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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
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70.魔法刀製作、買い出しとコノハの趣味

2週間前、《ウェルライト》という世界最高級の青い鉱石を手にした。

そして1週間前、研究発表会の優勝賞金をクロより譲り受けた。


いよいよ魔法刀製作のためのお膳が揃ったわけである。

そういうわけで、今日から本格的に魔法刀製作にとりかかることになりました。



さて、今回製作を目指しているのが《魔法刀》。

本体に《魔力付与》をすることによって、より強力なスキルを放つことができるようになる上級の武器だ。


《魔力制御》が叶った今となれば、愛刀であるいつもの鉄刀に対してもCランクくらいまでの魔力なら付与することができる。

しかし、本来の俺の魔力は魔王クラスのSランク。

このとんでもない魔力を付与するには、そこら辺の金属でできたナマクラではお話にならない。

すなわち、ガチで強力な素材を元にした頑丈な武器を製作する必要がある。


製作なら鍛冶屋に依頼するのも手かもしれないが、そういうわけにもいかない。

確かにガントレットや杖やメイスといった武器に関しては、上位の武具でも販売されていたり鍛冶屋に頼むことができるので、製作自体に早々困難することはない。


しかし、俺が作ろうとしてるのは、刀である。

俺しか製法の知らない唯一たる固有武器なのである。

だから他の武器のように第三者の手を借りたり、製法を明かすことは許されないのだ。

カロナたちに手伝ってもらうことさえもできない。

素材集めから鍛冶作業まで全てを単独でこなさなければならないのだ。


――魔法刀製作とはそれほどに過酷なものなのである。


といっても、猫の手も借りたいのは事実。

そこで俺は唯一刀を持つことを許しているあの女子とともに製作に取りかかろうとしていた。


ここは俺の家の工房部屋。

部屋のスペースを最も占めている(いろり)の中の釜の辺りには、まだ片していない炭のゴミ屑が散らかっている。

さらにその(そば)には金槌や砥石などの鍛冶工具が床に無秩序に散乱している。

また、壁の方を見ればそこには棚があり、今まで製作してきた剣や斧といった刀以外の斬撃を活かした武器(これをソウドコレクションと呼んでいる)や、鉄などの金属素材が飾られている。

まあ、散らかってて狭苦しいというのが第一印象の部屋だ。


王都アルメナに越してから、はや三ヶ月。

前の住人によってキレイに掃除されていたこの部屋も、ソウドコレクション作りという俺の趣味によって、ボロ部屋になってしまっているわけである。



さて、ただいまこの汚部屋で行われていますは、魔法刀製作会議。

部屋の真ん中に位置する木製の机の上に乗せている模造紙に、今回の計画を書いていて、それを元に彼女と"二人きり"で話し合いをしていて、その議論も終盤にさしせまっていた。


「……というわけで、今の手順で進めたいと思う。ぜひとも協力してくれ、コノハ!!」


「はっ、メナ師匠の嘆願とならば、どうして否可致す理由がござろうか。コノハ=ヤマト、師匠のお手伝いを任命されたことを嬉しく存じ奉るのでござる!!」


首を大きく縦にふり、快諾してくれたコノハ。

彼女にしか頼める相手がいなかったので、本当に助かった。


「じゃあ早速買い出しに行こう!」

「おおでこざる!」





外を出た俺とコノハは、町の中心区に位置する《Bスミス武具店》という一流の鍛冶屋を目指して町の大通りを歩いていた。


今日は休日なので、町を歩く人は思いのほか多い。

俺は休日は基本的に家に引きこもって、魔法式の計算やソウドコレクションの製作に勤しんでいたので、この人波に慣れるのにも結構時間がかかった。


そうして人混みに慣れてきた俺は、ようやく雑談をする余裕が出てきた。


「やれやれ、王都は相変わらずの人混みだな。故郷の空気が恋しくかんじるよ」


「ハハ、それは大変でござるな。メナ師匠は休日は普段何をされているでござるか?」


「呪文作りとソウドコレクションの製作だ」


「おお、それは精がでるでござるな!」


「ありがとう。と言っても最近はウェルトラに行ったり発表会の準備があったりと多忙極まりなかったから、なかなか趣味に没頭する時間はなかったのだけれどね」


ホント、最近は色々忙しかったもんな。

早く休みたいものだよ。

夏休みが待ち遠しいぜ。


「では当面は時間にゆとりがでてくるのでは? そろそろ夏休みですし。また趣味ができるでござるよ、よかったでござるな」


「いや、そういうわけにはいかない。魔法刀作ったあとにポテチのバイトをすることになってるんだよな。それに期末テストも近づいてきているわけだし……。学生たるもの、なかなか暇にはなれないらしい、ハハハ」


「あー、そうでござるね」


「ところで、コノハの趣味は? 人ごみには慣れてそうだし、やっぱりアウトドアな感じ?」


「拙者ですか? 拙者は散歩が趣味でござる。師匠の言うとおり、屋外でござるな」


「なるほど、やはりアウトドアだな……ん? もしかしていつもその服で?」


東の国、ニチホンの伝統を重んじるコノハは、服装までもがニチホンの精神に侵食されていて、着物? という振り袖に似た和装を着用しているのである。

この緑の着物がある意味奇抜で目立つ。

さっきから通る人から変な視線を受けている。

もしかしてこいつ普段からこの格好で町をプラプラしているんじゃなかろうな?


「ま、まあそうでござるな。……えっ? どうしたでござるか? さては派手で目立つだろと言いたいのでござるか? ふっふ、それは笑止でござる。なぜならこの服でなければならない理由があるのでござるからな!!」


「ふぇっ!? なにそれ気になる」


「ハハハ~、教えな~いでござる~♪」


は?

おいおい、なんだよこいつ。

そこまで引っ張っておいて教えてくれねえのかよ。

このチンチクリンのおかっぱ女子めがあ。

可愛いからといっていい気になりおって~。


「そうかそうか。コノハよ、お前はおっぱいが小さければ器も小さいのな。ほら、あそこの八百屋でメロン買ってやるぞ。器、大きくなるかもしれないな。俺はパットでも構わないぜ」


「むっきぃぃぃ!! 腹立つでござる! 乙女に対してその失礼な発言とは。拙者怒った、絶対に教えてあげないござるからな!!」


胸について軽く弄っただけで、彼女は足をバタバタさせながら想定以上にキレ返してきた。

どうやら貧乳という事実がかなりのコンプレックスらしい。


なんというか、コノハはからかいやすい女だ。

カロナやシホとかだったりすると、あの二人は良い家の生まれであり都会育ちのお嬢様って感じだから、田舎者特有の親近感というやつが湧かない。

一方で、隣国の平民家出身のコノハは、そういう意味では親しみやすい。

だからついついからかいたくなってしまう。

特にこうして二人きりな状況になると、その衝動が抑えられなくなるのだ。

もし、この場にカロナやシホがいたら、こんなことは言わないと思う。





そうこうしていると鍛冶屋に到着した。

そして、買いたいものをサクッと買って店を出た。


鍛冶業を趣味としている俺は鍛冶屋を訪ねることはたまにあったのだが、それはせいぜい近場の三流の鍛冶屋だ。

一流の鍛冶屋……ましてや《Bスミス武具店》となると、格が違う。

なので敷居が高い。


だが、優勝賞金を手にした俺たちはその高い敷居を跨ぐことが許された。入店の資格を得た。

まさかこの平民たる俺たちがこの高級武具店に入店することになろうとは……非常に感慨深いものであった。


Bスミス武具店に入った俺は驚かされた。

さすが王都一番の鍛冶屋といったところか。

例えるなら、チェーンの回転寿司屋と、高級寿司屋くらいに商品のクオリティの差があった。

店員さんの接客も丁寧だったし妙に形式張ってた。

おかげでちょっとだけ緊張したけれど、なんとか目標の品を買うことに成功し、ことなきを得てこの武具店を後にした。



そういうわけで帰り道の現在に至っている。

購入袋を両手に、コノハと一緒に行きのときと同じ通りを歩いていた。

そして俺は、往路で話題にしていたコノハの服装の理由についてを未だに知りたがっていた。


「ところでさっきの着物の件、どうしても教えてくれないのですか? コノハ様?」


俺とコノハは刀士として師弟関係にある。

しかし、師匠の俺が弟子の彼女を様付けしはじめる始末。

そこまでして、理由を知りたいのである。

メナ=ソウドは軒並み好奇心が強い人間だからな。


「そう呼ばれると、舞い上がってしまうでござるな~。仕方ないからヒントを一つ与えるのでござる!」


へへっ。

こいつ、ちょろいわ。


「おお、さすかコノハ様」


様付けされた瞬間に舞い上がるコノハを見ると、心の中でニヤニヤが止まらなくなるが、それを顔に出さないようにこらえる。

さあ早くヒントを寄越すのだ。


「え~っとヒントは、拙者のもう一つの趣味でござる。それが拙者の服装に関係しているのでござるのよな!」


ほう、二つ目の趣味とな。

散歩以外になんかあるのかな?

もしかして筋トレとかか?

いや、でもそれだったら家のなかでできるしな。

それにコノハの服装の理由に繋がるとも思えない。

うーん、一体なんじゃらホイッ。


(うう、わからない……)


Aランクの知力を以てしても答えがわからない。

俺は頭を悩ませた。


すると、背後から子供の声が耳に届く。


「あ、あの服は! やっぱりそうだ! コノハ姉ちゃんだあ!!」


え?

今コノハって?

気のせいじゃないよね?


「ゲゲッ!! こんなときに限って!!」


嫌そうな顔をするコノハ。


流れで振り返ると10歳くらいの2人の子供が曲がり角からひょっこり姿を現していた。

一人の少年と一人の少女である。


「最近コノハ姉ちゃん見ないからみんな心配してたんだ!」

「コノハお姉さん、また私たちと一緒に修行をしてください!」


えっ、どういうことだ?

コノハ姉ちゃんだと?


「二人ともかたじけないでこざる。本日は拙者、この方と用事があるので時間がとれないのでござるよ」


「ふーん、わかった!」

「も、もしかしてその男の人はコノハお姉さんの彼氏さんですか?」


少年君が鼻水たらして返事する一方、少女がとんでもない質問を浴びせた。

なるほど、少女の方がマセとるな。

この歳でそんな質問を……まったくなんてオマセな女の子なんだ。けしからん娘だ。


「なっ、何をバカなことを言うでござるか!! かかっ……彼は拙者のお師匠様なのでござる。けけっ……決してそのような濃密な関係では……」


コノハがテンパる。


仕方ない。

ここは俺が弁明するか。


俺は腰を落として少女と目線の高さを合わせる。


「少女よ、君は何か誤解しているようだな。そして君は少し保健体育の勉強をしすぎだ。やれやれ、このご時世クラスメイトの男女が一緒に買い物をするのはごくごく当たり前のことだぞ?」


「へえ、そうなんですか~」


ポケーッとした少女はコクッとうなずいて納得する。


「そんなことより、二人に聞きたいんだけど、二人はどうしてコノハを?」


「えっとね、私たちが公園で特訓していたら、このすごく変な服をしたコノハお姉さんがやってきたのです。それで一緒に修行のお手伝いをしてくれるようになったのです!」

「僕も驚いたよ。コノハ姉ちゃん、あのアルメナ学園の冒険者っていうからさ~」

「でもね、最近見なくなったのです。私心配してたけど、会えてよかったです」


「なるほどな、それはすまなかった。コノハが不在だった原因はおそらく俺にある。でも今後は君たちの修行見てくれると思うから安心してくれ。な、コノハ?」

「そ、そうでござるね」


「うん、いいよー」

「よかったです!」


「それではまた後日参上するでござる。さらばでこざる、タロウ、ハナコ!!」


へえ~、少年と少女の名前はタロウとハナコというのか。

親近感のわく名前だな。


「じゃあねー、コノハ姉ちゃん」

「バイバーイ」ノシ


タロウとハナコは大きく腕を振りかざして、俺たちを見送ってくれた。





そうしてタロウ、ハナコと別れた後のこと。


「なるほどなー。お前普段から子供たちの修行の面倒を見てたのな。これが二つ目の趣味か。それに子供たちに見つけてもらうためにわざわざその目立つ服装をしていたと。そういうことなんだろ?」


あの二人の子供とのやりとりを見て、全てを理解した俺はコノハに問い詰めた。


「せ、正解でござる」


コノハは悔しそうに答える。


「それにしてもコノハ姉ちゃんとはねえ……。ははっ、良いじゃないか。凄く素敵だと思うよ」

「そそ、そうでござるか……。照れるでござる」


ロリ体型のコノハがお姉ちゃん呼びされる。

そのギャップといったら面白い。

こんな貧乳のチンチクリンでも立派なお姉ちゃんやってるんだからな。


だが、あの少年少女にあそこまで慕われているコノハの姿を見ていると、日頃の人となりが容易に想像できる。

そんな彼女を見ていると、とても素敵だと思えた。


ははっ。

どうやら俺の目に狂いはなかったようだな。

彼女を刀士として認めて正解だった。

彼女に手伝いをお願いして正解だった。


(そうだな……謝っとくか)


「コノハ、さっきは悪かった」

「え、なんのことでござるか?」


「あ、いや。なんでもない。ほら、早く帰ろう」

「そうでござるな」


そうして、俺たちは工房へ歩みを早めた。


買い出しだけでもコノハの知らない一面を知ることができた。

刀作るときも、もっと彼女について知れればいいなあ。

彼女が勇者党に正式加入してからわずか2週間。

少しでも彼女のことを知っていきたいと思う俺なのである。


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