ボッチ110 ボッチ、冒険者について知る
ゴールデンウィーク投稿です。
説明回です。
俺達は三度目の正直で、気持ち良く街を出ていた。
気分が良くても長居はしなかった。
早く帰りたいからではない。
新たな仕事を頼まれたからだ。
ルーベルタウンの冒険者ギルドマスター、クライドさんから実際に魔族と戦った話等をこの大陸を束ねるアーヴノア提督に直接話して欲しいと頼まれた。
アーヴノア提督、グリーンフォートでも伝える先として出て来た名だし、伝えた方が良いだろうという事で俺達は引き受けた。
だから俺達は街で時間を潰さずにすぐに行動に移したのだ。
色々な事があった気がするが、実はまだお昼くらいだし、これを終えれば何の心残りも無く一日で帰れる。
意味もなく日を越す理由は無い。
何だかんだ疲れたし、さっさと仕事を終えて帰ろう。
俺達の飛行速度なら一時間もしないで着くだろう。
今の俺たちは飛行機よりも速い。
飛び続けて結構熟れた。
しかし一時間ただ飛んでいるのも暇なので、リオ爺さんから冒険者ギルドについて聞いていた。
「儂も詳しくは無い」
冒険者のトップ、S級冒険者にまで上り詰めていて、詳しくは知らないらしい。
「冒険者としての活動期間、全部合わせても一年に満たないしのう。後は素材を売りに行く為に登録しておっただけじゃからな」
……どれだけその一年で活躍したんだろう、この人。
今更ながら、物凄い人なのかも知れない。
今までの印象を総合すると色々と教えてくれて優しく慕われている、強いのに自覚がなくて、ボケ老人扱いには普通に怒るお茶目なお爺さんなのだが。
今回もS級冒険者らしい部分はなく、話が好きの物知りなご老人らしく色々と教えてくれた。
冒険者は七つのランクに別れているらしく、上からS級、A級、B級、C級、D級、E級、F級。
ギルドカードはS級がアダマンタイト、A級がミスリル、B級が金、C級が銀、D級が銅、E級が鉄、F級はギルドカードとは別の仮登録証で材質は紙。
このギルドカードの材質からS級がアダマンタイト級冒険者、A級がミスリル級冒険者、B級がゴールド級冒険者、C級がシルバー級冒険者、D級がカッパー級冒険者、E級がアイアン級冒険者、F級かペーパー冒険者と呼ばれる事も多いらしい。
ギルドカードは等級や名前、所属パーティやステータスが表示されているそうだ。
ただ、表示するものは念じるだけ変えられ、嘘の情報は表示出来ないが等級だけ、名前だけと絞る事は出来るらしい。
ファンタジー作品と同じく、ステータスまでは表示しないことが殆どだという。パーティを組むときに一部のスキルを持っていることを証明する時ぐらいにしか、ステータス表示機能は使わないそうだ。
加えて冒険者ギルドではカードから依頼達成実績なども読み取れるが、ステータスの強制開示などは出来ないプライバシーにも配慮した仕様だという。
そして肝心の各ランクの立ち位置。
F級冒険者は見習い。
魔獣でいえばゴブリン、ランク1の魔獣を倒す活躍が求められるそうだ。
ただ薬草採集の依頼などを受けるためだけに登録し、ランクを上げない副業冒険者、例えば家事の合間に依頼を受ける主婦なども多いらしい。
尚、見習い期間、仮免許期間のようなものらしいが試験的性質は無く、実際体験して冒険者に向くか向かないかの自己判断をする期間としての意味合いが強いらしい。
その一つ上のE級冒険者は半人前。
魔獣でいえば二足歩行の狼、ランク2のコボルトなど倒す活躍が求められる。
一部、薬草取りの主婦がランクアップだけしておく場合もあるが、基本的にこのランクからは専業冒険者が殆どらしい。
そしてE級冒険者が依頼を熟していき、試験に合格する事でなれるのがD級冒険者。一般的にD級から一人前の冒険者と呼ばれるらしい。
最も数が多いのもD級だ。
D級冒険者はオークなどのランク3の魔獣を討伐する事が求められ、パーティではその上のランク4の魔獣、例えばオーガなどを倒す実力が求められる。
尚、ランク3の魔獣から一般人ではまず敵わない脅威だという。ランク4の魔獣にいたっては人口数百人の村が壊滅に追いやられる事もあるという。
ランク4より上の魔獣は人里には滅多に出没しない、言い換えればランク5以上の魔獣が頻繁に出没する場所には危険過ぎて人が住めない為、ランク4の脅威を排除する事が単純な戦力としては求められいるらしい。
獲物的に最も需要が有ることがD級冒険者が一番多い理由の一つだという。
そしてランク4の魔獣も跋扈している訳では無く、経験値的にこれ以上の力は伸ばし難い為に、D級冒険者が多くそれ以上の等級の冒険者が少ない理由となっているそうだ。
基本、ずっと同じ街、付近に強大な魔獣が出現する魔境が無い街でずっと活動している冒険者はD級止まりが多いらしい。
一般的な街では引退間近になって、やっとC級の域に至る冒険者がいるかいないかだそうだ。
C級冒険者はそんな事情もあり、ただ多くの依頼を熟すだけでなく、一般的な冒険者、つまりD級冒険者を超える実績を示す必要がある。
冒険者の中の精鋭と言っていい。
ランクアップも受付で事務的に行うのではなく、C級以上の実力者の承認も必要だという。
ギルマスですら全員が元冒険者だったり実力を見抜く力が有る訳では無い為、人によっては一人でランクアップを決定出来ない場合が有るそうだ。
尚、ギルドマスターは元高位の冒険者の方が冒険者をまとめ上げ易いので、引退後に推薦で登用される事が多いが、高位冒険者の数が少ない事に加えて事務能力や面倒見の良さといった人格面が必要になって来る為に、通常の職員から出世した者の方が多い。
ただ、副ギルドマスターは基本的に一般職員から上がるので、多少の事務能力の無さはカバーしてくれるらしい。それでもファンタジー作品みたいにいきなりC級とかに認定出来る様な権限を持つギルマスは少ないそうだ。
現役のC級冒険者に頼んで試験を行う事が多いが、そのC級冒険者自体がどの町にも居るわけではないので、小さな町ではC級にランクアップ試験を受けられず、試験を受けに大きな町に行く必要も出てくる。
そんな試験などを突破したC級冒険者は五千人以下の町に一人しか居ないこともザラに有るという。
C級冒険者とは五千人以上の街でも指折りの実力者であるらしい。
求められる実力はランク5の魔獣、例えばトロールなどを一人で討伐し、パーティではランク6の魔獣、ギガントなどを倒せる力だ。
そのランク5の魔獣は町一つを壊滅させる脅威であり、言い換えればC級冒険者は一人で町を守る様な活躍が求められる。
尚、ランク6の魔獣は一万人規模の街をも単体で落とす脅威であるらしい。
ランク5の魔獣は滅多に現れないが、街の存続の為に領主からスカウトされ、その街にいるだけで補助金を貰える事もあるそうだ。
引退後も仕事が多いという。
と言うか、ランク6って街の存続に関わる様な魔獣だったんだ……。
当たり前のように倒していたけど知らなかった。グリーンフォートにはランク6のトロールウォーリアが群れで侵攻していたが、あれは一体どれだけの脅威だったのだろうか?
まあ、俺は一応勇者で正真正銘の女神様までいたのだから、そのくらい倒せて当たり前なのかも知れないが。
ただ、それでも街を一体で滅ぼす様な魔獣を倒していた事には驚きだ。
次話は明日、投稿します。
次話も冒険者ランクや魔獣の強さの目安について続きます。




