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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
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59. エルメス邸への道中、理事長の助言

 ラピス理事長に連れられて、俺はエルメス邸、カロナのもとへ向かっていた。


ラピス=ジョーカー。

その名前からもわかるように、彼女はカロナと同じく王族分家の生まれの人だ。

エルメス家と対になるジョーカーの生まれの方だ。

小耳にはさんだ話なのだが、彼女はカロナの母さんやアルメナ国王の妹だそうだ。

ゆえに王宮の中でもかなり権力の高い人である。

さっきのようにキエさんに一方的に指示できたのもたぶんそういったこともあるのだろう。


さて、そんなやんごとなき女性に目をかけられ二人きりでこの王宮内の廊下を歩いているというありがたい経験をしている最中のだが、俺は彼女を少しだけ警戒していた。


(危険な人物……ねえ)


別れ際にキエさんが残した危険な人物という言葉が気になっていた。


ラピス理事長。

別にそんな怪しい人物には見えないんだけどな。

ってか結構タイプかも。

ウェーブのかかった長い黒髪及びそれとは対照的な真っ白な肌がそのミステリアスな雰囲気を出していて素敵だ。


こんな人が危険な人物とは思いがたいが、まあチェックしておく必要があるかな。


「右目(小声)」


俺はスキル、右目(エモーショナルアイ)によって彼女のオーラを確認する。


ふむ。

水色か。

おしとやかで気品のあるということを示しているみたいだ。


なんだよ。

ぜんぜん怪しくないじゃん。

単なる取り越し苦労だったか。


「あなた、目がいいのね」

「え?」

「ごめんなさい、なんでもありませんよ」


俺の動向の不審さに感づいたのかラピスさんは俺の右目を見つつ、不意にそんな言葉を投げかけてきた。

わざわざ右目を見てくるあたり、それがまるで俺のスキルを見え透いていたかのように感じられたので、思わずギョッとした。


た、たまたまだよな。

てっきり右目を見破られただとばかり思ってしまった。

まさかな、このスキルは一応ユニークスキルだし。

他人に気づかれるはずはないよね。


だが、万が一のこともあるしこの話題に関して深堀りされたくないので、とっさに話を振ることにした。


「ところで理事長さんはどうしてここに?」


「ああ、学園で会議があってその報告を兄に……いえ、ジャック=アルメナ国王様に伝えようと思いまして。あ、そういえばご存知? わたくし、現国王の実妹ですの」


「ええまあ、最近知りました」


「そうでしたか。ま、それはともかく会議が結構長引いてしまいましてね。来週の研究発表会のこともありましたし」


「それは大変ですね。やはり研究発表会の規模というのはそれほどに大きなものなのですね」


「ええ。国中の研究機関からたくさんのギャラリーが当学園の子たちの研究成果を見に来ますからね。運営側としても必ず成功させたいものです。それにこれが新理事長就任後、はじめての大きな仕事ですから!」


ラピスさんは両脇をしめるポーズをする。

真摯に取り組もうとしている感じだ。

それを見てるとふと罪悪感が沸いてきた。


彼女は祖父に変わって新理事長に着任した新任の理事長さん。

俺たちがウェルトラ行っている間に、着任式があったので、彼女の人柄についてよく知らない。


だが、彼女は若くして責任ある地位に積極的についている。

それはかなりプレッシャーのあることだと思う。

しかし彼女はそれに臆することなく、一生懸命仕事に励んでいる。

とても素晴らしい人物なのだ。

それなのに彼女を危険な人物かもしれないと疑ってしまっていた。

そのことを申し訳なく思った俺は「ホント申し訳ありません」と心の中で謝った。




 そのあとも理事長と色々お話をしながら着々とカロナのいるエルメス邸へ近づいていった。


その話を通して気になったことがある。

それは彼女が俺が勇者党のリーダーとして活動していることや、ユニーク武器である刀を使うこと、それに新歓戦で放った魔法のことまでを知っているということだ。


新任にも関わらず、それほどに自分のことに詳しいのは信じがたいこと。

その点に関して俺は少し不思議に思った。

そこで彼女に聞いてみた。


「そういえばラピス理事長は着任してまもないのに、俺たちのこと詳しいですね。どうしてですか?」

「学園の生徒のことはちゃんと把握していますからでしょうか」


「そうなんですか?」

「ええ。例えば、学園の生徒の顔と名前は一致させましたよ。覚えるの大変でした」


「おお、それはすばらしい」


理事長さんの頑張りに俺は敬服を示す。

学園の生徒数は40人×8クラス×3学年=960人だ。

それほどの数の生徒をものの1週間くらいで覚えるなど到底ありえないこと。

それを実行するなんてなかなかできるもんじゃない。

すげえわ。

この人かなり頭が良いな。


「ですが、ソウド君。わたくしはあなたに最も興味がありましてよ」

「え?」


「実はわたくしが理事長の就任を決意したのもあなたを見たのが決めてでしたから」


「お、俺?」


「見る人が見ればわかります。あなたは学園の中でも抜きんでて優秀です。いずれ……いえ近いうちに偉大な冒険者になることでしょう。その姿を理事長として見届けたい……とでも言っておきましょうか。といっても私的な感情なので気にしにでくださいね」


いやいや、気にすんなって言われても気にしちゃうよ。

俺を見て理事長になるって相当だぞ。

俺のことをずいぶん高く評価していただけることは光栄だが、ちょっとずれてるな。


「とにかくソウド君がよりよく学園生活を送ることができますよう応援しています。発表会も頑張ってくださいね」


ああ、発表会か。

もうできねえかもしれないのだけどな。


「ごめんなさい。それはできないかもしれません」

「え?」


「実はさっきメンバーと喧嘩してしまいまして。彼女たちがいないと発表できないんですよ」

「ケンカですか? その相手って勇者党よねえ。だとしたらもしかして……」


この人は頭がいい。

メンバーと聞いておそらく察したようだ。


「そうです、カロナです」


あとコノハも。


「ははーん、なるほどねえ。だから王宮までやってきたわけか~」

「話が早くて助かります。実はそうなんです」


「フフ、喧嘩だなんて青春だねえ」

「や、やめてくださいよ~」


「ふーん、カロナちゃんか。へえ、君は私の姪と仲直りしたいんだね」

「そうなりますね」


「だったらいいアドバイスがございましてよ」

「ホントですか?」


「これでも昔はあの子の遊び相手をしていたものですから。あの子が喜ぶことはよーく知っているわ。大船に乗った気分でいなさい。学園理事長……いえ、王族としてわたくしが手を貸してさしあげましょう」

「おお、それは心強い。ありがとうございます」


オホホ。

これは棚ボタだぜ。


キエさんのことといい、カロナのことといい、この人がいなければどうなっていたことやら。

彼女に会えて非常に良かった。


「では教えて下さい」

「ええ。カロナはね……」


俺はラピスさんに仲直りのアドバイスを頂いた。

そして。


「―――というわけでこれをすると必ず仲直りできることでしょう。頑張ってくださいね」

「ちょっ、マジですか、それ?」

「嘘は言いませんよ。あ、エルメス邸につきましたよ。それじゃ、頑張ってくださいね」

「は、はあ……」


ラピスさんからアドバイスをもらった俺は耳を疑った。

なぜなら、そのアドバイスがふざけたものだったからだ。


頭を撫でろだとぉ?

冗談じゃねえ。

そんなの無理だよ。

きっとラピスさんあれだ、カロナが幼いときの話をしているんだ。

こんなのアドバイスでもなんでもねえ。

さっきまで彼女に期待していた俺がバカでした。


ニヤニヤするラピス理事長に見送られるなか、俺はゆっくりとした歩みでエルメス邸の扉をくぐった。



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