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ボッチ116 ボッチと新たなる神



『……やはり、我以外は役に立たぬ。我が導いた眷族すらこの有り様……。全て我が成すしか無いのだ』


大笑いしたり驚愕したりと忙しかったヴィルディアーノだが、ここに来て表情が抜け落ちた。


そして生み出す血影兵もキメラのような姿から、どこにでも居そうな普通の人の姿に変わった。


『我が全てを消去し、創り直す』


血影兵は灰色の炎以外に様々な色の光を放ち始める。

そんな血影兵から魔法が放たれた。

どれも単体用。範囲魔法ではないく対人用。


炎や雷、光が球や槍といった形に収束し次々と放たれる。


「なんじゃと!? ”絶界“!!」


それを見たリオ爺さんは慌てて“冥流滅消ステュクスパーディション”を防いだ強力な結界を発動した。

リオ爺さんが慌てるように、対人攻撃なのにそこに込められた力は天災魔法と同等だ。


リオ爺さんの結界は数発何とか防ぐも、砕け散ってしまった。

咄嗟に俺が前に出る。

俺の空洞も破って来るが、多くて突破されるのは三層。

この調子だと全て破られる事は無さそうだ。


『この数の代償魔法を防ぐだと!?』

「代償魔法?」

「生贄を捧げる強大な魔術じゃ。己が命を、存在すらも賭して発動させる。ヴィルディアーノの生み出す使い魔は、その生贄代わりとなるらしい」

「完全に近い生命の創造。まさか創世の神に等しい力を魔王軍四天王が有するとは」


見れば血影兵は魔法を使う度に光になって消えていた。

全てを魔術に変換しているらしい。

通りで強い訳だ。


ボッチ力を、空洞を極めていて良かったと今ばかりは思う。


「まあ、何であれ問題なさそうなんでさっさと倒しちゃいましょう。“業火滅消(ゲヘナパーディション)”」


五発まとめてヴィルディアーノに撃ち込む。


しかし爆炎が晴れると健在なヴィルディアーノがいた。


『同じ手はくわん!! 代償魔法が攻撃魔法だけだと思うなよ!!』


見ればリオ爺さんの結界よりも更に強固に見える結界がヴィルディアーノの周りに展開されていた。


『我も元は矮小なる人間、不完全な存在だったようだ。認めよう。貴様は我よりも優れている。だがそれもここまで!! 我も死力を尽くし、貴様を超えてみせよう!! この世に唯一君臨するのは我だ!!』


そう宣言すると、ヴィルディアーノのみならず神殿全体から恐ろしい程の力が放出された。

まるで世界がもう一つそこに圧縮されて有る様な、恒星の如き力。


『――世界を支える一本の柱 其は万物を留める創造の根源 其は創造神が遺せし権能 其の解放は混沌への回帰 其の解放は無限の創造 我は世界の新生を望むもの 我は創造主とならんとするもの 開け 聖地アルブナーム――!!』


止めようと俺達は何発も天災級魔法を撃ち込むも、何れも防がれ詠唱が完成してしまった。


神殿が激しく、しかし何故か直視出来る輝きを発し、世界に広がった。

いや、世界に在ったそれが目覚めたのだ。


『”第一昇神――偽りの神(アルコーン)――“!!』


一瞬、ヴィルディアーノと神殿が重なったかと思うと、ヴィルディアーノは貴族風の人の姿に戻り、禍々しい力が神々しさを帯びた何かに変わった。

魔の存在とは違う意味で人を突き放す隔絶した雰囲気の存在。超位存在にヴィルディアーノは至ったのだと確信させられた。


だが、そこで終わらなかった。


『”第二昇神――傲慢なる神(ヤルダバオト)――“!!』


更に神々しさが増すと共に、禍々しさが再び現れた。

所々から流血し、神々しさに翳りが生じる。

しかしそれ以上に人間からかけ離れており、神である事を理解させられる。



「“白輪槍(コロナランス)”」

「“神雷槍(ケラウノス)”」

「“深淵滅槍(アポリオンスコルピオ)”」


『ぐがぁぁあああーーーー!!!』


あっ、効いた。


ダメ元で天災魔法を圧縮した対人魔法を使ってみたら、かなり効いている。

貫通し焼かれ抉られ、人間なら生きているのが不思議なダメージ。


『こ、これでも貴様らに届かんのか……!! 我は認めん!! 我こそが絶対強者!! 我こそが新世界の創造主となるのだ!!』


どう見ても致命傷だが、もはや生物かも怪しい存在。

未だ話せている。


「“白輪槍(コロナランス)”」「“神雷槍(ケラウノス)”」「“深淵滅槍(アポリオンスコルピオ)”」


だが話せているだけ。

そろそろ退場願おう。


『”第三昇神――不完全な創造主(デミウルゴス)――“!!』


天災圧縮魔法が更なる変化の反動だけで弾かれた。

ヴィルディアーノからは湧き水の様に血が溢れ出し、しかし神力、神格といったものがより膨れ上がり強固になってゆく。


余りに強大な力に何が起きているのか知覚で来た。


『うぉおぐがぁあーーー!!!!』


神殿より神そのもの、世界そのものとすら言える力をその身に収めようとしている。

しかし収めきれていないのだ。

だが、破裂しそうなその力を、かなり緻密で大規模な魔術で、吸血鬼の真相の根源となる術式で、不死者と呼ばれる者達の大元たる再生力で強引に抑えている。


『ぐっ、き、貴様ら、異世界の女神に勇者だと!? しかも世界最強!? ……通りで強大な訳だ。だが、我は諦めん!! そして貴様らさえ倒せば我は名実共にこの世界の支配者!! 全てを手にするのは我だ!!』

「“白輪槍(コロナランス)”」「“神雷槍(ケラウノス)”」「“深淵滅槍(アポリオンスコルピオ)”」

『ぐぎぃあががぁがあーーー!!!!』


あっ、通った。

さっきは余波だけで弾かれたが、余波の方が強かったらしい。

さっきよりは通りが悪い、そもそも見かけでは血が湧き出ているせいで効いているのか効いていないのか分かり難いが、叫びからしてしっかり効いている。


これ以上、強くなる前に倒そうと、俺達は一気に圧縮天災魔法を叩き込む。


しかし、それは間に合わなかった。


『がぁ、わ、我は、創造主に、なるのだ……!! ”最終昇神――真なる神(アイオーン)――“!!』


ヴィルディアーノの存在が一瞬消えた。

そして世界に広がり、そこに世界として再び現れた。


膨れ上がり続ける力そのもののような、もはや形を保てていない血と闇の化け物。

しかし主神や世界そのものと言われても納得してしまうような圧倒的な存在がそこに顕現していた。


…………帰って引きこもりたい。



次話は七夕までに投稿したいと思います。

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設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。ボッチは本編のアンミール学園で裸体美術部(合法的に女性の裸を見ようとする部活)の部員です。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
ボッチと同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

兄弟作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
ボッチと同じ部活に属する皇帝が主人公です。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
ボッチと同じ学園の風紀委員(ボッチ達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

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