんな大戦の後で何故!?
戦勝パーティーかなんかして盛り上がり過ぎたとか何か!?
それにしたって気にしなきゃいけない怪我人とかいるでしょう!?
それでもまあ、八割以上演出でしかないと思うが映画とかで決戦前後のラブシーンが無い訳ではない。
決戦前では、これが最後になるかも知れないからと、決戦後では約束を果たし結ばれるなどして、よくある事と言えない事もない。
だが、ほぼ全員揃ってと言うのは聞いたことが無い。
そして何より、何でゲイゲイホモホモしてんの!?
あまりに予想外の出来事に、思考が停止しかけるが、女神様ははいはい分かりますよと頷いていた。
「これは、最近流行りの真実の愛に目覚めたと言うやつですね」
聞いて損した。
酔っ払い腐神の言うことなど、元より当てになる筈が無かったのだ。
「……獣欲に染まりまくっていると思いますけど?」
「同性間では生殖活動は子を成せないので当然意味はありません。つまり、同性愛とは性欲を廃した純愛、この世で最も尊き形の一つなのです」
「……じゃあ、避妊していれば純愛で、妊活していたら性欲の塊なんですか?」
「異性間の時点で完全な生殖活動は成立しますので、どちらでも関係ありません。だからこそ、BLは至高なのです」
「世間一般には、寧ろ完全な形から離れれば離れるほど変態と呼ばれるようになると思いますけど?」
「異性間ではそうでしょう。しかし、同性間では生殖活動の模倣はそれ以上なき正道です。ある種完成された形で真の性欲となる事はない。つまり、至高なのです」
ちょっと何を言っているのか分からない。
分かったのは、女神様が強めの腐神だったという事だけだ。
なんか、女神様の理論を聞いている内に、最初に見て感じた衝撃が無くなってきた。
今すべきは状況把握。
その中でも何が起きているのかなど、現在進行系の情報などどうでもいい。
見ての通りでしか無いだろう。
問題なのは何故こうなったかだ。
本来、それを知る為には考察を重ねる必要があるが、今回は女神様が録画していたと言う。
ならば、それを見れば良いだけだ。
女神様の話などどうでもいい。
「アウラ様、何故こうなったのか、過去の光景を見せてください」
「どうでも良いとは失礼ですね。ですが、過去を見れば真実の愛に目覚めただけであるという事を知る事になるでしょう」
絶対にそれが答えでは無いと思う。
女神様には答えを見て黙って貰おう。
「「……………………」」
答えは明確に存在した。
女神様は黙るどころか絶句。
答えは真実の愛に目覚めたからなどと言う理由では断じて無かった。
しかし、女神様が間違っていたからと喜べなかった。
俺も絶句する羽目になった。
何故なら、その原因とは魔法であったからだ。
「……”オカマティックエクスプロージョン“、まさか、実戦で使うとは……」
”オカマティックエクスプロージョン“、女神様曰く同性間強制発情魔法。
前に発動してしまったとんでも魔法。
あの時に望んだ死傷者を出さずに最大限に甚大な被害を与えて軍勢を退けさせられる魔法、それがまさか、この魔法だったなんて……。
「ま、まあ、発情から始まる真実の愛もありますよ」
そう言う問題じゃ無い。
そもそも発情から始まる真実の愛など聞いたことがない。
「動物は発情し、番との愛を育んでゆくものなのです。結果良ければ全て良しというやつです」
「どう見ても結果が良いとは思えないんですけど……」
魔法をかけた直後の映像なんて、R18どころかR120、生きている人間には厳し過ぎる不適切映像だ。
それこそ、これを見て喜べるのは百歳など遥かに通り越しているだろう女神様しかいないと思う。
しかし、目を背け続けるのも哀れだと、チラリと覗くと不思議と喜べる光景もあった。
そこには逃げ惑い、船室に閉じ籠もりガタガタと震えるイケメン。
何だろうか、憎らしい程のイケメンがこうも怯えていると、気分がとてもスッキリとする。
しかもコイツ、確かクラスの女子のハニトラ要員になっていた奴だ。
これぞ天誅。
と言うか、よくよく見たらクラスメイトも逃げ惑っている。
見たところ、魔法が効いていないようだ。
勇者だから抵抗力が強かったのだろうか?
だが、魔法が効いていなくともオカマティックエクスプロージョンの魔の手からは逃れられないらしい。
寧ろ、恐怖という点では勝っているだろう。
確かに戦略級の魔法だ。
この世界では一人で軍隊並みに強い人もいるのだろうが、この魔法はその強者に効力を及ぼせなくても、魔法に堕ちた人々に性的に襲わせる事が出来るのだから。
ガッツリ魔法にかけられた人は勿論、効いていない強者も軍を動かすどころでは無い。
使い方によっては軍の全滅にまで追いやれる大魔法だ。
馬鹿馬鹿しいが真面目とはこういう事か。
それにしても、俺とは違いハニトラ要員を送り込まれていたクラスメイト達が今は貞操を守る為に逃げ惑うとは。
やはり、日頃の行いは大切な様だ。
そう言うふうに一人だけ除け者にすると、こうして天罰が下るのだ。
「……それはあまりにも、酷い言い掛かりでは?」
「いやいや、ハニトラ要員を送られていたアイツ等が悪いんです」
「勝手に違う場所に召喚されたのは貴方の方ですよね?」
「じゃあ、プラマイゼロという事にしておきましょう」
「魔法を使ったのも貴方ですよね?」
「正当防衛です。何ならプラマイプラスなくらいです」
「そうなんですかね……?」
兎も角、クラスメイトには俺がサバイバルをして苦労している間に、万全のサポート付きかつハニトラ付きの快適ライフを過ごしていた天誅が下った。
女神様は納得いかないようだが、それが全て。
酷い冤罪をかけられたりもしたが、今日は枕を高くして寝れそうだ。




