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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
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69.優勝賞金の譲渡、発表会の終了

エルメス邸、カロナの部屋。

カロナたちによってこの部屋で安静に看病されていた俺のもとに、なぜだかクロとハルゴが訪れてきた。


「クロ、それにハルゴ……どうしてここに?」


ビックリのあまり目を丸くさせた俺はベッドから起き上がり、ドアの前に立つ二人を見る。


「それは決まっているだろう? 君に用があってきたんだ!」


俺の表情とは反対に、自慢のクローバーの形をした緑髪をかきあげながら、爽やかな笑顔でクロは答えた。


「ややっ、なんということでござるか。噂には聞いていたでござるが、クローバ殿とは近くで見るとこんなにもハンサムな男子とは!? 拙者感激でござる! 拙者、コノハ=ヤマトと申すものでござる。ぜひ握手してほしいのでござる! そして、叶うものなら連絡先を教えて欲しいのでごさる!」


「へえ、あなたがあのクローバの生まれの? おおっ、なんてイケメンなのかしら。はじめまして、私はカロナ=エルメス。よろしくお願いしますね」


クロの姿を見や否や、コノハとカロナが扉の方まで駆けていった。

さっきまでそばで俺を看病していたにも関わらず、二人はそれをすっぽかしてクロに挨拶に向かったのだ。


そういえばシホと違ってカロナとコノハはクロとは初対面だったな。

二人ともやつのイケメンオーラにあてがわれたようだ。

本物のイケメンを前に、いかなる女子(おなご)も乙女になってしまうという言葉は本当のようだ。

その証拠にコイツら、若干目がハートになっているもん。

俺のこと忘れてるもん。


「こちらこそよろしくね、カロナさんにコノハさん。連絡先はちょっと教えられないけど」


クロは相変わらずの爽やかな感じで、二人に返事する。

このイケメンの緑髪男子を前に、頬を赤くし照れを示すカロナとコノハを見ていると、やっぱ女子ってイケメンに弱いのなって悟れてしまう。


(このままじゃ本題に入れないな)


そう思った俺はそばの壁をドンと叩いて、こちらに注意をむかせる。


「おい二人とも、クロの話をちゃんと聞いていたか? クロは俺に用があってきたのだぞ」


罪悪感が残るが、俺は二人の乙女を半ば強引に黙らせることにした。


そういうわけで、話を本題に移らせる。

俺たちは部屋の真ん中に置かれている来客用の6人用の円卓型の机へ移動する。

そして角イスに腰かける。


「それで? 俺に用だと? 優勝を報告しにきた、まさかそういうことなんじゃないだろうな、クロ?」


正面の位置に座るクロの右手に乗せられている優勝トロフィーと金封を、俺は指差す。


「いや、半分その通りだよ。さきほど行われた閉会式で僕は表彰され見事このトロフィーと優勝賞金を獲得した。そのことを君に伝えにきたんだ」


ほお、本当にそのために訪れてきたのだな。


(少し、快くないな)


優勝を強く志していた俺からすると、ライバルであった彼から優勝を報告をされても、いい気分にはなれない。

相手の立場になってものごとを考えられるなら、なおさらクロは俺に報告するべきではないはず。

聡明な彼ならそれくらいわかるだろう。

それなのになぜ、わざわざ来たのだろうか。

そのことが俺を困惑させ、腹立たせる。 


「自慢……しにきたのか?」


不貞腐れ、少々意固地になった俺は机の上に置いてあったコーヒー入りのカップをすすりながら嫌みったらしく聞き返す。


「そ、そんなわけないじゃないか! 僕は君に自慢しようだなんて思ったことはないよ!」


焦ったクロは机から身を乗り出して弁明する。

その慌てっぷりからするに、自慢する気は本当にないようだ。

まあこいつ性格もイケメンだし。


「まあ、そうだよな」


「それよりもむしろ感謝しているんだ」


「感謝だと!?」


感謝。

想定もしない言葉がクロの口から出てきた。

口にしていたコーヒーをこぼしてしまう。

そのくらい驚いた。


「君たちだけには言っておくよ。僕が氷属性について研究しようと思った本当のきっかけを」


何かを決意したかのような顔つきに変わったクロは、イスか立ち上がり、まっすぐ俺たちを直視してきた。


「本当のきっかけ? クローバさん、あなたは発表のとき言ってましたよね? 火災の被害を減らしたい、それが研究の動機であるということを。これがきっかけではないのですか?」


いち早くクロに質問を投げ掛けたのはカロナだ。

彼の発表をきちんと聞いていたカロナは、しっかりと要点を押さえたことをたずねる。


「俺もカロナの意見に賛成だ」


全くカロナの言うとおりだ。

例の火災事件。

新歓戦のとき、リュウ=スペードル先輩に対して俺が直々に放った初等魔法のファイアボールによって、会場であるコロシアムを全焼させたあの忌々しい事件。

その事件を目の当たりにしたことがきっかけで、クロは火災の被害を減らすべく氷属性というものを研究してみようと思い立ったと、あのとき言っていた。

そういうことで俺は解釈しているんだけどなあ。


そんな俺たちの認識を改めさせたい。

さきのクロの発言はそういう意味で発したものだと捉えることにした俺は、彼の言葉を待つ。


「ああ、ごめんよ。あれは建前で言っただけさ。変に誤解させてしまってすまなかったよ。実は本当の理由があるんだ!」


「お、おう」


「それはね……」


「それは?」


唾をのむ。

円卓に緊張が走る。


「君だよ、メナ!」


クロはビシッと右手で指差した。

クロは俺を指差した。


「お、俺!?」


マジかよ。

俺ですか?

まるで心当たりがないんですけど。


「メナ、今の僕なら君と決闘で勝つことができる」


「へっ?」


「おや? 頭の良い君なら今のですぐピンとくると思ったのだけれど、わからないかい?」


「わ、わからないです」


「なら教えよう」


「お願いします」


「そう、君は炎属性の使い手。あのときのファイアボールの火力は素晴らしいものだった! コロシアムが炎上? 僕はあのときむしろ興奮したね。初等魔法だけであそこまでの威力を放つんだから」


「はあ?」


え、なにこいつ?

メチャ興奮してる?

いつになくテンション高いんですけどっ。


そして、俺が炎属性の使い手というには若干の語弊がある。

なんたって天才たる俺は炎水風土雷の五属性及び無属性の全ての属性に適正があるのだからな。

クロのやつそこを勘違いしちゃっているな。

まあそれに対して訂正を指示するのも野暮だし、ここでは注意しようとは思わないが。


「そう、あのときから君は僕の目標になった。どうすれば君に勝てるのだろうと、毎日必死に考えた。そうして思いついたのさ。灼熱なる炎を打ち消すには、極冷なる氷を生み出せば良いのだってね!」


クロは身振り手振りで、研究するに至った過程を熱く語る。


「おいおい、嘘だろ? まさかそのために……」


「そうだ! 全ては君との決闘を意識し、君への対策のために始動した研究プロジェクトなんだ! そうして、ようやくにして完成したんだ。氷属性がね!」


これが氷属性誕生日秘話ということだったのか!

ははっ、まさか俺が原因だったとはね。

信じられないを通り越して、俺はむしろ笑うしかなかった。

だけど、これが俺への感謝にどうつながる?


「それで、俺への感謝ってのは?」


「それはもちろんきっかけを作ってくれたことへの感謝だよ。実際、氷属性はたくさんの場面で応用することができるようになるそうだ。人類は進歩したって、研究所の方にもそう言われたんだ。元来そのつもりはなかったんだけどね」


「と言ってもこの研究は君のファイアボールなしでは絶対に生まれなかったと思う。何かを成し遂げるには、必ずその発端となるファクターがある。それが大事なんだ。そして、今回のそれが君だった。だから僕は感謝していると言いたいんだよ」


「それほど感謝されるなんてな。ちょっとビックリだな」


「そこで君を訪ねたもうひとつの理由さ」


「え?」


「これを受け取ってほしい」


クロが掲げたのは、例の金封だった。

金封……お金……優勝賞金……まさか!?


「そうだよ、優勝賞金全額を受け取ってもらいたい!」


「本当か!?」


「さっき言ったよね。全ては君のおかげだ。だったらこの金封、君以外の誰に渡せというのだい?」


いや、それはお前自身だろ!

と言ってやりたかったが、そんなこと言わせないというオーラをクロから感じ取ったので何も言い返さないことにした。


「必要なんでしょ? 魔法刀を開発するためにさ」


「え、どうしてそれを!?」


魔法刀製作の計画は内密に進められていた計画。

そう簡単に情報が漏行き渡るとは考えられない。

いったい誰が?


「ごめん……メナ、ボクが」


「ああ、ハルゴか」


隣に座るハルゴが申し訳なさそうに名乗り出る。

いやまあ別に情報漏洩したことを怒ってるわけではないんだけどね。


「この前一緒にクエストに行った時に……」


「なるほどな、そういうことだったか」


そういえば俺たちがウェルトラへクエストにいってる間に、ハルゴはハルゴでクロと一緒にノースランという氷山都市へ同じようにクエストしていたな。

なるほど、その旅路で俺たちのことについて色々情報を共有していたというわけか。だとしたら納得だ。


「シルデイ君のことは責めないでおくれ。彼もまた君のことを尊敬しているのさ」


「はは、尊敬ね」


「まあそういうこともあって、僕は君を援助することを決めたのさ。だからこの優勝賞金1000万円全額、君に受け取ってもらいたい!」


「オッケー!」


ここまで言ってくれているんだ。

躊躇う必要などどこにある?

俺は即刻了承する。


「ただし!!」


「ん?」


「一つお願いをのんでくれ」


「お願い?」


俺は首をかしげる。


「魔法刀の製作が完了したら、そのテスト相手として僕と戦ってほしい。強くなった君と決闘がしたいんだ!!」


「ほお、どんなお願いをされるのかと思ったら、そんなことか。ちょうど発表会で負けた借りを返したいと思っていたところなんだ。いいぜ、その決闘受けてやる!」


決闘を受理した俺は立ち上がる。

そして、ガシッと握手を交わした。


「ありがとう、これで決闘成立。それじゃあこの金封を君に渡すよ。魔法刀ができるそのときまで、僕は待ってるよ」


「ああ」


「さて、これで僕はこれでおいとまするよ。このあと研究所のスカウトさんたちとお話がすることになっているからね。それじゃあね、バイバイ!」


「うん、またな」


そう別れを告げ、クロは部屋から立ち去った。


「どうやら安静にしている場合じゃなさそうだ」


優勝賞金を譲ってもらった俺は、このことを有り難く思い、必ずや良い魔法刀を作り、最高のコンディションで戦いに臨んでやろうと息巻いた。



さて、クロが完全に去ったあと、残った面子はいつもの勇者党のメンバーだ。

ここで俺はリーダーとして、改めてみんなに感謝の意を表することにした。


「みんな、いろいろあったけど今日までありがとな。これで研究発表会は終了だ。そして、明日からもよろしくな!!」


「ええ」

「は~い♪」

「ござる!」

「うん……」


ポテチの布教に勤しんだり、発表本番では緊張のあまり気絶してしまったりで踏んだり蹴ったりの研究発表会だった。

でも、こうして仲間の大切さを改めて認識できたり、お情けではあるが優勝賞金を手にすることもできたわけだし、これはこれで良かったよ。

終わり良ければすべてよし。

そんな感じで研究発表会が本当の意味で終了しました。



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