ボッチ95 ボッチに迫る強大な気配
宴は終わりに差し掛かっていたが、ワイバーンを倒した記念にとあっさり終わらせたのに理由をでっち上げて第二部が始まった。
ワイバーンの肉は旨いらしく、亜種でも行けるだろうワイバーンの亡骸は広場まで持って来られたが、討伐の火力が強過ぎて食べれそうな部分は残っていなかった。
燻ったまま持ってきたせいで、全員咳き込む始末。
でも皆、笑っていた。
ただ壁で囲まれているせいか煙が中々逃げす、けっこう強めに咳き込む事になってしまったので、しゃもじとしてしか使わないと思っていたおしゃもじ様しゃもじを使ってみた。
結果、煙の咳も治まった。
こんなちょっとした咳でも使えたらしい。
その効力が認められて途中、呑み過ぎて喉が焼けた人達も治す事になり、それが更なる飲酒の呼び水となり、夜遅くなっても寧ろ大盛り上がり。
宴と言うよりも、本当にお祭りの様なお祭り騒ぎになった。
ただ、騒動はそれで終わりそうに無かった。
再び、森の奥から強大な何が迫って来ていた。
「アウラ様」
「分かっています」
その気配は黒いワイバーンを遥かに超える力を放っていた。
黒いワイバーンの時の様に、森が騒がしくはなっておらず、気配を隠している様だが、俺達には通用しない。
天敵がいなさそうな力を持つのに、気配を隠す知性まで有する。
流石のこれは、村の人達でも勝てそうにない。
「俺達で対応しましょう」
「当たり前です」
女神様も即答する。
「ペットの躾は飼い主の責任です」
あれ?
「ペットの躾?」
「……まさか、気付いていなかったんですか? この気配、ホルスとアイギスじゃないですか」
強大な気配の正体は、俺達のペットだった。
多分、寂しくなったか、飼い主が心配で見に来たのだろう。
可愛くてお利口だ。
魔力で探って見ると、ホルスとホルスに乗るアイギスの姿。
どちらも、気配を抑えているだけで無く、姿も若干違う。
ホルスは炎を纏うのを止め、美しい金と緋色の羽を持つ鳥になっており、アイギスもどうやったのか、毛並みの艶やかさが抑えられ普通の山羊っぽくなっていた。
おそらく、魔力を抑えるた結果だろう。
「と言うか、あの姿なら正面から堂々とペットですって紹介して良いんじゃないですかね?」
「確かに、凶悪な魔獣には見えませんし、何か対応する必要は無いかも知れません」
ホルスとアイギスは何の混乱もなく村に迎えられた。
今は女神様と村人と一緒に酒を呑んでいる。
馴染むのが早い。
俺は相変わらずリオ爺さんと主に話している……。
いや、博識だし色々と教えてくれるから良いのだが、何故か引っかかるものがある。
「そう言えば、この村は何か飼っていないんですか?」
「動物はここだと自衛が出来んからのう。何も飼っておらん。試した事は有るんじゃが、本能の強い動物は付近の魔獣の気配を感じ取ってストレスも強くかかるらしくてな。卵の為に買って来た鶏は卵を一つも産まん内に早死したわ。じゃから、肉は狩れば幾らでも手に入るが卵や乳には苦労しているのう」
そんな危険だったんだ、ここ。
まあ、ワイバーンが来ても誰も動じないぐらい、魔獣が跋扈している場所が危険じゃない訳無いか。
ただ、肉は幾らでも手に入ると言っているように、跋扈する魔獣を恵みとして捉える程度には、この村の人達はここを危険だとは思っていないらしい。
危険だと言っていても、色々とレベルが違う気がする。
「この近くの街には卵とか色々と売っているんですか?」
雑談と情報収集を兼ねてこれから行く予定の街についても聞いてみる。
この村では穀物ばかり作っていると言っていたし、街にも野菜とかが少なかったら在庫を減らす大チャンスだ。
本気で商売する気は無いが、知っていて損は無い。
「いや、グリーンフォートでは何も育ててはおらんし、他の街へは数日かかるでな、街にも保存の効くものしか入ってこんよ。有るのは魔獣の素材ばかりじゃ。ただ貴重な素材が採れ稼ぐ冒険者が多いから商人も辺境ながら集まり、新鮮でない事を除けば割と充実しておるな」
魔獣が強いなりのメリットも有るようだ。
そして稼げる冒険者、つまり平均よりも強いであろう冒険者達が目をつける様な場所に普通に住んでいるこの村の人達。
強くて当然だ。と言うか強くなければ住める筈が無い。
「名物は香辛料をふんだんに使った料理じゃな。儂のおすすめはカレーでの、魔獣の肉をこれまたふんだんに使いじっくりと煮込んだその味の深さは絶品よ」
カレー、有るんだこの世界に。
前に召喚された勇者辺りが広めたのか?
カレーの事を考えたら、急に食べたくなってきた。街に行ったら是非とも食べよう。
「グリーンフォートには良いカレー屋が幾つか有るが、やはり一番は冒険者ギルドの向いに有る竜香亭のカレーじゃな。ここは宿屋なんじゃが、泊まらんくても食える。旅人のお前さん方なら、宿泊するのも良かろう。儂は泊まったことが無いが、何でも安いながらも街一番の宿と評判じゃ」
転移で作物を売りさばいたらさっさと帰る予定だが、何か急ぐ事がある訳じゃないし、泊まって旅行気分を楽しむのも良いかも知れない。
これは女神様と相談だ。
「後、グリーンフォートの名物は魔道具や魔法薬じゃな。街には鮮度の高い希少素材を求めて来た錬金術師が多く、素材の質と錬金術師の技量が相まって質が高いと評判だそうな。特に有名な魔道具があると言う訳ではないが、全体的に有名じゃぞ。魔法薬に関してはグリーンフォートでしか手に入らないものも有るそうじゃ」
この村の壁にはワイバーンの突撃でも何発かは耐えられそうな結界が張ってあったが、それもおそらくはその街で手に入れたものだろう。
他にもこの村には色々と魔道具がおいてあったが、それはこの近くの名産だったかららしい。
ここにある魔道具を見るに、とても期待ができる。
女神様から貰った神器と魔法を使えば、ほとんどの問題が解決出来そうではあるが、せっかく行くからには見て回るとしよう。
面白いものが見つかるかも知れない。
最初は街へなど、人里へなど断固として行きたくは無かったが、実際に村に来て話を聞いていると、街へ行くのも楽しみになってきた。
何事も、まずはやってみる事が大切なのかも知れない。
もう少し切りのいい所まで投稿を続けたいと思います。




