表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/293

ボッチ81 ボッチ、米畑を作る

年末年始投稿です。

 


 この高原の外は、標高も低くなる事もあり、木の数も多かった。

 加えて人が居らず木を切る者が居ない為、結構な大木が多く、前に洪水魔法を使ったせいで薙ぎ倒されそこそこ乾いている木が多かった。


 そんな条件が重なり、人為的に引き起こそうとしても得られないくらい見事な炎が各所で上がっていた。


 それでも何とか雨を駆使し、鎮火することに成功した。


 もう、畑予定地が広がったとでも思っておこう。


『よくよく考えてみれば、一人分の食料を生産するなら、高原一つ分の土地だって過剰じゃありませんか?』

「ま、まあ、多少広くても問題ありませんよ」

『例えば大人一人のお米一年分の消費量は昔の尺度で一反の畑、三百坪ほどの畑で賄えるとされています』

「えっと、三百坪ってどのくらい?」

『大雑把に三十メートル四方くらいです』

「へ、へー……」


 この高原、幅だけでも一キロ以上はある……。

 一キロメートル四方だとしても、三十メートル四方大体千平方メートルだとすると千倍の広さだ。


 千人分の食料を生産出来る土地の時点で、ボッチの俺には必要無い。

 持て余す事、間違い無しだ。


 木属性魔法で高原を再生するか?


 いや、より広い畑が欲しいと思った時に草が有っては、また除草しなくてはいけなくなる。

 日本でなら草を生やす方が難しいのだろうが、魔法が有るここでは草を生やす方が簡単だ。


 取り敢えず、畑を作ってから考えれば良いだろう。


 何なら、花畑を作ってみても良いし。

 別に畑に作物も育てなくてはいけないと言う決まりは無い。


 うん、持て余したら花畑を作って見よう。


「女神様、余った土地は花畑にするので問題ありません」

『花畑ですか。それは良いアイデアですね。今後もここで生活する事を考えると、景観も大切ですからね』


 土地の使い道も決まった事だし、いよいよ畑作りに取り掛かる。


 土属性魔法と仙術を駆使して、焼き畑した全域の大地を掌握。

 そして直接動かしかき混ぜ、柔らかく仕上げてゆく。

 炭が土と混ざり色が均等になると、畝の形に成形。


 こうしてあっという間に見かけ上はよく見る何も植えられていない畑が完成した。


『……これは、見事ですね。本職では無いとは言え、永きに渡り農業を見て来た私としては、素晴らしいとしか言いようがありません』

「異世界の農業って、凄いんですね」

『いえ、これは相当な魔法の腕前が無いと出来ないと思いますよ。直線一キロの干渉ですら、可能な魔術師は少数でしょう。ファイヤーボールの様な魔術だってそこまで飛びませんよ。遠距離特化型の魔術で届くかどうかでしょう』


 この世界の農業水準からしても凄い事をしていたらしい。


「でも、そう考えるとこの世界の遠距離攻撃って大した事無いんですかね? ライフルって七キロメートルくらい飛ぶらしいですよ? 富士山の標高が三七七六メートルですから、富士山の傾斜を三十度だとしても麓から山頂まで七キロメートルちょっと。つまり富士山の麓から山頂までの距離くらい銃なら飛ぶのに、魔法はその七分の一も届かないなんて」

『銃も有効射程距離はそこまででは有りませんよ。あくまでも飛距離がそこまで飛ぶだけですから。

 そして魔法以外の遠距離攻撃全般となると、この世界のものもかなり遠くまで届きます。あくまでも魔法と言う形を遠くまで留めるのが難しいのであって、例えば近くで矢などを加速させればかなり遠方まで届きますから。魔法は遠くまで干渉し続けるのが難しいんです。今回みたいに』


 つまり、魔法で銃を再現するとして、弾を加速させる為の爆発なら幾らでも起こせるが、銃弾の形を遠距離でも保たせるのは難しいと言う事か。

 ただ、魔力で作った銃弾出なければ物理的に壊れない限りは問題ない。


 この世界の遠距離攻撃はどうやら魔力で作ったものではなく、魔法によって元々ある武器、矢や投槍を加速させる方式が主流なようだ。

 そしてそれは地球の武器にも匹敵、もしくは超える。


 無い事に越した事が無いが、今後もしまた強大な敵に襲われる様な事があれば、非常に役立つ知識だ。

 応用する事も対策する事も出来る。


 まあ、災害魔法は普通に数キロメートルの距離を燃やし尽くしていたが……。

 俺に遠距離対策は必要無いかも知れない。



 兎も角、かなりの広範囲、焼き畑を行った部分での畝作りが終了した。


 畝が完成したらいよいよ作物を植える。


 まず最初に生み出したのは米。

 やはり一番大切なのは主食だ。

 そして最も慣れ親しんだ作物と言えば米しかない。


 “原初の樹(ユグドラシル)”を使うと種として米が生じ、それが畝へと降り芽吹いて行く。

 芽は伸び続けやがて稲となり、豊かな実りをもたらした。


 一回やって感覚を掴むと同時に幾つも発動し、等間隔で畝に植えてゆく。


 魔力の消費量、術式の難易度は桃の木を生み出した時よりもだいぶ少ない。

 おそらく桃栗三年柿八年、桃を実らせるには三年分急成長させなければならないが、米は半年ぐらいで実る。

 多分、この違いだと思う。


 あっと言う間に立派な米畑が出来た。


 あれ? 米畑?


 あっ……。


 米、畑で作るものじゃない……。

 米を作るのは水田だ。


『急に唖然として、どうしましたか?』

「女神様、米、間違って畑に植えてしまいました」

『ああ、確かにお米は通常水田で作りますね。ですが、別に育てられない訳ではありませんよ?』

「えっ、そうなんですか?」

『品種は多くの場合、水田で作るものとは異なりますが、例えば餅米は水田でも作られていますが畑で作られる事も多いですよ』

「へー、餅米って作り方も若干違うですね。あっ、この作った米、餅米になっていたらどうしましょう? 餅か御赤飯にでもして食べましょうか? 小豆も栽培しないと」

『お餅なら餅米だけで作れますが、御赤飯なら普通のお米も必要ですよ?』

「えっ、あれって餅米だけで出来てるんじゃ無いんですか?」

『御赤飯は餅米に白米を入れて固さを調整しています。場合によっては半分も入って無いと思いますよ?』


 御赤飯、そうだったんだ。

 全部餅米かと思っていた。


 何にしろ、餅米をご飯っぽく食べるには、白米が必要らしい。


「あっ、ちなみに御赤飯って小豆の他に何か必要ですか?」


 よくよく考えたら調味料も殆ど無い。


『いえ、御赤飯なら小豆があれば作れます』

「小豆と煮込んだだけでああなるんですか?」

『ええ、基本的にはそうですね』

「意外とお手軽な料理だったんですね」


 まだ餅米と決まった訳ではないが、小豆くらいなら準備しておいた方が良いだろう。

 この魔法を使った農業は、料理よりも早く作物を育てる事ができる。殆ど手間がかからないのであれば、用意しておいた方が良いに決まっている。


 取り敢えず、次は小豆だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。ボッチは本編のアンミール学園で裸体美術部(合法的に女性の裸を見ようとする部活)の部員です。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
ボッチと同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

兄弟作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
ボッチと同じ部活に属する皇帝が主人公です。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
ボッチと同じ学園の風紀委員(ボッチ達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ