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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2章 魔法刀製作:西の町ウェルトラ編
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37.クロの訪問

 本日、1年H組に激震がはしった。


それはさっきの合同授業でハルゴ=シルディが上位クラスの生徒に勝利したという下克上によるものである。

このH組の中から上位クラスに対して勝利を納めたのは、刀使いの超天才冒険者メナ=ソウド以来のことである。


この快挙にクラスメイトたちははしゃぎにはしゃぎまくった。

まだまだ上位クラスと下位クラスの間に差は存在するなか、彼の下克上はそれくらいに見事なものだったのだ。

ハルゴに対する称賛の声は帰りのホームルームになるまで、鳴りやむことはなかった。


そうしてハルゴはクラスメイトたちからその強さを認識されるようになったりした。

もともと彼の実力を知っていた俺からすると、親心のようなもので嬉しいことこの上ない。

ま、クロにクエストに誘われるくらいだからわかるやつにはわかる強さなんだけどな。




 そんな感じであっという間に時間が過ぎていき、放課後になった。

することのない俺はいつものように勇者党の党室でのんびりとベッドソファの上で寝転んでいた。


「ああ~、最近支給された金で買ったこのソファ、寝心地サイコーだわ。さて今日は一人でのんびりしますか~」


2日後にウェルトラのクエストが控えているので、それまでは勇者党の活動はオフにしている。

シホ、カロナ、ハルゴのメンバーはこれまでの修行の休養もかねて家でゆっくりしているところだろう。

なので部屋にいるのは俺一人だ。


「……うむ、なんだか寂しい。誰か遊びに来てくれないかな~?」


などと独り言を言っていると。


"コンコン"


ノックの音がした。

誰かが勇者党を訪ねてきたみたいだ。

マ、マジで誰か来た。


「はーい、今出まーす」


自分のエスパーぶりに驚きながらドアを開ける。


「やあ、メナ。久しぶり」

「あ、クロじゃないか!」


訪れてきたのは、フォーカードのイケメン緑髪男子、クローバことクロだった。

新歓戦のときに出会った俺の友人である。

彼とはクラスが違うから全然会えずにいた。


久々の再会にビックリしつつも俺は彼を部屋へあげる。





 どうやらクロは久々に俺と話がしたいから訪れて来てくれたみたいだ。

久しぶりに会ったから俺もテンションがあがっている。


俺たちはソファに腰かけ、話を始める。

まず口を開けたのはクロだ。


「元気そうでなによりだね、メナ」

「ハハハ、そっちこそ順調にやってそうだな、クロ」


クロは部屋の中を軽く見渡す。

クロは思わず表情を明るくさせ、目をキラキラ輝かせている。


「へえ、いいところじゃないか、勇者党。僕も研究党を立ち上げていなかったら間違いなく入っていたね」

「ありがとう。でもそうなってたら、メチャクチャ女子が加入してきたかもな、ハハハ」


「か、からかうのはやめてくれよぉ」

「へへ、冗談だよ」


クロの研究党のことは耳にしたことがある。

クロは俺と同じように、学問、戦闘の両者の面において更なる高みを目指したいという目的から、入学早々に研究党を自ら立ち上げたそうな。


だが、フォーカードとしての彼のネームバリュー及びその最強クラスのルックスから、身分やステータスに異様な執着をもつ沢山の貴族柄のミーハーな女子生徒たちが目をハートにしながら、彼の研究党に所属したいと殺到してきたそうだ。

クロは人が良いのでそれらを断りきることができず、いわゆる超ハーレム研究党を形成することになってしまったという噂がある。


その話をはじめて聞いたとき「羨ましな、この野郎」と思った。


さて、そのハーレムについてクロから色々と話を聞きたかったが、それは野暮な気がしたので、すぐさま話題を変えることにした。

俺はこの部屋を見せびらかすようにして彼に問う。


「それはそうとさ。どうだ、うち結構キレイだろ?」


どや顔で部屋を自慢する俺に対して、クロは笑顔で頷く。


「うん、とても素晴らしい。主な家具は机にホワイトボード、それにソファか。シンプルでイイね。それだけじゃない、とくにメナの机、難関な論文で埋め尽くされてる」


クロは俺の机を指差して指摘する。

どうやら彼の目はよく養われているようだ。

まさか俺の読んでる論文を一目見て、それが超ハイレベルだと言い切れるとは。

ふん、なるほど。

こいつは見た目だけでなく、学問もすこぶる優秀なわけか。

同じフォーカードでもシホ=ハーティとは大違いだな。


「それは2週間後の研究発表会で発表する際に必要な資料をあつめたものさ」

「へえ、ということは君たちの党も発表会に出るんだね」

「へへ、まあね」


クロの言うとおりである。

俺はウェルトラのクエストから帰ったあとに、研究発表会というものに参加する予定なのだ。

以前カロナの魔法で成功したことのある、魔法式の因数分解定理、通称【M―S(メナ=ソウド)理論】という新たに発見した理論体系を発表しようと思っている。


この発見は世紀を揺るがす大発見なということは言うまでもない。

なので、発表会での優勝は九分九厘(くぶくりん)もらった。

また、それによる多大な賞金を得てそれを魔法刀の開発費に注ぎ込もうと、天才の俺は目論んでいたのだ。


「ちゃんと研究党として実績をあげないといけないからね。お金のためだけど」

「はは、お金のためとはメナらしいや」


「おっと、それは貧乏な平民に対する差別発言か?」

「あ、ごめんごめん」


冗談でからかってみたが、クロは真に受けて謝ってきたので、なんかこっちが申し訳ない感じになってしまった。


「あ、すまん。これ冗談だから。ところでクロの研究党も研究発表会に参加するの?」

「ああ、もちろんそのつもりさ」

「ほお」


なんだろう。

高貴でイケメンで頭がよくて戦闘も得意という彼に対して、俺は対抗心を持ってしまったみたいだ。

研究発表会はまだまだ先だが、今の俺は彼よりいい発表をしたいという気持ちになった。

心の底で闘志が燃えた。


「じゃあライバルってことになるな、だが負けないぞ。こっちにはM―S理論があるんだからな、クロ!」

「こっちこそ、そのなんたら理論には負けないよ、メナ!」


俺たちは互いをライバルと認めあい、握手した。



 その後も近況報告もかねて、色々と話に盛り上がりを見せていたところ、クロはとある話を出してきた。


「メナ……今日は君に頼みたいことがあってね」

「なんだい?」


クロは真剣な顔で俺を直視する。

どうやらこれから話すことが本題みたいだな。

ここを訪ねてきたのはそれが理由っぽい。

いったいなんなんだろ?

もしかしてうちに入りたいのかな?


「今週末、僕たちと一緒にクエストを受けてみないか?」

「え?」


まさかのクエストへのお誘いだったか。

あれ?

なんだか聞き覚えのある話だな。

これってハルゴが誘われたって言ってたやつだよな。


「北東の雪山都市、ノースランという町でたくさんの魔物たちが現れたらしくてね。今週末、その討伐のためのクエストを依頼されたんだ。メナにもそれに協力してもらえないかなあって」


なるほど、これがハルゴが言ってたクエストのことか。

クロはそのクエストに俺も招待してきてくれたわけか。

まさか彼に誘われるとは。

でも残念ながらすでにウェルトラのクエストがあるんだよなあ。

王様によって先約済みだ。


「どうだい、引き受けてくれるかい?」

「ごめん、その日俺もクエストがあるんだ」


イケメンにもかかわらず上目遣いでお願いしてきた彼に対し、俺は申し訳なさそうに断った。


「あ、そうだったか。何か用事でも?」

「西の町でクエストすることになっててな」


西の町という言葉にクロが何か気づいたのか、彼の顔から笑いの表情が現れる。


「なるほどね、メナはウェルトラの方だったかあ」

「えっ!?」


まだ一言も出していないその町の名を彼は言い当てた。


「北東のノースランと西のウェルトラ。この2箇所で突如たくさんの魔物が現れたらしいんだ。だからこのクエストはその2つで一つのクエストなんだよ」

「ほう」


「僕はノースランへ行くことにしたけど、まさかメナがウェルトラの方を任されているとはね」


クロが色々説明してくれる。


へえ。

そんな話聞いてなかったぞ。

俺はてっきりウェルトラにだけその魔物軍勢が現れたもんだと思ってた。

なにしろクエストの内容は王様からの手紙にしか載ってなかったしな。

そこまでの詳細は知らされてなかった。


そうか、ノースランという町でも同じことが起こってたんだな。

つまり、クロも実質俺と同じクエストを受けてたってことか。

場所は正反対だけどね。


「このクエスト、ハイレベルなクエストだからさ、名のある冒険者にしか知らされていないんだ。さすがメナだね、君も召集にかかっていたとは」

「マジか!? そんなハイレベルなのか」

「マジだよ。Cランクオーバーのクエストだからね」


クロの情報に続けざまに驚かされる。

これってそんなに難易度の高いクエストなのか。

実は「所詮、雑魚い魔物モンスターを狩りまくるだけだろ?」みたいな感じでなめてました。

まさかCランクとは。

前受けたEランクのそれとは別格だな。


ふう。

名のある冒険者しか召集されない……か。

でも冷静に考えると、俺もその中に含まれるということなんだよな。

このメナ=ソウド、いつの間にか優秀な冒険者として世間から認知されだしたわけだ。


「メナは誰から依頼されたの?」

「王様だ」


俺の返答があまりにもおかしすぎたのか、クロは一瞬の静寂の溜めを挟んで、一気に吹き出した。


「なっ、王様から!? プハハッ、相変わらずメナは面白いね」

「ま、まあな」


俺は恥ずかしそうに頭をかく。


「なるほどねえ、新歓戦で結果を残した君だったら、王様に目をつけられていてもおかしくないね」

「おっしゃる通りです。完全に目をつけられちゃってます。実はあのコロシアムを破壊した一件で、その罪滅ぼしとしてこのクエストを受けることになってたんだよ」


「やっぱりね、そんなことだろうと思ったよ。メナらしいや」

「まあ」


「あ、そうだ。てっきり君をノースランのクエストに誘うつもりでいるつもりでいたんだけど、先にハルゴ君を誘ってしまったんだよね」

「あ、知ってる。彼に聞いたから。ハルゴは君に任せるとするよ」


「ああ、知ってたのか。彼最近よく特訓しているの見てたから誘うことにしたんだ。あの子才能あると思うんだよね」


クロはクラスなどにとらわれず、H組のハルゴの実力を正しく見抜きクエストに招待したということだ。

いい観察眼をお持ちだ。


「わかるぜ。あいつ今日授業の模擬戦でB組の生徒に勝ったからな」

「そうなんだ、やはり僕の目に狂いはなかったようだね」

「クロはいい目をお持ちでいらっしゃる。おかげでこっちは断られちゃったけどな」


「はは、それはすまない。メナは他に誰かといくの? 残りの勇者党のメンバーかな?」

「その通りだ。今のところカロナとシホの2人かな。さすがにこれ以上増えないと思うけど」


「なるほど、ハーティは君を選んだのか。オーケー、じゃあそっちは君たちに任せるよ。僕たちも僕たちでがんばるからさ」

「おお!」


「じゃ、頑張ろー。今日はもう帰るよ。またね、メナ」

「ああ、バイバイ!」


話に区切りがついたので、クロは一礼すると部屋を去っていった。

俺はそれを見送った。





 「ふう、まさかクロが訪ねてくるとは思わなんだな。でも楽しかったからいいや」


俺は一人になると、再びソファの上で寝転がりゴロゴロし始める。

そのとき。


"コンコン"


またしてもノックの音がした。


「なんだ、クロのやつ忘れ物でもしたのかな?」


俺は部屋の内鍵をあけ、ドアを開けた。

だがクロではなかったのだ。


「メ、メメ、メナ師匠!!」

「お、お前…………誰だ?」


小動物のような可愛らしい声が響く。

それは背の低い女子だった。




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