表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
52/74

52.ハルゴ=シルディの憂鬱

 ときは夕暮れ。

大体午後5時を回ったところかな。

夕日が校舎の白壁を橙に染めている。

先生から1時間ばかしの生徒指導(ほぼ雑談)から解放された俺は、あいつに会うためにただちに勇者党へ向かった。


"ガチャ"


 党室のドアをくぐったその先には、いつもとまったく変わらない俺たち勇者党の部屋の光景が俺を出迎える。

部屋の四隅にはコノハを除く4人のメンバーの机。

さらに部屋の真ん中にはソファとホワイトボードである。


「おっ、すげえきれいだな。掃除してくれていたんだな、サンキュー」


普通なら1週間というやや長期的な留守のせいで、机などにはほこりが被さっているはずだ。

しかし、そのような痕跡はない。

まるで新居のごとくその部屋は手入れされていた。


どうやら俺が来るのを待って、彼が掃除してくれていたらしい。

その彼がソファから立ち上がり、照れくさそうな笑みを少しだけこぼしながら頷いた。


「メンバーとしての義務……全うした」


無駄に巨躯なる体つきだが、その口調は一変として穏やかである。

その男の名はハルゴ=シルディ。

久々の再会である。


「どうやら待たせてしまっていたようだな……久しぶり、ハルゴ!」

「ああ」


俺たちは久々の再会を喜び、互いにガシッと腕を合わせた。



 そんなこんなで早速だが近況報告をすることに。


俺たちが西のウェルトラへ出向いていた一方でクロに連れられたハルゴは北のノースランへと、大量に発生したモンスターを狩るために出かけていた。

そして、こっちではエリシアさんという魔王軍の幹部に遭遇した。

ノースランでも同じようなことが起きていたのかどうかということは、俺の中では気になっていたことの一つである。


当然他にも話したいことがあるが、それらもかねて情報交換しておこうと思い、彼をここへ呼び出していた。


ハルゴの隣に座った俺はコーヒーを入れたグラスを片手に持ち、彼に問いかける。


「それで、どうだった、そっちの方は?」

「メナたちと一緒」

「というと?」

「今朝エルメスさんたちに話を聞いた。こっちもモンスター全員……魔族だった。それと幹部も確認。ただ、勇者の調査が目的いうのは……初耳」


ほう。そうだったのか。

そっちでも似たようなことが。

それに、こいつは朝の間にカロナたちと色々と情報交換していたわけなんだな。

だったら話は早い。


「おおう、知ってたのか」

「メナ……遅刻してたから」

「あ、ああ。理由があってな。だったらこの話はもういいよな。当面は勇者のことは考えなくてもいいだろうし。どうせ俺たちと関わることになるわけねえしな」

「まったくそのとおり」


勇者とは魔王軍の脅威からこの世界を救うためにやってくる正義の味方と聞く。

ならば、昨今から続くアルメナ王国軍(国軍)と魔王軍との抗戦に終止符が打たれるだろう。

勇者とはそのくらいに俺たちにとっては希望なる人材だ。


今現在、勇者がどこで何をしているのかはまったくわからないが、そいつはいずれ間違いなく魔王軍に立ち向かうはずである。

だが、ここまでくると国レベルの大きなスケールの話となるので、一介の学生に過ぎない俺たちには甚だ無縁な情報なのだ。


というわけで勇者に関してはこれでスルーしよう。


「ノースランでも同じようなことが起こっていたわけだな。オッケー、大体理解した。じゃあそのことは置いといて、再会を楽しもうじゃないか、ハルゴ!」

「おお!」


“カラン”


俺とハルゴは持っていたグラスを杯に見立て、乾杯した。



 その後はたくさんの話題についてとことん語り合った。

そのほとんどはお互いのクエストでの出来事だ。


シホを筆頭にプランYを企てたことや、

報酬としてウェルライトをもらったこと、

エリシアさんがウェルメナ平原の温泉の経営をはじめたことなど、

先週の旅で起こったことをできるだけ伝えた。

あとコノハが新しくウチに加入することになったよと言ったら、ビックリしてた。


一方でノースランでの出来事もハルゴから傾聴した。

それによると、俺たちと同じようにハルゴも立派に活躍していたということだ。

自慢の耐久力と筋力を駆使して多くの魔族を相手にしたようだ。ハルゴはハルゴで順調に成長しているようで何より嬉しいものだ。


「それにしてもたくましくなったんじゃないか、ハルゴ? この俺の目はごまかせないぜ~」

「そうなのかな……でも……」


右目エモーショナル・アイを扱うことのできる俺は、彼のオーラを判別することができる。

それによると、彼から強い黄色のオーラが出ていることがわかる。

この色は誇り高きたくましさを示している。

ハルゴ本人はあまり自覚ないようだが、彼はとんでもなく成長しているのである。


「確かそっちにも魔王軍の幹部が現れたのだろ? もしかしてお前がやったのか?」

「いや、僕だけじゃない。というか逃げられた」

「へえ」


「ジョーカー先輩とクロ君たちと協力して頑張って追い払ったんだ。決して僕一人の功績なんかではない」

「お、おお」


珍しく饒舌(じょうぜつ)にしゃべる彼に俺はただ相槌を打ち続けた。


一人の功績ではない……か。

謙遜もいいところだろう。


一人はシホと同じくフォーカードの一角であるクローバ一族であり、1年生最強の生徒と謂われているノマン=クローバことクロ。

一人はアルメナの分家であるA&エルメス・アンド・ジョーカーのJを担うジョーカー家であり、アルメナ学園最強の冒険者とされているジョーカー先輩。


この二人と肩を並べて魔族と張り合えている時点で非常に強力な冒険者だと思うのだがな。


わが友ハルゴは何分そのことを理解していらっしゃらない。

やれやれである。

俺はそのことに若干の呆れを抱きながら、ため息する。


すると、ハルゴが食いついてきた。


「やっぱりメナには敵わない!」

「ほお」


ハルゴはなにやら悔しげに声を荒げる。

普段ポーカーフェイスである彼にしては珍しい。


「メナたちはきちんと幹部と話し合って、お互いが最も利益を得られるように八百長に持っていった。勝ち負けだけが戦いということではない……そういうこと……なのかな。ただ倒す倒されるという視点ではなく、別の角度から戦いに勝った。そんな話を聞くと僕も……まだまだ」


なんだろう。

俺すげえ過大評価されちゃっているんですけどっ。

俺そこまで意識してたわけじゃないんだけどなあ。

ま、ハルゴにはハルゴなりの物事の捉え方があって、それにしたがって俺を見ているんだな。


「いやいや俺別にそんなたいしたこと……」


うへえ、こんなにグイグイしてるハルゴ見るの初めてだ。

なんか俺に対して色々溜めこんでたものを吐き出してきた感じだ。



「だからこそ!!!!」


ハルゴは強い叫び声とともに、立ちあがる。


「えっ!?」


その威圧的な面持ちが俺のド肝を抜く。


「僕は……君たちと…………わかれ……」


さっきの強い口調とは一変して震え声で彼は少しずつ言葉を縫い始める。


その言葉を聴いて俺はなんなく察する。


そうか……こいつもしかして。


“ガシッ”


俺は彼の腕を強く掴み、彼を沈静させる。


「落ち着くんだ、ハルゴ」

「あ、ごめん、メナ」


彼が取り乱すのもわからなくはない。

俺にも心当たりがあるからだ。


「もしかしてお前、俺たちと一緒に旅できなくて寂しかったんじゃないか?」


それもそうだろう。

彼も勇者党のメンバーの一人。

先の旅でただ一人置いていかれたらそうなろよね。

俺たちと別れてクエストにでていたんだからな。

そりゃ寂しくてつい感情的になっちゃうよね。


「いや、そういうわけじゃ」


おや? 

今の答えを否定された気がする。

ま、気のせいだろう。


とはいえここは気を紛らわせたい。

そうだな、ここに来る前にデービル先生からこの計算データをいただいたわけだしなあ。

ハルゴにも付き添ってもらおう。


「そうだ、気分転換もかねて今から付き合ってくれないか?」

「え?」


「デービル先生に頼んでた計算が完成したんだよ。これでようやく魔法制御の新魔法を使うことができる。ついにこの俺にも自由に魔法を放てるときがくることになったんだ!」

「はあ、それはよかった」


「だから早速試し撃ちに行きたくてうずうずしてたんだよ」

「わかった……見届ける」


「よっし、じゃあグラウンドに行こうぜ」

「う、うん…………。またいつか言う……」


というわけで魔法制御がの正しく効果を発揮するのかを確認するという実験をするべく、俺たちはグラウンドへ向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ