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ボッチ83 ボッチ、穀物を収穫する

年末年始投稿です。

 


 小豆の収穫が完了したら、次は米だ。

 しかし米は流石に剣で収穫する訳にはいかない。


 と言うか確か、ただ収穫するだけで無く、何工程もあった気がする。


「女神様、米ってどうやって収穫するんでしたっけ?」

『まずは稲ごと刈って、乾燥させます。その後、稲から籾を取る脱穀をし、実から籾殻を取り除く籾摺りをします。籾摺りが終われば砂や混ざった籾殻などの不純物を取り除く選別を行い玄米になります。これを精米し現在主に食卓に並ぶ白米となります』

「めちゃくちゃ手間がかかってるんですね」

『はい、お米は育てて取って終わりとはなりません』


 やはり剣でやるには無理がある。

 まずは魔導書に賭けてみよう。


 主食となる穀物なら、専用の収穫魔法が有るかも知れない。


「出でよ! 米収穫魔法!」


 しかし現れるのは魔導書だけ。

 この世界では米はあまり食べられていないのかも知れない。


『お米の収穫魔法はありませんでしたか。ですが、麦の収穫魔法ならば有るのでは?』

「有るかも知れませんが、麦の魔法が有っても意味がないと思いますよ?」

『いえ、基本的に穀物は似たような収穫方法です。植物の分類的にもイネ科で構造が似ていますから』

「そうなんですか」


 と言う事は、麦の収穫魔法があれば、それで米の収穫も出来るかも知れない。


「出でよ! 麦の収穫魔法!」


 すると、なんと魔導書は開いた。

 麦の収穫魔法は実在するらしい。


 さっそく使ってみる。


「“ハーベスト”!」


 風の刃が稲を刈り取り、稲は風によって宙に巻き上げられ乾燥してゆく。

 稲はそのまま渦巻く吸い込まれ、風の網の中を通過すると、引っかかった籾だけが渦の外へと抜け別の風の渦に回収され、渦の中でぶつかった籾が籾殻と玄米に分離され、勢いの弱まったところで玄米は一弾下の風の渦へ、籾殻は別の場所へと飛ばされ、それぞれ別の場所へと出された。


 本来はその出口に容れ物を置いておくのだろうが、そんなものは無いのでアイテムボックスを開いて直接収納。


 精米まではしてくれないらしい。


 しかしたった一つの魔法で十メートル四方の範囲にあった米が全て食べれる状態になった。

 範囲は狭い気がするが、素晴らしい魔法だ。

 麦用の魔法だが見たところ全く問題は無い。


 魔法が存在しない場合、専用の農機具を買いに行く事も考えていたが、これで行かないで済む。


 まだ米は残っているので、後は自力で発動して残りを収穫する。


「”ハーベスト“!」


 風で斬って吸い上げて乾燥させ、風の網で分離して激しく吸い上げる。


 色々な工程を一気にやってくれるが、割と簡単な魔法だ。

 風の刃、風乾、風の渦、風の網、この四つの魔法の複合、と言うよりも同時に発動しているだけであり、パーツパーツが簡単である。

 並列に魔法さえ使えれば、多くの者が使えるだろう。


『その並列に使うのが一番難しいのだと思いますよ。まあ、だからこそ一つの術式として組み上げて難易度を下げているのでしょうが』

「そうやって難易度を下げる方法も有るんですね」

『一つの魔法にしてしまえば、武技としても発動出来ますし、だいぶ難易度は下がるみたいです』



 収穫は終わったので、次にやる事は勿論、味見だ。

 ついさっき食事は食べてしまったが、米の出来を確認しない事には先に進めない。


 女神様にお米の炊き方を聞きながら、何故かアイテムボックスの中に入っていたお釜でご飯を炊く。

 とは言っても、今は研いで水に浸している段階だ。


 三十分から一時間くらい水に浸さなければいけないらしい。

 今回は、涼しいので取り敢えず間の四十五分くらい浸しておけば良いようだ。


 待っている間は農作業を続ける。


 米を作った後は、収穫魔法が麦用だったので小麦。

 無限に尽きないパンが有るから、主食としての小麦は要らない様な気もするが、天ぷらとか揚げ物を作るのに使えるし、幾ら有っても困らない。


 小麦を百メートル四方分生やし収穫魔法。

 あっと言う間に収穫出来た。


 あっ、でもどうやってこれを小麦粉にするんだろう?

 砕けば良いのか?


『それも専用の魔法が有ると思いますよ』


 なる程、小麦粉なら見た事があるが、粉になっていない状態など見たことが無い。

 つまり、ほぼ確実に収穫された小麦は粉になる。

 ならば小麦の粉砕魔法が無い筈がない。


「出でよ! 麦粉砕魔法!」


 使うと収穫した麦が一気に集まり縮んだ。

 念力の様な魔法だ。

 シンプルに麦の粒同士を操作し圧縮、粉々に砕いている。


「って、砕くだけ!?」


 粉は自動で回収してくれない。

 おそらく、何か道具と組み合わせて使う魔法だ。


 慌てて風魔法で殻と粉を分離し回収する。


 と言うか、粉の状態でアイテムボックスに収納してしまったが大丈夫だろうか。


『アイテムボックスはただの巨大な空間では無いので混ざったりはしません。安心してください』


 それは良かった。


「そう言えば今更ですけど、なんで小麦は粉にして食べるんでしょうね。見た感じ、同じ様な植物なのに」

『それは端的に言うと、麦は粉になってしまうからですね』

「粉にするんじゃなくて、粉になってしまうんですか?」

『はい、殻の部分が中身よりも頑丈で、取ろうと圧力などをかけると中身が砕けてしまうんですよ。つまり米でいう籾殻を取ろうとすると、勝手に粉になってしまう。だから粉として用いるそうですね』

「へ〜」


 文化的なものでは無く、ちゃんと理由が存在するようだ。


 それにしても異世界関係の事を聞くと、本を朗読したりするのに、農業関連や作物関連ならしっかりした答えを返してくれる女神様。

 とても役立つ情報を教えてくれるが、異世界転生担当の女神様としては何とも言えないものがある。


『…………』


 自覚でもあったのか、おそらく心の声は聞いているのだろうが珍しく文句が帰って来ない。

 しかし失礼な像を造られて精神がやられている今、ここで何か言ってしまったら本格的に異世界転生担当から農業担当に転職しかねない。


 触らぬ神に祟りなし。

 そっとしておく俺であった。



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設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。ボッチは本編のアンミール学園で裸体美術部(合法的に女性の裸を見ようとする部活)の部員です。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
ボッチと同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

兄弟作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
ボッチと同じ部活に属する皇帝が主人公です。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
ボッチと同じ学園の風紀委員(ボッチ達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

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