閑話 魔祖5 神の力
ヴィルディアーノ視点です。
《【聖地アルブナーム】が解放されました。
解放者を確認。
解放者と認定。
試練は展開中。
到達者と認定。
資格を付与します。
権限レベルを判定します。
現在の最高権限者が空席です。
資格者に最高権限の付与を試みます。
第一要件:解放者であることを確認。
第二要件:到達者であることを確認。
第三要件:フィーデルクスの存在であることを確認。
【聖地の解放者】ヴィルディアーノ・フォン・ルーク・ロマノフィエに最高権限を付与します。
何を望みますか?》
ステータスの声に似て非なる問い掛けに、分かりきった答えを返す。
我が望むもの、それは力。
この世界すらも創り変える圧倒的な力だ!!
『”第一昇神――偽りの神――“!!』
《願いを承認。
資格者に神に等しき力を与えます》
これが神の力、いや神に等しいだけの力。
今なら万物を下せる、そんな全能感が膨大な力と共に湧き上がる。
実際、力のみで地形も好きに変えられるだろう。
だが、こんなものでは全く足りない。
たかが神如きの力では、この世界は変えられない。
この世界を根本から創り変えるには、理想郷を築くにはこの程度の力では不可能だ。
《願いを確認。
覚悟はありますか?》
覚悟など、数千年前から出来ている。
聖地は私の器が不足していると判断したようだが、至ってみせよう。
『”第二昇神――傲慢なる神――“!!』
この私すらも押し潰されそうな圧倒的な力が降りてくる。
この身を破壊せんとする強大な力を強引に抑え込む。
強化した不老不死の再生力を以てしても、再生が追い付かず血肉が破壊されるが、何とか抑え込む事に成功した。
今の私は、肉体を持つ神、完全なる神に等しい。
保有するエネルギーは大身の神と同等ながら、古の龍並みの肉体を持つ至高の存在。
再生力によりバランスを保っている事から、十全な力は発揮出来ないが、邪魔者を排除するのなら、人類を滅ぼすのならばこれで十分。
「“白輪槍”」
「“神雷槍”」
「“深淵滅槍”」
例え今では伝説となった勇者、神をも凌駕したシェルトベインであろうと私は倒せまい。
如何に強大であろうと人の術たる魔術など、今の私に傷一つ付けられまい。
『ぐがぁぁあああーーーー!!!』
完全なる神の肉体に、その魂にまでダメージを与えるだと……!?
対神城塞滅却魔法を、圧縮したのか!? あの荒れ狂う破壊術式を、破壊に逆らい束ねたと言うのか!?
まだ、私は誰よりも優れた存在に成れないのか!?
穢れた世界よ、私は創造主に相応しく無いとでも言うのか!?
『こ、これでも貴様らに届かんのか……!! 我は認めん!! 我こそが絶対強者!! 我こそが新世界の創造主となるのだ!!』
聖地に願う。
更なる力を。
「“白輪槍”」「“神雷槍”」「“深淵滅槍”」
《願いを確認。
器に空きがありません。
器の強度が著しく低下しています。
覚悟はありますか?》
当たり前だ。
この身などいらん!! 私も必要無い!! 必要なのは力!! 新たな世界だ!!
滅びる前に成し遂げてやる!!
だから力を寄越せ!!
『”第三昇神――不完全な創造主――“!!』
一瞬、世界が内側に収まる幻影を見た。
『うぉおぐがぁあーーー!!!!』
もはや、完全に収まっていない全とも言える力。
先程まで受けた傷よりも遥かに大きいダメージを、存在の根源にまで轟く深傷を負い続ける。
だが、その力は全能に等しき力を私に齎した。
『ぐっ、き、貴様ら、異世界の女神に勇者だと!? しかも世界最強!? ……通りで強大な訳だ。だが、我は諦めん!! そして貴様らさえ倒せば我は名実共にこの世界の支配者!! 全てを手にするのは我だ!!』
万物を生み万物を知る創造主の力は、邪魔者達の正体も炙り出した。
女は異世界の女神。
世界に穴すら開け、絶大なる救世の力をこの世に送る超常の存在。
今の私の力を以てしても測りきれぬ規格外。
青年は勇者。
真なる勇者。ただ異世界の勇者という訳では無い。存在そのものが勇者と呼べば良いのだろうか。
神や人間、自然、そのどれとも異なり、かつ似た超常の力を感じる。
やはり、私の力を以てしても測れない。
老人は今代の【世界最強】。
私の力でも測れる。だが、決して侮れる存在では無い。
何らな、最も私に近しいとすら言える。
まず人から逸脱している。単に圧倒的な力を有しているだけでは無い。
私と同じ不老不死だ。しかしその根源は私の吸血鬼の秘法とは全く違う。
他の命を自らのものとするのでは無く、半ば自らを環境と成す事で常にある、私の術式よりも完璧な不老不死。
聖地に触れる前の私並みの、もしくはそれ以上の力を有している。
「“白輪槍”」「“神雷槍”」「“深淵滅槍”」
『ぐぎぃあががぁがあーーー!!!!』
女神や勇者であれば、これ程の力が有るのも納得だ。
しかし、創造主に等しき力を手に入れても、敵わぬのか……。
相手は世界の抑止力とでも呼べる世界の頂点に立つ存在達。
世界を再構築するには、今の世界を乗り越えよと言う事か。
聖地よ!!
全ての力を私に!!
《願いを確認。
器の耐久限界を超えます。
覚悟はありますか?》
当然だ。
もはや、私に理想郷での居場所は無い。生き残る必要性は皆無。
私は、やはり天才では無かった。理想郷に相応しい完璧な存在等では無かった。創造主に等しき力、才能を手に入れても勇者達に敵わなかった。
この力を手にしたのが、私でない誰かであったのなら、結果は違っていた筈。
結局、私は天才には成れなかったのだ。
だが、悲願が変わる事は無い!!
この身を対価に、この世界を、相応しき力が相応しき者の元へゆく世界に、誰もが才を伸ばし報われる世界に創り変えてみせる!!
『がぁ、わ、我は、創造主に、なるのだ……!! ”最終昇神――真なる神――“!!』
次話も閑話が続きます。




