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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2.5章 魔法刀製作:研究発表編
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51.久々の学園、俺の計画について事情聴取された

 かれこれ1週間近くのウェルトラへの旅が終了し、王都アルメナへと帰還した。

冒険者として外に出向いていたが、再びいつもの学校生活に戻る。

つまり、久々の学校だ。


「ふう、久々に学園に戻ってきたぜ。別にずる休みしてたわけじゃないんだけどな。ハハハ」


アルメナ学園は冒険者育成のための学園。

したがって、クエストに赴くということは立派な課外活動として認識されているので、これまでの約1週間の欠席はすべて公欠扱いとなる。

これがわが学園のルールだ。

なので学園からサボリなどという認識を受けることはない。


「まあ俺たち以外にもあのクエストに出向いている連中はたくさんいたようだけどな」


セイラさんから聞いた話なのだが、例の二つのクエストは、たいへん規模の大きいクエストであり、俺たちの学園からも多くの生徒、先生が現地に赴いていたらしい。

そのため先週は欠席者が多く、学園側もさぞドタバタしていたことだろう。

だが、それも終焉となり、再び平穏な学園生活へと戻りつつある。

そんな今日この頃なのである。


「では、教室に行こうか。うん、怒られないよね」


“ガララ”


久々の登校に胸を躍らせた俺は1年H組の教室の扉を開けた。

実に約一週ぶりかな。


「やあ、ソウド君。クエストご苦労さん、君が来るのを楽しみに待っていたよ」

「恐縮です」


開幕一番俺を出迎えてくれたのは担任のスウィンガ先生だ。

相変わらずイケメンな色黒若男である。

彼はさわやかな顔で笑っている。

フフン、そんなに天才冒険者メナ=ソウドのことを心待ちにしてくれていたのかな。

ちょっと照れくさいじゃないか~。


「照れなくていいぞ~。誇らしいことじゃないんだからな。もう昼だ。大遅刻なんだよ! 放課後4時に生徒指導室に来なさい」

「はい、ごめんなさい」



実は俺、訳あって大遅刻をかましていたのである。



教室内ではクラスメイトが俺を鼻で笑う仕草が見受けられる。

カロナやコノハ、ましてやハルゴまでがこっちをみて笑っている。


復学早々大っ恥をかいたところで学園生活がリスタートします。





「ここが生徒指導室か。入るのはじめてだな。とりあえず一番前の席に座っておくか」


スウィンガ先生に言われたとおりに俺は生徒指導室へ入室した。

いくつかの机とイスしか置かれていない極々シンプルな教室だ。

職員室や生徒支援課、サポートセンターなどの生徒関連の課が集まった東館にその部屋は位置していた。


生徒指導を受けるなんてはじめてのことだから、この館を訪れるのはめったにないので、実はちょっと迷子になったんだけどな。

ま、指定された時間には間に合ってのでよしとしよう。


“ガララ”


「ソウド君、来ているかい?」


そうこうしていると、柔い表情を浮かべたスウィンガ先生が入ってきた。


これから先生は貴重な時間を割いてまで、わざわざ俺に生徒指導をしなければならない。

それが彼にとって面倒なことのはずである。

だから先生は嫌な顔を見せると思っていた。

それなのになぜか嬉しそうにしている先生。

いったい何を考えているのか疑問に残るが、詮索はしないでおこう。


「あくまでも生徒指導という名目だが、ちゃっちゃとすませようか」


先生は1枚のプリントとボールペンを片手に話を始める。


「その紙は?」

「ああ、学園のルールでな。遅刻の理由や再発性、君の反省態度、その他もろもろなどの必要事項をここに記入しなきゃいけないんだよ。結構面倒だぜ」


「あ、それはお手を煩わせることになって申し訳ありません」

「いやいや、かまわねえさ。おかげで職員会議サボれたしな。それに書くことだって適当に書けばそれでいいからね。ただ、遅刻の理由だけは聞いておきたいかな。どうして遅れたんだい?」


先生は遅刻の理由をたずねてきた。


ああ、どうしようか。

本当のことを言うべきなのであろうか?


例のクエストの特別報酬である最高級の宝石、ウェルライトに魅せられた俺は今すぐにでも刀を製作したいという欲求にかられた。

そうして昨夜、俺は最上のデザインを目指すべく試作品の作成に没頭してしまった。


実はそのせいで寝坊しちゃったのだ。

帰還早々なにやってんだという話である。


でも、そんな不名誉なことは言いたくない。

そうだな、ここはとりあえず寝坊しましたとでも答えておくか。

嘘ではないし。


「寝坊してました」


平然とアンサーする俺を先生はジロジロと見る。


「うむ、嘘ではなさそうだな。ってか遅刻の原因ってだいたいそれだもんな。で、なんで寝坊したんだ? 女を連れ込んでたのか? それともストレスによる不眠症か?」


うぐ。

やはりツッコまれたか。

そりゃあ今後の対策を考えるには、その寝坊の根本の原因を解決する必要があるからなあ。

仕方ない、観念するか。


「刀を作ってたからです」

「な!?」


先生はペンを落とすくらいにポカンとする。

そうだよね、予想外の答えだよね。


「すみません、クエストで得た素材を見てたらいてもたってもいられなくなって」


「なるほどねえ。ちなみに、その素材は?」


「ウェルライトです」


俺はウェルライトの破片を先生に見せつける。


「マジかあああ!?」


ウェルライトは最強の鉱石。

先生を絶叫させるには十分だ。


「まだ学園には情報が行ってませんからね。俺たち勇者党はクエストで大きく活躍したことでウェルトラの長老さんからもらったんです。これはその一部です」

「やれやれ、君の成果にはまったくあきれさせられるものだな」

「光栄です」


その後、ほかにも簡単な質問に答えたり、簡単に指導を受け、いよいよ生徒指導から開放されることになった。



 ◆



「じゃあこれにて生徒指導は終了だ。ご苦労さん、ソウド君」

「いえいえこちらこそ」


「さて、では次に移るとするか」

「え?」


先生はパンパンと手をたたく。

どうやら外にいる誰かに合図を送ったようだ。

それを確認したのか、新たに教室のドアを開ける音が響く。


“ガララ”


「ほほっ、これはこれはメナ=ソウド君。久しぶりじゃのぉ」


そのシワ枯れた声に、俺は目を丸くする。


「なにっ、デービル先生!? えっ、これ生徒指導関係あんの?」 


それまでの目的はあくまでも、俺の遅刻に対する生徒指導。

だから生徒指導の先生であるスウィンガ先生しか来ないと思っていた。

しかし、生徒指導とはまったく縁のなさそうな物理学担当のデービル先生がやってきたのだ。


「さっきも言っただろう、生徒指導はさっきので終わりだ。君を呼び出したのはここからが本題だ。勇者党の活動としての方針を先生に教えてほしい」

「え、どういうことですか?」


「ソウド君、君がクエストに出ている間に、デービル先生から君のことについてを聞いてしまってね」

「なんだって!?」


俺は魔法刀製作の計画の一端として、魔法の制御の程度に対する計算をウェルトラへ出る前にデービル先生にお願いしていた。

周囲には秘密裏にしてこの計画を進めていたのだが、どうやらそのことをスインガ先生に漏らしてしまったらしい。


「すまんの。君の顧問である彼には話を通さないといけないと思っての。だが、心配するな! それ以上は情報が漏洩されてはいないから」

「あら、そうでしたか」


やめてください、天才学者であるあなたがこんな俺にわざわざ頭を下げるなんて。

それに口外した相手がスウィンガ先生ならとくに問題ない。

顧問の先生だし。


「魔力制御の計算だったけか? なぜわざわざ魔法を弱くするようなことを考えようと思ったのだ? 先生にはさっぱりわからん。いったい君は何を目指しているんだ? ウェルトラに行ったのも関与しているのかい? もし、本当にそれが勇者党と何か関係があるのなら、顧問として見過ごすわけにはいかない。だからここで君に話を伺いたいと思ってね。デービルさんも君に興味を抱いている見たいだし」


スウィンガ先生は俺を調査する根拠を論理的に交えながら、まっとうな質問をしかけてくる。

俺にすべてを吐かせるつもりらしい。


まあ、先生が俺を問い詰めたくなるのにも、思い当たる節はあるのだがね。


これまで勇者党での活動は顧問抜きで、俺たち党員だけでのみ活動してきた。

ハルゴやカロナ、シホの修行をしたのもそうだし、ウェルトラにクエストに行ったのもそうだ。

これらの活動はすべて俺たちで判断したことであり、スウィンガ先生の同意はまったく得なかった。

いい意味で言うなら、自主的。

だがそれが過ぎているらしく、そこに先生は不安を感じたので、リーダーである俺に話を聞こうとしてきた。


そう考えるならうなずける。


うむ、これ以上内密に計画を進めていくには限界がありそうだな。

やれやれ、洗いざらい話すとしようか。




 観念した俺は今までの行動と目的をすべて語った。


魔法刀を製作するという目的も話した。

そのために必要なプロセスとして魔力制御のための魔法の製作についても話した。

ウェルトラにて、大量の魔力を注ぎ込んでも壊れないくらいに強度のある素材、ウェルライトをいただいたことも話した。

また、刀の製作費用を得るために、近日行われる研究発表会に参加するつもりでいるということまでも余すことなく話してやった。


これほどに壮大な計画を立てている俺の恐ろしさに、それらの話を聞き終えた二人は唖然とする。


「魔法刀の製作……か。まさかそこまでのことを考えていたとは驚きだよ。君が研究党を立ち上げた理由がこれなんだね」

「ええ。一部は国王様のアドバイスなんですけどね。当然僕以外のメンバーもそれぞれ目的を持って頑張ってますよ」


「そうなんだね。ずいぶんと大掛かりな計画だね」

「ですね。だけど、残るは魔力制御と製作費用。この二つが解決されればいよいよ魔法刀の完成です!」


俺は元気よく答える。


「あ、そうじゃそうじゃ。そのことでお主に用があったのじゃ。依頼どおり魔力閉じ込めのパラメータを計算できたぞ」


思い出したかのようにデービル先生は話をさえぎる。

だが、その話の内容が俺としてはかなり関心の高いものだった。


「え、ホントですか?」

「おお。このファイルに計算データが入っているから、帰ったら目を確認しておいておくれ。結構疲れたわい」


「おお、ありがとうございます。感謝します」


俺は深々と先生に礼をする。


「さて、聞きたいことは聞いたしこれで終わりにしよう。時間取らせて悪かったね、ソウド君。あとは研究発表会だね、頑張るんだよ」

「ワシの計算したそれもしっかりと役立てるんじゃぞ」


「はい、ありがとうございました」


俺は部屋を出て、早速勇者党の党室へと向かった。


へへ、まさかデービル先生が計算データを渡しに来るとは思いもしなかったな。

もっと時間かかると思っていた。

おそらく頑張ってくれたのだろう。

ありがとう、デービル先生。

俺、頑張ります。





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