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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
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64.研究発表会、ポテチvs王様たち

 コロシアムのVIPルームにて。

キエさんに送られ、部屋の奥まで案内された俺はこれからポテチを布教活動を開始する。


さて、俺の目の前にいるのは、黄金の長テーブルを囲い、楽しそうに談笑する王様をはじめとしたお偉いさんたちだ。

上位の貴族はもちろん、様々な業界ののトップの人たちもいる。

その数合わせて10数名くらいだろう。

彼らはこの研究発表会の昼休みの時間を使って、食事をとりながら国の政治や関心ごとについて色々雑談しているようだ。


俺はそんな彼らを相手に、まもなくポテチという俺の考えたユニークお菓子を提供する。


「メナ君、あちらを見て」

「ん? あ、ああ」


カロナが王様たちのいるところとは反対の方向を指差す。


彼女の言った通り、俺はその方向を向く。

すると、そこにはたくさんの料理人がいた。

ただそれだけだ。

強いて言うなら引き締まった顔で部屋の隅で一列に並びテーブルを見つめている、といったくらいか。


「あそこにいるのは料理人よ」

「それは見ればわかるのだけど……」


コック帽子を被っているので彼らが料理人ということは猿でもわかる。

そして長テーブルに並べられている料理を見るに、彼らがそれを作ったのだろう。

もしかしてこいつが言いたいのはそのことか?

まさかそんなはずはないよな、と心の内で予想しながら、彼女の返答を待つ。


「あの料理人たちは今まさに品定めをされているのよ」


し、品定めだと!?

予想だにしない発言に俺はビックリする。

いったいどういうことなんだ?


「まだピンと来てないようね。ほら、よく見てごらん、あっちのテーブルを」


カロナの言うように王様たちのいるテーブルを見てみる。


そして、あることが判明する。


テーブルの上には、たくさんの種類の品がだされているのだが、その中でも進んで食べられてるものとそうでないものが顕著に二極化して現れている。


……そう、王様たちは自分のお気に召した品にだけ手を着けているのだ。


人気のある品はどんどん食べられ、そうでない品は大量に残ってしまう。

まさに戦いの場である、そんな印象をうける。


そのことに気づいた俺はカロナの言いたいことが薄々とわかってきた。


「昔、同じように私も母様と一緒にああいったところで食事したことがあるの。あのときは自分の好きなものを自由に食べ、気に入ったものがあればそれを作った料理人を宮廷のコックとして雇ったりもしたわ」


「へ、へえ」


そんなことがあったのか。

王族すげえ。

どうりでカロナが詳しいわけだ。


ふむ、それで今回も同じというわけか。


「もうわかっている顔しているね。そう、あの場は腕に覚えのある料理人たちが王様たちにその品のアピールをするところでもあるの!」


そうか、そういうことだったのか。

一見ただの食事会にしか見えないが、実はそういう選考の場にもなっているんだな。


たしかに料理人からすれば、自分の腕が認められ、宮廷料理人という名誉ある地位を得られるという夢のあるチャンスがある。

逆に王様たちからすれば、数ある料理人の品の中から自分の好みを探しだすことがでしるという発掘の場にもなる。


つまり、お互いにメリットがあるのだ。


研究発表会、まして昼休みのこんな食事会の合間にも、裏でそのような事情が存在なんて生まれてはじめて知った。

ちょっと衝撃の真実だ。


そこまで理解した俺はこれからどうすればいいのか悟る。


「それで、その選考の土俵に俺も立てと?」


「ええ。メナ君にも料理人たちと同じようにあのテーブルにポテチを出してもらうわ」


「ふーん、なるほどね」


直接王様たちに売り込むではなく、間接的にアピールするということなんだな。

しかも、凄腕のライバル付き。

周囲の上級料理人たちの出す高級な品の中に、このポテチを紛らせるというのか。


これはまた、非常に苦しい戦いになりそうだ。


そんな気がした俺は不意に笑いだす。


「フフッ、これも対決といったところか。料理人vsポテチ……いや、王様vsポテチといった方が妥当か。普段の戦闘なら負けない自信があるが、料理の対決なんてのは始めてだぜ」


「おや? メナ君どこか嬉しそうだね」


「バレてた?」


カロナの指摘するように、実際俺はワクワクしている。


言うなればこれも刀による戦いなのだからな。

この料理対決、俺は品の上質さ、クオリティで勝負するわけではない。

材料はただの安物のジャガイモ。

こんなのであそこの料理人たちに勝てるはずがないしね。


今回俺は刀 (ナイフ)によって生み出された形や食感で勝負するのだ。

つまり、刀で勝負するということと同値だ。


俺の考えた最強の武器である刀が一体この世界のどこまで通用するのかを試したいという欲求がある俺にとって、この料理対決と十分にワクワクするものなのだ。


「じゃあ早速ポテチテーブルのとこに置いてくるよ」


そうと決まれば話は早い。

俺はこの昼食会のルールを理解するや否やポテチをテーブルのもとへ提供しに行こうとする。

も、カロナが腕を掴んで止めてきた。


「待って! 無名のあなたが……まして、そんな怪しい仮面付けたメナ君がいきなり彼らのもとへ行くのは無礼よ。私が先導するよ」

「お、おう」


カロナは正論をかます。


そうだったな、俺ってば変装中だったわ。

この民族的な仮面つけたやつにいきなりポテチどうですか? なんて来られたら王様でなくてもビビるよね。

ここはカロナに従うとしよう。




 というわけで、カロナに追随し、まずはアリアさんのところへやってきた。


食事会には10数名の高貴な人たちが集まっている。

その中に、アルメナ国王様の実姉であり、カロナの母親であるアリア=エルメスさんが参加しているのも当然のことだろう。


カロナ曰く、まずはアリアさんに話を通すことで、俺の品の提供を許可してもらおうという寸断だ。


「こんにちは、お母様」

「あら、カロナじゃないの」


「お母様、こっちに来て」

「あっ、ちょっと、カロナ?」


お話し中のアリアさんを強引に談合の席から連れ出し、長テーブルとは少し離れたソファまでやってきた。


「カロナどうしてここに? もしかしてお腹減った?」


「いえ、そういうわけでは。この者の料理が気に入りまして。飛び込み参加にはなるのですが、ぜひ彼にも提供の機会を与えていただけないかと思いまして」


カロナは仮面姿の俺を紹介する。


「ふーん、そこのシェフですか」

「え、ええ」


アリアさんは目を細めてこちらを見つめてくる。

何か疑いの目でこちらを見てくるので、俺の正体がバレるのではないかと思った俺は動揺する。


(まさか、見透かされている? 

いやいや、かなり前に彼女とはエルメス邸でお会いしたことはあるのだが、まさか覚えているはずないよね。

仕事柄、王族さんは色んな人に会うと思うからいちいち一人一人の顔なんて認識ているはずもない。

ましてただの学生であるこの俺のことなんて忘れているだろうし。)


「なぜわざわざ仮面なんてつけているのかしら、メナ君?」


バ、バレてる。 しかもこの人俺のこと覚えてた。


「……」


焦った俺は返す言葉を見失う。


「……うん、まあいいわ。何か理由ありそうだし。……オホン、カロナの推薦とあれば期待してもいいでしょう。そちらの仮面のコックさん、あなたが品を提供するのを認めます」


空気を読んでくれたアリアさんは料理を出すことを許可してくれた。

彼女はものわかりがよく、非常に器の大きい人らしい。


「ありがとうございます!」

「ありがとう、お母様」


そんな彼女に俺とカロナは礼をした。


「じゃ、あそこにある皿の上に君の品を置き、テーブルに置いてきてらっしゃい」

「承知しました」


アリアさんが指示する。


それにしたがった俺は、ポテチを皿の上に置き、さりげなく長テーブルに出すことに成功した。

さあ、勝負の始まりだ。





 長テーブルの上には、腕ありの料理人が提供したたくさんの品がおかれている。

どれもが希少モンスターからとれるレベルの高い食材で作られたものである。

ゴールドスライムのゼリーや、黒茸(ブラックマッシュ)などといった平民ではまずお目にかかれないような、超級のものが出されている。


その中にポツンと、その辺で取れるジャガイモから作ったポテチがあるというのは、非常に滑稽なものだ。


「おいおい、置いてからまったく見向きもされてないぞ、ポテチ。さっきから露骨にスルーされてる感じがする」

「そ、そうね。私の見込みが甘かったのかしら。ごめんなさい」


ポテチを出してから、5分くらい経過した。

予想通りといえば予想通りなのか、ポテチが手をつけられることはなかった。


考えてみれば、当たり前なのかもしれない。

あんなハイレベルな食品相手に戦おうしたのが間違いだった。

爵や貴族たちはみな、舌が肥えている。

高級食材でないと全く相手にされないみたいだ。


「仕方ないのかな……」


少し震える声で言う。

全く手にとってもらえないのはやはり心に来るものがある。

悔しい。

泣きそうだ。

俺の料理は通用しなかったんだな。


と思ったそのとき。

国王様がポテチの存在に気づく。


「ん? なんだこの薄っぺらいのは?」


興味を持った王様はポテチを見て口に出す。

そして、ポテチに手を触れようとする。


「国王様、お待ちください」


話相手の金髪の貴族がそれを止める。


「うむ、これはジャガイモ? のようだ。誰だ、こんな安物を提供した愚か者は!」


そばにいたもう一人のロン毛の生け簀かない貴族がジャガイモに気づき、怒りの声で壁にいる料理人たちを睨んだ。


その怒号に驚く料理人たちは各々、自分ではないと必死にアピールし、ざわめく。


「まあまあ、落ち着きなさい」

「しかし、国王様」


「そなたの気持ちもわからんでもない。だが、この場に出された料理ということはそれなりの保証がされているはず。それに面白そうな菓子ではないか。どれ、ここは僕が食してみよう」


若いにも関わらず冷静な判断をする国王様は、先導を切ってポテチを食べようとする。


貴族たちは非常に焦った表情でそれを見る。

王様が安物に手を出すことが、信じられないようだ。


だが、彼らの目をくれずに王様は一切れのポテチを口に運んだ。


"パクッ"


「んっ、これは!?」


王様はモグモグと口を動かす。


――。


そして一瞬ときが止まる。

その2,3秒の沈黙の後に、再び王様は発す。


「旨いっ、旨いぞ!!」


「「「ええ~っ!?」」」


周りにいた貴族たちはビックリする。


さっきまでポテチにスルーを決め込んでいた貴族たちもこれには、驚きを隠せない。

こんな貧相な料理、どこが旨いというのだ? という顔をしていた彼らにとって、ある意味衝撃の瞬間となったことだろう。


「ほら、みなも食え。ワインのつまみにもってこいだ!」


鶴の一声の後、傍観していた貴族たちは一気にポテチに駆け寄った。

また、壁にいた料理人たちも、料理人としての本能に負けたのか、体が勝手に動き、気づけばポテチのもとへ駆け寄っていった。

見事ポテチ布教に成功したのである。



 その後、ポテチが満場一致で「旨い」と判断されたのは言うまでもない。

当然作った主である俺は呼び出され、仮面を剥がれた。

そして、王様はじめたくさんの方から、料理人としてオファーを受けることになった。


しかし、俺は刀士が本業であり、片手間でお金を稼げれば十分と考えていたので、その数あるオファーの中から一番条件のよさそうなところと、今後の契約を結んだ。


契約通りに進めば、魔法刀製作後アルバイトとしてポテチ販売をする予定である。



そうして、研究発表会の昼休みが幕を閉じた。



ポテチのくだりは3章の布石です。(予定です)

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