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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2章 魔法刀製作:西の町ウェルトラ編
44/74

44.魔族殲滅

 魔族。

それは魔王からのお加護を受け、強力な能力を手にした邪知暴虐なモンスターをさす。

彼らはその邪悪な力とともに北の魔界からやってきて、俺たち民衆を襲い恐怖たらしめる。

そんなおっかない生き物なのである。

幼いころ図書館で読んだ本にはそう書いてあった。


とまあそのくらいに恐れられている連中ではあるのだが、本来なら魔族たちは俺たちの国に攻め入ることはない。

なぜなら、国の北境で国軍がそれらを食い止めてくれているからである。

だから御伽噺(おとぎばなし)くらいでしか魔族の存在を認知することはなかった。


それなのにおかしいことがおこっている。

魔族が国の内部で出現するなど常識的に考えられないはず。

それなのに、彼らは現在、なぜかここウェルトラ火山のふもとにて大量に出現しているのだ。


「間違いなく魔族だな、ありゃ」


火山の暑さで脇汗をかいた俺は呆れたように呟く。

久しぶりに右目(エモーショナル・アイ)を用いて前方にいる魔物たちのオーラを確認すると、その色は真っ黒だった。

マジで魔族だと見て間違いなさそうだ。


「あ、あ、ああれが……魔族でご、ござるか」


隣ではコノハが怖気づいたように口を震わせながら言う。

彼女がびびるのは仕方ないだろう。

なんせ彼女はH組だし、うちのパーティでは一番ランクが低いからな。


カロナとシホの二人は尖ったところはあるが、なんだかんだで能力自体は高い。

シホはA組だ。

カロナだってH組だが本当の実力はAにも匹敵するほど。

それに比べるとコノハは数段劣る。


また、コノハは棒使いという近接攻撃職であるのだが、その近接職に必要とされる筋力と耐久の能力値が低いらしい。

そのことは彼女の小柄な体からうかがい知れるが。

まあ俺と似たようなタイプだ。


そのように実力のない彼女は、今目の前で魔族たちがセイラさんやスペードルをはじめとした冒険者たちを追い詰めている様子を見て腰を抜かしている。


俺はコノハに語りかける。


「コノハ、君は前線に出なくてもいい。いや、むしろ出るな。足手まといだから」

「う、うう、了解でござる。メナ師匠」


俺の命令にショックを受けた彼女は悲しそうに涙目で返事する。

俺はその表情をみて心苦しく思う。

でもこのまま下手にコノハを加勢させたとしても彼女のためにならない。

彼女が大怪我を負ってしまえば意味ないしな。

なのであえてきつい言葉をかけさせてもらった。

これは一種の思いやりだ。

許してくれ。


「といってもコノハにもできることはある。君には怪我した冒険者たちの救護を頼みたい。やってくれるか?」

「しょ、承知でござる」


少しだけ持ち直した彼女は敬礼でそれに答えてくれた。

それを確認した俺は今度はカロナとシホの方を向いた。


「カロナ、シホ、聞いてくれ。相手はあの魔族だ、多分メチャメチャ強い。だからまずは俺が先導を切ってくるよ。そのあとに君たちは俺に続いてくれ。ヤバイと思ったらすぐに撤退してくれよ。オーケー?」

「「うん」」


二人はコクリと頷く。


「よし、ではメナ=ソウド。魔族相手に行って参る」


俺は振り返り鞘から鉄刀を引き抜くと、前方でセイラさんたちを囲んでいる魔族たちに向かって全速力で迫った。





これほどに不安な気持ちを抱いたのはいつ以来だろうか。

前方の魔族軍団を見てそう思う。

彼らの強そうなオーラに俺は萎縮しているのだ。

それが自覚できる。


そんな未知なる強さを秘めたやつらを相手に、刀士として俺は斬撃をかましにいくのだ。

それがいったいどこまで通用するのかはわからない。

セイラさんやスペードル先輩たちの連携だった攻撃を以てしても、彼らを殲滅するに至らないという光景をさきほど目にしたばかりなので、いささか不安である。


「せめて一矢(いっし)報いたいな。そしてできるならば魔族たちのターゲットをこっちに向かせよう。んで、セイラさんたちが魔族から逃げられるよう隙を作ってやるんだ。俺は敏捷が高く避けるのも得意。囮役にはもってこいだ。……ふむ、ここは火山だよな。だったらやつらを火口に落とすということもアリだな。よし、作戦決定。これで行こう」


俺はAランクの知力を持っている。

作戦を思いつくのも得意な方だ。

魔族たちに向かって走っているこの最中にブツブツ独り言をかましながら、一つの作戦を思いついてしまった。

火山に誘導作戦、これよりそれを試みる。



 さて、まずはターゲットを取るために俺は魔族に攻撃する。

セイラさんたちを襲っている魔物の一匹に向かってスキルを放つ。

避けるのが苦手そうな熊の魔族相手に斬撃する。


「セイラさん、今助けに行きます! くらええ魔族、清刃鋭斬!」


“グギャアアア”


熊が叫ぶ。

俺は驚く。


「あれ?」


ま、魔族弱くね?


久々に放った鉄刀からの清刃鋭斬。

その刀は熊の毛、皮膚、骨、内臓を次々と裂いてゆき、気がつけばその体を真っ二つにしてしまった。

そして熊はあっというまに動かなくなった。


「「「え………」」」


事態が飲み込めない皆は口をそろえて「え」と言う。


「う、うそでしょ……メナ君」

「ま、マジかよ、メナ=ソウドのやつ。ここまで強くなってやがるとは」


セイラさんとスペードルも思わず声に出す。


「「やべええぞ、あの冒険者」」


セイラさんたちを苦しめていた魔族を俺は刀一振りで葬り去ってしまった。

この結果に周囲も唖然とするしかない。

この結果に俺も唖然とするしかない。


「ははっ、なるほどな」


それもつかの間、俺は思わず笑ってしまった。


"どうやら俺は自分の攻撃の強さについてすっかりと忘れてしまっていたようだ。"


それはそれは強いに違いない魔族。

そう身構えていたんだけど、ありゃ俺の勘違いだったみたいだ。

俺はそれを上回るほど強いらしい。


昨日ウェルトラを襲っているのは魔族だと聞いてからビビりはじめていた。

が、大したことはなかった。

俺はそれよりももっと強くなっていたのだ!


思い返しもみればここ1ヶ月俺は勇者党のメンバーの修行に付きっ切りだった。

それが功を奏して俺をここまで成長させていやがったのか。


へっ、囮役だあ?

火山への誘導作戦だあ?


……ふふ、くだらねえ作戦だったな。

そんなことする必要などまったくの皆無。

なんだよ、こいつら結構よええじゃねえか。

これだったら無双できる。

俺はそう確信した。


そして俺はニヤける。


「いける、行けるぞー!! おい、カロナ、シホ。一緒に戦おう。こいつら大したことないぞ」


いつもよりテンションの高い声で申す俺の声に、二人は困惑するもすぐに承知した。


「……わかったわ、メナ君。私も参戦する」

「オッケー、メナっち」


後ろに続いていたお二方も魔族たちに攻撃を仕掛け始める。


まずはシホだ。

シホは魔素を拳から練りだし、目の前の大蛇の魔物に強スキルを放とうとする。


「『水よ、躍り狂いなさい』ウォーターストリームッ!!」


シホは得意の魔法で攻撃する。

地面に現れた魔方陣から、洪水のように水が流れ出でる。

そしてそれが螺旋のような軌道を描いて水の竜巻へと変貌する。

これがBランク相当の上級魔法、ウォーターストリームだ。


“ナルヤ……”

"ルワマガメ……"


この魔法を受けた魔族たちはたちまち竜巻の渦に飲まれる。

それはまるで洗濯機に入れられた服のような姿である。


だが、まだ彼女の攻撃は終わらない。


「まだまだ、『一束の雷となれ』サンダーレーザー!」


続けて手のひらから太ましい黄色のレーザーを放つ。

そのレーザーは竜巻の方へと一直線に突き進み、まもなく到達する。


“ッハグ……”


水の中にある敵に対して立て続けに雷の魔法を被せるわけだ。

これが効かないはずがないだろう。

水は電気をよく通すという実験事実を利用したコンボ技である。

ちなみにこれは俺が考案したものである。


この攻撃が魔族たちに大ダメージを与えるのは当然のことだった。


「とどめよ、『巨大なる岩石』ヒューズ・ロック!」


最後の攻撃である。

巨大な岩で弱った敵を押しつぶしてフィニッシュだ。


「おお! 魔族倒せた! よし、次行こ、次!」


こうしてシホの攻撃によって魔族が死す。

魔族に勝利したことを喜んだ彼女は新たな魔族をターゲットしては彼女はスキルを放ちに放ちまくる。

その快活ぶりを見て俺はボソッとつぶやく。


「あいつすごいな」


シホは便宜上は回復士なのだが、攻撃も得意だ。

いわゆるバーサクヒーラーというやつだ。


フォーカードという恵まれた血筋から、圧倒的な戦闘センスを持っており、回復士にも関わらず、回復魔法だけでなく多種多様な攻撃系の魔法を自在に操ることができるという超人だ。

使える魔法の多彩さなら俺をも優に上回っている。


といっても以前の彼女はその消費MPが激しすぎる強魔法を連打しまくるせいで、よくMP枯渇するというバカぶりを見せてくれたことがある。


そんな彼女も長きに渡る俺との特訓を経て、MPがバカみたいに向上し、たくさんの強スキルを撃ちまくることができるようになったのである。

その修行の成果があってか、今のようにシホは次々と魔族たちを殲滅していった。


「ウッヒャーー、楽しいー。アタシ、活躍しているよ。ハイパーチャージショット! 覇道の拳!」


調子づいたシホは爽快的に魔族たちを潰してゆく。

それを見た俺は彼女に声をかける。


「やるじゃないか、シホ」

「当然よ、メナっち。いつかアタシはメナっちに勝つ。そしてメナっちをアタシのものにするんだからっ」

「……ってちょっとまて。それ初耳なんだけど」

「いいでしょー、約束だよ♪」

「はあ」


なんか戦闘中にとんでもない契約を交わされた気がする。

まあいいや。

俺が負けるなどあり得ないし。

このくらいなら約束してやってもいっか。



 さて、シホの様子の確認を終えた俺は、次にカロナのところに向かった。

赤いローブを羽織ったカロナは後方で着々と呪文を唱えていた。


「おーい、カロナ。呪文は順調かー? あ、途切れたらまずいから頷くだけで良いぞー」


“コクッ”


カロナは呪文を口ずさみながら返答す。

なるほど、そろそろ撃てそうなんだな、邪竜の炎眼フレイムアイ・オブ・ザ・ディスドラゴン


昔はあれを発動するのには7分くらいかかっていたのだけど、これも修行によってその長さをかなり短く纏め上げることに成功した。


もともとの邪竜の炎眼は7分という最高クラスに長く高火力な魔法。

その威力はシホのそれとは比べ物にならないくらいに絶大。

しかし、従来まではその呪文が長すぎるゆえ使い物にならなかった。

なのだが、それを例の因数分解定理によって、魔法の強さを変えないまま呪文だけを非常にコンパクトにさせることに成功したのだ。

つまり、その使い物にならない魔法は、使い物になりすぎる強大な魔法へと進化したのだ。


さあここでそれをお披露目してやるのだ、カロナ。


「……いま、灼熱の眼となりて解き放て、邪竜の炎眼フレイム・アイ・オブ・ザ・ディスドラゴン!!」


時間にしてものの2,30秒。

数十倍に短縮された呪文によって彼女は邪竜の炎眼を発動させた。


彼女の杖から巨大な魔方陣が現れる。

それはまるで竜の目のような紋章だ。

そこから強烈な炎が魔族向かって激しい轟音とともに一直線に炸放たれる。


”ゴゴゴゴゴォォォ”


「あ、あれはなんだ!」

「と、とりあえず、伏せろー」


魔族のそばにいた冒険者たちはカロナの方向を指差して言う。

危機を察した冒険者たちは身を地面に伏せた。


まもなくして炎が魔族たちを襲う。


“イツアー……”

“ギャーース”

“オノホ……テンナ”


魔族たちは苦しそうな悲鳴をあげながら次々と死滅してゆく。

とくに骸骨騎士の魔族は魔法耐性があまりないので、あっというまにカルシウムジュースのように溶けていった。

まあ邪竜の炎眼の前に魔法耐性とか別に関係ないのだけどな。

魔法耐性の高そうな怪鳥の魔物もあっけなく散っていったし。


「カ、カロナ。あなた邪竜の炎眼フレイム・アイ・オブ・ザ・ディスドラゴンをマスターしたのですわね」


カロナの成長に驚いているのはセイラさんだ。

姉妹だからこそカロナのことをよくわかっているので一番ビックリしている。


一方で魔法を撃ち終えたカロナは、腰を抜かしたかのようにしてその場でペタンと座り込んでしまった。


「はあ……はあ……。消費MPは半端ない……。やはり一発が限界みたい。自然回復するまで待つしかなさそうね」


カロナいうようにそのような弱点は存在する。

ここは改善の余地か。

だが、今の魔法によって残りの魔族は全滅したようだ。

下手したら俺のファイアボールよりも火力があるかもしれない。

それくらい素晴らしい魔法だった。



ということでカロナ、シホの活躍によって魔族たちを殲滅させることに成功した。


ウェルトラの危機をすんなりと救ったのである。




このあとギルドに報告し、俺たちは盛大に祝われることになった。



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