ボッチ18 ボッチとクリエイトレイン
何とか間に合いました。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
アクティブスキル〈火属性魔術〉のレベルが1から2に上昇しました》
暫くファイヤーボールを連射しているとついにはスキルレベルを上げる事にまで成功した。
するといきなり余裕が生まれた。
元々慣れてきていて自由自在に使えると言っても良かったが、更に容易に使える。
スキルの力は大きいようだ。
試してみると、今まで素早く連射出来ていても一つ一つ発動していたファイヤーボールを、なんと二つ同時に発動出来た。
いや、複数同時に使える事に気が付いた。
そんな不思議な感覚だ。
二個三個、四個同時までなら問題無く発動出来る。
そしてこの状態でも続けられる連射。
ファイヤーボールの事が数と密度が凄いことになっている。
ただ連続で発動するぐらいでは感じなかった熱気が伝わってくる。
着弾点、ファイヤーボールが炎になって消える地点は遠くなのに、まるでバーベキューでもしているかのような熱気だ。
しかも炎の玉であるからとても明るい。
いつの間にか太陽が沈みかけていたが、全く気が付かない程の光量。
いつの間にか時間も経過していたらしい。
多分、ファイヤーボールの修行と言うよりも落ち込んでいた時間のせいで時が進んでいるが、その点は気にしない。気にしたら負けである。
ファイヤーボールの修行は花火をしているようで正直なところ楽しいが、マスターした事だしそろそろ止めにしよう。
「どうですか女神様? 俺の魔法捌きは? もう一人前と言っても過言じゃないですかね?」
俺は誇らしげに女神様の言葉を待つ。
『……気が付いていないんですか?』
あれ? 返ってきた言葉がおかしい。
『なら、貴方は半人前ですらありません。ファイヤーボール、使えませんから……』
「はい?」
全く以て言っている意味が分からない。
あんなに何発も同時に連続で使えたのに、ファイヤーボールを使えない? どう言う事だろうか?
夢でも幻でも無い証拠に今もメラメラと炎が…………ん? なんで今発動していないのに炎が?
「………………」
『気が付いたようですね。全く、貴方は引火させる事がお好きなようで』
森が、燃えていた。
ハハ、確かにこれじゃ実戦では使えないな……ってそんな場合じゃない!?
「早く消さないと!? と言うか何でも引火したって教えてくれないんですか!?」
『ファイヤーボールの拡散炎で今まで見えなかったんですよ。時既に遅しです』
「じゃあ共犯ですよね共犯ですよね! 俺達仲間ですよね!?」
『ちょっ、一体何言ってるんですかッ!? 私は明らかに関係無いでしょう!?』
「普通は外で不用意にこんな火力の炎を扱っていたら注意するでしょうがっ!?」
『至極真っ当な事を!? と言うかそれでもまず、そんな火力を燃えやすい物の側で使う方がおかしいでしょうッ!?』
「監督責任は明らかに女神様ですよね!? ファイヤーボールにしろって言ったのは女神様ですし!」
『ッ、証拠、証拠はあるんですか!? と言うか魔導書からは真っ直ぐにしか、つまり森の上にしかファイヤーボールを発射出来ませんから、貴方が無闇矢鱈に連射したのがいけないんですからね!?』
責任の擦り付け合いをしていると、いつの間にか炎の勢いが増し、風に乗って火の粉まで降り注いで来た。
争っている場合じゃない!
「空洞!」
取り敢えず身を守る為にボッチ空間を展開。
「女神様! どうしたらいいですか!?」
『水魔法です! 考えるより先に無難な消火法を試みましょう!』
「分かりました! 開けウォーターボール!」
ファイヤーボールがあるならウォーターボールもある筈。
「女神様、これウォーターボールで合ってます!? 魔力も足りてますか!?」
『大丈夫です! これこそ心置き無く連射してください!』
「“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!」
わざわざ名前を唱えなくても良いことが判明しているが、気合を込めて叫びながら魔法を連射する。
しかし、魔導書越しでは連射もウォーターボールの操作も自力発動に比べままなら無い。
すぐさま感覚を頼りに自力発動に切り替える。
「“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!、“ウォーターボール”!」
唱える数よりも無数に早く現れるウォーターボール。
燃え盛る森に飛んで行くが、炎に大きな変化は見られない。
炎に呑み込まれて先が見えていない状況だ。
そして幾ら出そうとも、運が悪い事に風が吹いており延焼するスピードの方が速い。
ウォーターボールでは幾ら無数に連射しようとも、広範囲をカバー出来ない。
「女神様、駄目そうです!」
『魔導書に求めれば望む魔法も得られる筈です! 他の魔法に変えましょう!』
「開け、広範囲水魔法!」
求めに応じて開いたページを女神様に見せる。
「どんな魔法ですか!」
『“グレートフォール”、大瀑布魔法です! 必要魔力的に貴方には使えませんし、地形も壊すような大魔法です! 使えたとしても消火した後の被害の方が大きい魔法です! もっと威力の弱い範囲魔法を求めてください!』
「分かりました! 開け、弱い範囲水魔法! どうですか!?」
『“クリエイトレイン”、雨を生み出す魔法です! これならいけます! 消火出来るかは分かりませんが、延焼は緩められると思います!』
女神様のお墨付きを得たことで魔法を発動する。
「“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!」
クリエイトレインは学校の校庭くらいの範囲に雨を降らす魔法で、連射する程降雨量が増えた。
規定値の雨量を規定値の範囲に降らす魔法のようだ。だから発動場所の融通があまり効かない魔導書ではこんな効果になるのだろう。
正直なところ、使い勝手が悪い。
多分本来の用途は畑の水やり用。効果時間もその間の雨量も少ない。
魔導書で連射したところで火を消せる程の勢いは無く、濡らすのでは無く湿らせる程度の魔法だ。
日照りの時の水やりでは無く、少し雨が降らない時の普段使い用の魔法。
使い勝手が大きく変わる事を願って、自力で発動してみる。
「“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!」
するとその願いは届いていた。
範囲も雨量も時間も魔力さえ込めれば増やせた。
魔力こそ持って行かれたが、豪雨と呼べる量の雨が燃え盛る範囲を超えて降り注ぐ。
俺はペット皿の聖水を飲み続け魔力を回復させながら降り続けるように魔法を発動し続けた。
延焼の可能性が薄れたところで、今度は範囲を燃え盛る部分に絞って更に雨量を増やす。
ゲリラ豪雨を超える雨は、炎に呑み込まれて急激な白煙を生む。
これならいける!
「“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!、“クリエイトレイン”!」
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
アクティブスキル〈水属性魔術〉のレベルが1から2に上昇しました。
パッシブスキル〈魔力回復〉を獲得しました。》
次話は何かしらの切のいい日に投稿したいと思います。最短で月末月初、遅くて本編初投稿日、更に遅れてハロウィンを予定しています。
まとめると、数字的な何かの日か、人の動きまで変わる休日に投稿したいと思います。




