ボッチ86 ボッチ、ペットを探す
三が日投稿です。
「――永遠の水は旅人の夢 永遠の水は夢を授け 夢と現を一つとす 神へ至るも狂乱も 等しく一つ さあ狂え さあ呑み込め これぞ神の神髄――“豊穣と狂乱”」
女神様に求められるまま、酒造り魔法で酒を造り続ける。
大麦に使ってビール、を造ってみたが、日本酒と違い他にもホップが必要だったようで、これはエールだと苦言を呈されてしまった。
エールもぐびぐびと飲んでいたが……。
だったらそれで良いじゃ無いかと思ったが、尚もビールを要求されたのでホップも栽培し、大麦と共に魔法を使いビールを造った。
これも趣味魔法のおかけで、結構な高品質なものが出来たらしく、お褒めの言葉をもらった。
今も傍らで日本酒、エール、ビールと交互にぐびぐびと飲んでいる。
しかしそれで止まらず、過剰在庫を何とかする為に酒に変えたのに、ワインも飲みたいと言う女神様。
日頃お世話になっているのでワインも造ったら、その流れで色々な酒をお供えする事になってしまった。
日本酒、エール、ビール、ワインの他に各種果物を発酵させた酒。果物を漬け込んだ酒。女神様の指示通りに造った良く分からない酒と、指の数では足りない種類の酒を造った。
多分、酒造場でもこんなに多くの種類の酒は造っていないだろう。
種類の数だけだと、酒屋に売っているものよりも多いかも知れない。
酒造り魔法豊穣と狂乱は相当優秀らしく、ただ発酵させ酒に変えるだけで無く、材料さえ用意すれば香り付けも味付けも何でも出来た。
その結果がこれだ。
作り過ぎた農作物を減らす目的で加工したのに、酒造りに必要なものも栽培したせいで、全体としては在庫も増えてしまった。
「女神様、指示通り造りましたけどこの量、過剰じゃないですか? あと、凄い量を飲んでますけど、大丈夫ですか?」
「神酒ではないので大丈夫です。人の酒でも酔いはしますが、神を傷つけられはしないので、深刻な事にはなりません」
そう言う女神様の顔はほんのりと赤い。
確かに酔ってはいるが、深い酔いでは無いらしい。
「それで、過剰な量の方は?」
「……おはけ、おいひいれふ」
「今更泥酔したフリをしても無駄です……」
「……よくよく考えれば貴方は仙人、不老不死です。何百年分の作物を作ったところで、何れは消費しきれます」
「随分と気の永い話ですね……。と言うか流石の酒でも何百年も置いたら揮発してると思いますよ?」
「む、熟成させるにはアイテムボックスは不可、これは由々しき問題ですね」
酒の事となるとすぐさま考えを改める女神様。
神様としてそれで良いのだろうか?
「……では、家畜でも育ててはどうでしょう?」
「家畜ですか?」
「ええ、それなら大量に穀物を食べますし、お肉も卵も牛乳も手に入ります」
「なるほど、それは名案ですね」
畜産、農業に加えて畜産業を始めれば料理に使う食材が大幅に増える。
後は海か川に漁に行けばほぼ全ての食材が揃う。充実した食生活もすぐそこだ。
育てた家畜を肉に変えられる自信は無いが、牛乳と卵だけでも大きな進歩だ。
「分かりました。牛と卵を産む鳥を探して畜産を始めます」
そうと決まれば探知魔法を駆使して近辺の家畜になりそうな動物、いや魔獣を探す。
鳥っぽいのはあちらこちらに色々な種類がいる。
「鶏みたいに卵が食べられる鳥はいますか?」
「鶏は品種改良して一年中、無精卵を産むようになっていますが、他の鳥でも無精卵を産みます。基本的にはどの鳥の卵も食べられはすると思います。魔獣を飼いならす場合、テイマーの従魔術が必要な場合が多いので、どうせならペットにもなる様な鳥にしてはどうですか?」
「なるほど、ペットですか。良いですね」
と言う訳で、まずは外見で鳥を探してみる。
「おっ、あそこ、燃えている鳥がいますよ! あれ格好良くて良くないですか!」
「どれ……エルダーフェニックス、不死鳥ですよ?」
「おお、フェニックス! それにします!」
「大丈夫ですかね? ドラゴン並みに強い魔獣ですよ?」
「ペットとして不足はありませんね!」
「まあ、貴方は勇者にして仙人ですし問題ありませんか」
伝説やファンタジーに出てくるフェニックス。
見かけも炎に包まれていて格好良い。
卵が不味いとしても、これを逃がす手は無い。
すぐさまその場に転移。
フェニックスが居るのは空に浮かぶ島。
転移した途端、場は炎に包まれた。
いきなり好戦的だ。
しかし俺の空洞の前では何とも無い。
取り敢えず、フェニックスの動きを止めよう。
風を操作し飛び立たぬよう飛行を阻害し、土を操作し檻の形を造り圧縮して石化させる。
しかしフェニックスが羽ばたくと、それだけでより激しい炎が巻き起こり、檻は融かされ吹き飛ばされた。
空島すらも表面を融かされ流され削れてゆく。
そしてあっと言う間に天高く飛び上がる。
フェニックスはより激しく燃え上がり、激しくも美しい鳴き声をあげると、何と巨大化した。
自ら放つ炎を吸収して、高さで俺の身長程だったのが、三倍以上も巨大化する。
そして大きく羽で扇ぐと、炎が台風の様に巻き起こった。
俺を囲むように炎は渦を巻き、周囲を吸い上げてそれを燃やし、火力を上げてゆく。
融けた瓦礫が摩擦を起こし、雷まで激しく吹き荒れる。
空洞には融け隕石の様になった瓦礫が全方位から襲いかかり、雷も渦の中心とされてしまった俺のもとに全て集中する。
もう校庭程の広さが有った空島は燃やされ砕かれ無くなる程の威力。
『やはり、相当強いですよ? 鑑定によるとランクは10、A級冒険者パーティーで無ければ倒せない強さです』
霊体に戻りついて来てくれた女神様がそう評す。
「ランクなんて指標もあったんですか」
『ええ、魔獣は鑑定するとランクが見れます』
何やらそのランクからしても強いらしいが、今の所、まだ空洞の一層も破られていないから全く問題ない。
問題はどうやってテイムするかだ。
「で、テイムってどうすれば?」
『……それも知らずにいきなりここに来たんですか』
正月そうそう、何故かアクセス数が千以上増えて新年から驚いています。もしや日本酒を飲んだせいで幻影が?




