ボッチ99 ボッチ、怪我人を治療する
旧正月投稿です。
巨大で強そうなトロールが現れたが、剣を一振りするとダンジョンコアごと真っ二つになった。
木のうろ全体が光の粒子を発し、溶けるように端から消失して逝く。
「女神様、ダンジョンは破壊しましたが、これからどうしますか? 人為的なものなら少し調査しておいた方が良いですかね?」
「ええ、その手の知識は有りませんが、それでも一応は調べておいた方が良いでしょう。もし犯人が簡単に同様の事を引き起こせるのであれば、非常に危険です。出来る限りの事はしておきましょう」
そう言っている間に、木の洞は無くなった。
残ったのは真っ二つになったダンジョンコアのみ。
それ以外は小さな空き地になっており、情報源になりそうなものは何も残っていない。
取り敢えず、ダンジョンコアの残骸を鑑定してみる。
名称:デュラマの悪食
おっ、鑑定妨害が解けている。
名称:デュラマの悪食
説明:魔導帝国デュラマを滅ぼした厄災。魔物の生成に特化した人工ダンジョン。ダンジョンのアイテム生成機能のみを利用しようと考え造られた人工ダンジョンの失敗作。魔物生成機能以外を持たず、全てのリソースが魔物生成に使われ魔物生成機能に特化している。デュラマの魔力を枯れるまで吸い尽くし魔物に変えた。
「「…………」」
人為的に魔物は発生し、想像以上にかなりヤバいものだった事が判明した。
「……取り敢えず、これ、量産出来るようなものですか?」
「今まで聞いた事がなかったので、少なくとも簡単に造れるものでは無いと思います。簡単に造れるのなら、もっと事件が起こり警戒され情報が広まっている筈です」
「じゃあ、実際にこれがデュラマを滅ぼした実物だったりも?」
「可能性としては有り得ますね。造ったにしろ、設計図はデュラマの悪食があった近くに存在した筈です。参考にしたとしても、発掘を行った可能性が高いと思います」
犯人を探すなら、その線、デュラマがあった場所に関わりのある対象を探るのが良さそうだ。
直接犯人を捕まえられれば良いのだが、流石にこれだけの情報ではどうにもならない。
「これ以上の情報収集は難しそうですね。街に戻りましょう。トロールを撃退出来ているとしても、怪我人がいる筈です。回復を手伝いましょう」
俺達は街まで戻った。
入り口は開かれたままで、見たところトロールはいない。まだ閉めていないという事は、奥でまだ戦闘が続いているのだうが、この様子なら無事そうだ。
道なりに進むとトロールへの攻撃に巻き込まれるかも知れないから、屋根伝いに先へ進んでゆく。
すると、トロールはもう五体しかいなかった。
おっ、二体が倒れた。
もう戦闘は終わりそうだ。
ここに手を出す必要は無いだろう。
と言う事で、怪我人を探す。
怪我人はトロールの進路とは繋がっていない二つ隣の道で寝かされていた。
そこでは冒険者や兵士っぽい人達以外にも、神官らしき人や薬屋らしき人まで治療が出来る人が総出で治療を行っていた。
しかし駆け回らねばならない程、怪我人は多かった。
倒れたまま動けない様子の重傷者から、動けるけれども血が止まらない様子の人まで様々。
治療を包帯を巻いたりと手伝っている人達も大なり小なり負傷している有様だ。平時なら病院行きの人までが当たり前の様に手伝っている。
そしてここに全ての怪我人が集められている訳では無いだろう。
距離からして四つの戦場それぞれに同じ様な場所が有る筈だ。
「私は反対側に行ってきます」
「こっちは任せてください」
別の所へは女神様が行ってくれる事になった。
早いところ治療し、残る二箇所へ向かおう。
「手伝います!」
「おお、神官様! ご無事でしたか!」
さっき治療した人も、再び負傷しながらも治療を手伝っていた。
「貴方様の回復魔法なら、きっと皆も助かる!」
「こちらの重傷者をお願いします!」
「分かりました!」
腕を引かれながら重傷者の元へ向う。
重傷者は酷い有様だった。
トロールの怪力にやられ、潰れた様に負傷している。
見ただけで何本も骨が折れていると分かる惨状だ。
服の色など分からないほど血に染まっている。切り傷などとは違い全体から出血している為、たちが悪い。
片っ端からエクストラヒールをかけてゆく。
エクストラヒールがどの程度の回復魔法かは分からないが、今の所は効いているし、試してみるしかない。
一人目の重傷者は、エクストラヒールをかけると曲がった腕の形が戻っていった。
そして血も引き、呼吸も段々と穏やかになる。
出血が止まっても流れた血は消えないから、完璧に治ったかどうかは分からないが、死の淵を彷徨わない程度には治ったと思う。
「凄い! あれだけの重傷がもう!」
「内臓も酷くやられていた筈! それも一発で治っているぞ!」
「エクストラヒールだ! エクストラヒールを無詠唱で使ったぞ!」
何か騒いでいる気がするが、それを気にしている暇はない。
端から重傷者の治療を行っていく。
胸に強打を受けてしまったのか、凹んでしまっている重傷者もエクストラヒールをかければ胸が元の形に戻り、荒い呼吸は穏やかなものへと変わった。
石でも投げられたのか、腹を抉られた負傷はエクストラヒールをかけるとまず削れた骨が伸び、そこを肉や血管が覆うようにして何と完全にふさがった。
明確にどこが傷付いているのか分からないものも、例外なく回復してゆく。
エクストラヒール、かなり万能だ。
使う度に完全回復までに必要な魔力は異なるが、それだけ変えれば今の所、どんな傷も回復してくれている。
「聖人だ、聖人様だ!」
「おい! ライアスが目覚めたぞ!」
「ライアス! 良かった! 神官様はもう助からないって……」
「俺は、死んだんじゃ……」
「何言ってんだ、生きてるよ…。聖人様が助けてくれたんだ」
「有り難や有り難や」
全員を治し終えた時には中々の騒ぎになっていた。
「聖人様! どこへ!」
「怪我人は他の場所にもいます。私は彼らを治しに行きます」
「あれだけ魔法を使って消耗しているだろうに…」
「なんて御人だ」
「聖人様、この御恩は必ず!」
「ありがとうございました!」
感謝の言葉を背に受けながら、俺は次の負傷者の元へと向かうのだった。




