表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
73/74

73.我が全員相手してやる!

夜が明けた。

朝早くに起きた俺はコノハに書き置きを残して、宿を出て自宅に向かった。


さて、今日は約束のクロとの決闘の日。

場所はエルメス邸の国軍旧演習場、以前キエさんと戦った場所だ。


だが、そこへ行く前にやることがある。


俺は自宅に置いてあった一冊のノートを手に取り、それを確認した。


「よし、この魔法があれば決闘も……」


俺は趣味としてソウドコレクションの製作の他にも、魔法の開発というものを嗜んでいる。

んで、これは魔法式と呪文を記したノートだ。

記されている魔法とは、無干渉魔法と仮想化魔法。

この二つは決闘をより便利にするために最近開発した魔法だ。


《無干渉魔法》とは空間に放つ魔法であり、対象の空間でけがなどのダメージを一切《無効化》する魔法。

これによって、相手の体に気を使わずに存分なバトルを展開させることがどきる。

でも、これだけだとダメージが入らないだけで意味がない。

そこで仮想化魔法の出番だ。

一方の《仮想化魔法》とは、その無効化された攻撃が本来どのくらいのダメージを与えるのかというのを仮想的に《見える化》させる魔法。

これによって、攻撃を受けたときに怪我する代わりとして、《HPバー》というものが減少するように設計する。

このHPバーをゼロにすると負けとなるシステムだ。


バーチャルチックになるのだが、この2つの魔法のおかげで、致命傷などを気にせずに全力の勝負を堪能することができるようになる。

今日のうちにでも、"俺の考案した"この魔法を決闘ついでに布教する予定なので、今後の決闘もこのバーチャル式をとることになろう。

怪我も減るしね。安全第一。


「さて、行くか」


玄関の扉を開け、家を出た。





エルメス邸についた。

門番のおっちゃんに用件を伝えた。

するとメイドのキエさんがやってきた。

そしてキエさんに案内される。


「お久しぶりですね、メナ=ソウド様。なんでも本日はフォーカードのクローバ様とご決闘なさるとか」

「ええ、この新しい魔法刀が出来たので、それの対戦相手として彼が引き受けてくれたんですよ」


「へえ、それはよかったですね」

「ええ、これで俺もキエさんより強くなりましたよ」


「それは言い過ぎです。まだまだ私には叶いませんよ」

「あっ、言いましたねえ」


「さ、演習場に着きましたよ。頑張ってくださいね」

「はい」


キエさんと別れ、演習場へ入場した。




キエさんと新しい刀のことについて色々雑談しながら10分ほど歩いた後、アルメナ邸の国軍旧演習場へと到着した。


戦闘フィールドではカロナ、ハルゴ、シホ、コノハ、クロが、俺の到着を待っていた。


「待たせてすまなかった、みんな」


「ううん、大丈夫だよ、コノハちゃんから聞いたから」


「そうかカロナ。それと伝言ありがとうな、コノハ」


コノハは書き置き通りに伝言してくれてみたいだ。


「はいでござる。承った任務は必ず遂行するのが拙者のポリシーでござるからな」


「で、メナっち? 例の魔法持ってきてくれた? なんだっけ、決闘を便利にするやつだったっけ?」


「うん。無干渉魔法と仮想化魔法。今から使う」


俺はノートの開き、呪文の書いてあるページを確認する。

呪文はなんだったっけな?

ああ、あったこれだ。

なになに、なるほど。


「『いかなる作用も無に帰れ』ゼロ・フルエンス!」

「『仮想の存在をここに映せ』バーチャル・チャント!」


無干渉魔法と仮想化魔法を発動させる。


その瞬間、演習場一帯が巨大な青いベールで包まれる。

この中ではいかなるダメージを受けても体が傷つくことはなくなる。

そして、俺たちの頭上にHPバーが現れる。仮想化魔法も上手くいったみたいだ。


「おおっ、頭に、頭に何かでたよ! メナ君!」

「それはHPバーと言ってな、自分の体力を可視化させたものだ」

「へえ、なんか面白いね。このゲージがなくなると負けになるのね」


「ねえ、メナっち。この青いシャボン玉みたいなのは?」

「それは無干渉魔法。この中で攻撃しても痛くなくなるんだ。ほらっ」

デコピンする。

「あっ……ホントに痛くない」

「便利だろ?」


そのような感じで女子たちが不思議そうにする。


(あっ、そういえば普及させるつもりだっんたんだよな)


俺はHPバーに夢中になっているカロナの肩を叩く。


「なあカロナ、このノートに魔法式とか具体的に記している。時間があったら宮廷の魔法士さんに渡しておいてくれ」

「わかったわ」


よし、これで布教も完了。

これで近いうちに宮廷の魔法士さんによって、この魔法も公開されるだろう。


「にしてもよくこんな魔法作っていたでこざるな、師匠」

「クロ相手に手加減してはいけないと思ったからな。怪我せずに全力のバトルがしたい……その欲求から作った。魔法開発するの結構頑張ったんだぜ?」

「それはすばらしいでこざる」


「さ、これで怪我とかの心配はなくなるわけだ。思う存分戦えるな。……そうだろう、クロ?」


さて、ここからが本題、クロとの決闘だ。

俺は対戦相手であるクロに視線をやる。

まっすぐ立ち尽くしていた彼は、笑顔でこちらへ振り返った。


「……そうだね。僕だけでなく彼の心配もせずに済むし嬉しいな」


「えっ? どういうことだ?」


クロがある人物に目配せする。

その人物とはハルゴ=シルディだ。


ハルゴがでてきた。


「メナ……僕」


「ん? どうした? ハルゴ?」


「いつか君に言おうと思って……」


「?」


「勇者党に入ってメナと一緒に特訓。僕も強くなった……。だから……その成果、君に伝えたい! 僕も……戦いたい!」


まさかのハルゴ乱入。

クロと戦うつもりで来たのだけどな。

予想外の展開だ。

だが、彼の眼に一点の曇りもない。本気だ。


「前々からそう思ってた。ノースランに行ってたとき……決意。僕は君たちと別れて気づいた。僕の目標は……君。そして僕の力を見てほしい。だから……戦いたい」


ハルゴがポツポツと言葉に出す。

それが重くのしかかる。


「ハ、ハルゴ……」


そんな前から俺にそんな思いを抱いていたとは。

それほどに俺と戦いたいのな。

へっ、そう言われると断れないよな。


「よし、ハルゴ。引き受けた。君とも戦おう」


「ありがとう」


となると、2対1か。


……いや、違う。


ハルゴだけではない。

勇者党を設立して以来、己の高見をめざし続けてきたものは彼だけではない。

ならば、彼女らも思っているはずだ。

一体自分の実力が、党首であるこの天才冒険者のメナ=ソウドを相手にどれ程通用するのか? を実際に対峙することで知りたい、そう思っているはずだ。


だったら彼女たちとも戦わないとな。


俺は三人に聞いてみた。


「ハルゴがこういってるが、お前たちはどうする? 勇者党発足からはや2ヶ月、今までの成果を俺にぶつけてみないか?」


「ええ、メナ君。邪竜の炎眼、前よりもっと短縮できるようになったからね」

「アタシだって頑張るよ。クロっちの発表のあと、ちゃっかり氷属性マスターしたんだから、それを見せてあげる!」

「拙者も刀を授かったでこざるからな。あれから刀技を磨いたでこざる。それをとくと見るでこざる!」


やはり3人とも承諾してくれた。


なるほど5対1か。


魔法刀を手にした俺なら、このくらい丁度良いハンデなのかもしれない。


「じゃあ準備しようか――」



――その刹那。



「待てえーーー!!!」



聞き覚えのあるガサついた声が聞こえた。

ある男子が足音とともに演習場に何者かが入ってきた。


「あ、あなたは!?」


俺は驚いた。


スペードル家の竜人、リュウ=スペードル先輩だ。

久しぶりだ。


「今の話、聞かせてもらった! メナ=ソウド、貴様にはウェルトラのときの借りがあるからな。オレも参戦するぜ!!」


「私もよろしくですわ。カロナから聞きましたよ、魔法刀の件。アルメナ学園の生徒会長として、あなたの本当の力を目にしたいものですね」


先輩の隣には生徒会長のセイラさんも。

カロナの姉ちゃんだし、今日ここで決闘やるの知ってたのかな。

そして、彼女がスペードル先輩を連れてきたらしいな。


ってことは、これで7対1か。

しかも、対戦相手は全員一癖も二癖もある手練れ。

これは少しヤバイかもな。

ちょっと本気ださないといけないかも。



そんなことを思っている俺のもとに、再び何者かが近づいてくる気配が。


「ほらほら、行こうぜ、キエ」

「や、やめてください、スウィンガ先輩。私、以前メナ様と決闘しましたし、彼の腕はわかっているのです」


そんなやりとりをしながら、なんとスウィンガ先生がやってきた。

そして先生に服を引っ張られながらキエさんが嫌そうな顔をしながら戻ってきた。


えっ、なに?

この二人先輩後輩の関係なの?

たしかスウィンガ先生って元国軍の人だったよな?

たしかキエさんって裏の姿は国軍の部隊長だったよな?

なるほど、それならこの状況、あり得るな。


……それで?

この人たちもわざわざここまで来たってことは……まさか?


「学校の用事で王宮まで来てみたらそこでキエと鉢合わせしてな。それで昔懐かしの演習場に立ち寄ってみたらこの有り様。そういうわけでソウド君、先生も参戦する! そして、このアルメナ王国軍創設以来の最強の後輩、キエ=オーガルも参戦する!」


「や、やっぱりそうか~!?」


案の定の参戦だ。


「私嫌です、戦いたくありません」


「別にいいじゃないか。先輩からのお願いだよ……? もし従わないなら国軍時代のキエの写真、ばらまいてやるからな」


「あ、わかりました。わかりました。やります。戦います」


という感じで新たに二人が乱入。


これで9対1……か。


アハハ、笑える。

初めはクロとタイマンの決闘をする予定だったのに、どうしてこうなった?

マジでとんでもないことになってしまった。


やれやれ大乱闘だな、こりゃ。

だったらなおさら無干渉魔法と仮想化魔法を使っといて正解だったな。





9人全員がそれぞれ戦闘の準備を終えた。


さて、これ以上は増えなさそうだな。

やれやれ全くみんなどれだけ俺と戦いんだよ。

でも、そういうのは嫌いじゃない。


目の前にいるのは、アルメナ学園……いや、王国の中でも腕よりの冒険者たち。

彼ら彼女らを相手に、俺はこの刀という武器で今から一戦交えるわけだ。


刀というユニーク武器とともに、最強の冒険者を目指したい


――それが学園に入学する前からの、俺のきっての目標であり、夢であった。

この戦いで勝利するということは、この夢の達成といって違いない。


今、その瞬間が差し迫ろうとしている。


「僕たちは準備できたよ、メナ」

「そうか、クロ。俺もだ!」


足はつらないようなしないとね。


じゃあ決戦開始だ!


俺は大きく息を吸い込んで、全員に聞こえるように大声をだした。




「俺が……いや、我が全員相手してやる!!! さあ、お主らの全力を以てして、かかってくるがよい!!!」




フィールドのど真ん中、青々しく光る刀を右手に叫ぶその姿はまるで、自分を倒すためにやってきた《勇者》を葬らんとする《魔王》の姿のそれであった。




はやくてあと1,2話で現在の章を終了させる予定です。

そして……完結です。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ