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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2章 魔法刀製作:西の町ウェルトラ編
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43.ウェルトラ到着、久々の再会

 ようやくウェルトラに到着した。


アルメナ王国西部に位置する鉱山都市、ウェルトラ。

西側のウェルメナ山脈及び、それとは反対の場所に位置するウェルトラ鉱山、さらに北側のウェルトラ火山によって挟まれている町だ。

そばに火山があるということで心なしか温い。

道路の地面がポカポカしている。


そして人が多い。

さすが鉱山都市と呼ばれるだけの事はある。

ウェルトラ鉱山では高性能な金属が採掘できるので、それ目当てでやってくる冒険者が多い。

現に俺にとっても、それが目的の一つである。


ドワーフをはじめ屈強な肉体を持った冒険者たちが、炭鉱の炭や鉄の匂いをつけながら町を歩いている。

近くに魔族が出現したにもかかわらないのに、その活気は健在である。


その様子をしっかりと確認した俺たちは借りた馬車を返却し、その町を歩いていた。


「町はずいぶんと余裕な感じだな。魔族の侵攻はまだそこまで至っていないとみてよさそうだ」


俺はふと口にする。

それに3人が答えた。


「そうみたいだね、メナ君」


「どうするのー、メナっち? アタシはウェルトラの名産スイーツ、ウェルトラパフェを食べたいのだけれども。それとも先にクエストに行くの?」


「やはりクエストが優先されるべきだと思うでござるよ。いつ魔族たちがここへ侵攻してくるのか分からないでござるからな。早急に対応すべきでござる」


「俺もそう思う。ここはコノハの言うようにクエストでいいんじゃないか?」


俺はコノハの提案にのる。


「私は賛成よ。町の観光はクエスト後にしましょう」

「オッケー。じゃあアタシも全力でクエストに挑むわ。よーし、たぎってきたー」


同じように残りの二人も賛同してくれた。


「決まりだな。というわけでまずはクエストを受注すべく冒険者ギルドに向かうとするか」


「「「おお」」」


俺たちは方針を決めると、ギルドへ向かった。




 冒険者ギルドではたくさんの冒険者で埋め尽くされていた。

やはり例のクエストが所以(ゆえん)なのだろう。

近辺で突如大量出現したという魔族を討伐すべく、たくさんの冒険者がギルドの中でひしめいている。

もちろん昨日の冒険者たちのように、町から逃げることを選択した冒険者も多くはいたはずだが、それでもなおここに残り続けているものもいる。


「くっ、それにしても人多すぎる。うっ、急に腹が……」


俺は人ごみが苦手だ。

今のように人が多すぎるところにくると、無償に腹が痛くなる。

この様子だとクエスト受注まで持たないと悟った俺は、3人に頼むことにした。


「すまない、3人とも。お腹痛くなってきた。俺トイレ行ってくる。カロナ、俺の代わりにクエストを受注しておいてくれないか?」


お腹を押さえている俺を見て、カロナは心配そうな顔で答える。


「うん、わかったよ。無理しないでね、メナ君」

「サンキュー、カロナ。恩に着る。俺外で待ってるからあとで合流しよう」


そう言うと俺はそそくさとギルド内のトイレに向かった。




 “ジャー”


用を済ませた俺はギルドを出た。

和式の便所は久しぶりだったので、使いにくかった。

それはおいといて、腹がスッキリした俺は3人が帰ってくるのを待つ。


「やれやれ、まさかあんなに冒険者の人ごみができているなんてな……って、あれはカロナ?」


ギルドの外ではカロナがすでに待っていた。

トイレに行っている間に受注を済ませたのか、はええな。

シホとコノハの姿はないが、もしかした俺の腹痛が移ってトイレに行ったのかもしれない。

二人は今頃トイレの中で気張(きば)ってるのだろう。

そう考えると若干申し訳ないかも。


「おーい、カロナ~」


「…………」


あれ、返事がない。

俺に気づいていないのか。

もう一回声をかけてみるか。


「おーい、カロナー」


「…………」


む、無視か。

おい、どうしたんだよ、カロナ。

なんで無視するんだよ。

もしかして耳が悪くなったのか。


心配になった俺はそばまで駆け寄り、彼女の手をガシッとつかんだ。


「おい、カロナ。大丈夫か?」

「え? あ、メナ君だ。お久しぶり~」

「あっ!」


至近距離で彼女の顔を確認し、俺は驚いた。


「セ、セイラさん?」


人違いということはよくあることだ。

ましてそれが姉妹の間ならなおさらだ。

カロナだと思っていたその人物はセイラ=エルメス、アルメナ学園の生徒会長にしてカロナの姉さんだった。

カロナと後ろ姿そっくりだし、そりゃあ人違いするよね。


「すみません、カロナと間違えちゃいました……って、ええええ!? なんでセイラさんがここにー?」


カロナをセイラさんだと見間違えたことは認めよう。

でもなぜ彼女がこのウェルトラまで来ているんだ? 

そのことに驚いた俺は絶叫した。


「なんでって、それはもちろんクエストよ」

「クエストですか」


呆然とする俺を前にセイラさんは察したように笑い出す。


「ふふ、そうか。君も王様からのクエストを承っていたんだよね。そういえばカロナがそんなこと言っていたわ」


「え、それってもしかしてセイラさんも?」


俺も次第に事がわかってきた。

この人も例のクエストを受けに来たというわけだ。


「そうよ、このクエストなかなかに難易度が高いからね。アルメナ学園、特にA組の生徒たちはこのクエストを受けにきているのよ」

「し、知らなかった」


俺はただ驚いた。

学園の生徒も招集されていたということか。

他クラスの生徒の顔なんて覚えてないから気づかなかった。


「あ、会長様ー」


俺がセイラさんの発言に驚いていると後ろから聞き覚えのある声がした。

その声とともにとある男子がやってきた。

小柄で筋肉質でボサついた髪が特徴の野生児っぽい見た目のミスリルドラゴンの亜人の生徒。

俺はその男を忘れることはなかった。

以前新歓戦で相間見えたことのあるフォーカードの生徒、リュウ=スペードルだ。


「あ、スペードル先輩」

「なっ、貴様メナ=ソウドか。なんでここに!」


俺に気づいた先輩は途端に顔をしかめる。

なんだか敵対心を持たれている感じだ。


「うふふ、リュウ君ったら新歓戦でメナ君に負けたからね。あの試合が終わってから、病院のベッドの上でずっと悔しそうにしていたし。そりゃあ、その負かされた張本人に再会するとなると、動揺しちゃうよね」

「か、からかうのはやめてくださいよ、会長様~」


セイラさんはスペードルの心をすべて読み取ったかのようにして、冗談交じりに彼をからかった。

それを恥ずかしそうに返すスペードル。

仲がよろしいようで。


にしてもスペードル先輩に会うのは久しいな。

先輩には俺のファイアボールを直々に食らわせて、大やけどさせてしまったからなあ。

若干気まずい、というか罪悪感が残っている。

そのことについてまだ謝ってないんだよなあ。

謝るとするならば今か。


「あの、スペードル先輩」

「どうした、メナ=ソウド?」


「先日は先輩に大怪我を負わせてしまい申し訳ありませんでした」


俺は頭を下げて謝る。


「あん? いまさら謝罪か。ったく生意気な後輩だぜ。そのおかげでこっちは1ヶ月間入院だったんだからなっ。今も竜化できないし、本調子にもどらないんだぞ」


先輩は背中の火傷痕をみせながら嫌味半分で呟く。


「あ、それは申し訳ないです」


なんだろう。

世界で唯一、Sランクの魔力をもつこの俺の魔法を直々に受けた彼の発言には、なぞの説得力がある。


「ま、オレも寛大な男だからな。そのことについては許すよ。で、でも次戦うときは絶対に負けないからなっ。覚悟しておけよ、メナ=ソウド!」

「はは、負けませんよ?」


スペードルは強い口調で俺に言い放つ。


彼はツンケンした態度を取ってくるが、なんだかんだでこの人は俺のことを一人の冒険者として認めてくれているみたいだ。

もうちょっと素直になってくれてもいいと思うんだけどね。

彼はツンデレってやつか。


「ま、その話は置いておく。それよりも今は魔族の討伐だ。貴様のせいでまだ本気はだせないが、それでも十分な戦力になるからな。オレたちは先にクエストにでるから、貴様もさっさとクエストを受注してくるのだな」

「それは友達に任せてありますから」


「なるほどな、まあそっちはそっちでせいぜい頑張ることだ。じゃあ会長様、行きましょう」

「ええ。ということでメナ君、お先に失礼するわ。カロナのことよろしくね」

「はい」


「それと、あの子家で君と一緒に旅ができることを楽しみにしていたみたいだから。君はカロナととてもお似合いだと思うよ。お嫁にあげたいくらい」


「か、からかうのはやめてくださいよ~」

「フフフ、じゃあね~」


含み笑いをしたセイラさんは俺に手を振ると、スペードルとともにその場を去った。



「あ、メナ君。クエスト受注完了したよ~。早速行きましょう」

「行こう、メナっち~」

「刀、刀をいただけると拙者も頑張れるでござるからクエスト前に刀を~」


ちょうどそれと入れ替わりのタイミングでカロナたちがやってきた。


「ああ行こうか」


俺は彼女たちに軽く返事した。

あと、例の問いに対して正解を出すまでコノハに刀を渡すつもりは今のところない。

なので彼女の発言はスルーしておく。



さて、今からその強力な魔族の討伐のためのクエストにでるとしよう。

そして冒険者としてこの街を守るんだ。




 クエストを受注した俺たちはセイラさんたちに一足遅れて町を北に進み、魔族たちのいる巣窟までやってきた。


ここは町から少し北に行ったところにあるウェルトラ火山。

どうやら魔族たちは現在この火山のふもとを縄張りとして活動しているらしい。

それを殲滅するのが今回のクエストだ。


~クエスト内容~

種類   :狩りクエスト

受注人数 :多数

依頼元  :冒険者ギルド、ウェルトラ支部

場所   :ウェルトラ火山のふもと

クリア条件:魔族の群れの討伐

制限時間 :なし

難易度  :C

報酬   :活躍による          


羊皮紙で手書かれたクエスト内容を確認した俺は今一度、前方を見やる。


"ァガャシンケウボコザ!"

"ルヤテシブツッブ!"

"ウョキイサハラレワ!"


などと魔族たちが訳のわからない言葉で冒険者たちを威嚇している姿が目にとれる。

熊、大蛇、怪鳥、骸骨戦士などの多種多様な魔物たちが、魔族特有の邪悪に満ちたオーラをまといながら戦闘構えに入ろうとしている。


反対の陣を見れば、そんな魔族たちを討伐すべくセイラさんをリーダーとした冒険者チームが魔族たちと戦闘行おうとしている。

セイラさんは部隊のメンバーの方を向き口を開ける。


「さあ、冒険者のみなさん。ウェルトラを支配せし邪悪なる魔族たちに立ち向かおうではないか。やつらはかなり強力。だが、王様から直々に依頼を受けた私たち優等な冒険者なら、彼らに怖じ気づく要素など欠片も持ってはいけません。ここは協力しながらやつらを倒そうではありませんか!」


「おお、そのとおりだぜええ、セイラ=エルメス。さすが王族エルメス家の正統後継者さんだ。言うことが違う」

「よっしゃー、やる気でてきたー」

「やるぞー」


「「「おお!」」」


ざっと数十人はいるだろう。

セイラさんの呼び掛けによって召集された冒険者たちは大きな掛け声をかけるとともに、魔族に向かっていっせいに走り出した。


「能力強化、攻撃、耐久、魔力、敏捷」

「うおお、くらえええ。雷の荒息、ライジング・ブレス!」

「この魔物風情が。ワシのパンチを受けてみよ。正拳!」

「スーパースマッシュ!」


仲間にバフをかけて一斉攻撃。

冒険者たちは上手くチームワークをとりながら、魔族たちに攻撃する。

さすがセイラさんの集めた部隊というだけのことはあるな。

なかなかに強者揃いだ。

彼らの一撃もかなり優秀なものに見える。


しかし、そう都合よくはいかなかった。


"グッ"

"カドイテノコッ!"

"ワイマアッ!"

"ッダキゲンハ!"


「なっ、あれを耐えただと!?」


傍観していた俺は思わず声をもらす。


どうやら相手も強いらしい。

まさが今の攻撃を凌ぐとはな。

あれが魔族。

相当鋭い一撃を加えなければ早々にやられはしないようだ。


さあ、今の攻撃を堪え忍んだ魔族たちは反撃ののろしを上げる。

熊はパワフルなパンチをかまし、蛇は彼らの体に巻き付き締め上げる。

怪鳥は風おこしによる魔法攻撃。

骸骨戦士は棍棒を振り回す。


「ぐはっ」

「ギャー、やられた」

「くっ、なんて破壊力」


冒険者たちは次々と大ダメージを受けて、ノックダウンする。


戦闘開始早々、こちら側は不利を突きつけられた。

やはり完全に能力差が違う。

相手の方がスペックが上らしい。


所詮集められたのはCランクレベルの冒険者。

その実力では魔王の加護をうけた魔族には到底太刀打ちできないのだろう。

これはCランク、いやBランクレベルのクエストに値するぞ。


なので冒険者たちは次々と戦闘不能になってゆく。

まともに戦えているのは、セイラさんとスペードルくらいだろう。

その二人もかなり苦戦しているように見える。


「やれやれ、俺たちも行くしかなさそうだな」


そんな状況を見ていられなくなった俺たちは早速戦闘に交わることにした。


「よし、俺たちも行くぞ」


「ええ、分かったわ」

「アイアイサー」

「承ったござる」


俺は刀を担ぎ、魔族たちに詰め寄った。


これより勇者党の久々のクエストだ。

魔族相手ということで若干ビビってはいるが、今までの修行の成果を見せてやろうぞ!



魔族の言葉は反対から読むと意味がわかるようにしてみました。

この設定、いつか破綻するような。



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