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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2章 魔法刀製作:西の町ウェルトラ編
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36.合同授業、仲間の成長

 ウェルトラのクエストまで残す日もわずかとなってきた。

カロナ、シホとの3人旅が楽しみな俺はそのことばかりを考えながら上の空で授業に出席していた。


気づけば時刻は昼過ぎとなり、4時間目の実戦闘学の授業を受講中だ。

場所はいつもの体育館だ。

担当のスウィンガ先生によるいつもの授業。

しかし、その授業内容はいつもと異なっている。

俺たちH組は前方に集合するB組の姿に緊張の色を示している。


それは月のはじめに行われる合同授業だ。

実戦闘学では、下位クラスと上位クラス間の実力を確認するためにクラス対抗の模擬戦が定期的に行われるのだ。

今日はその日である。


体育館をH組とB組の両陣に隔て、各クラスの3人の代表生徒が1対1で戦うというもの。

そしてその試合がすでに始まっているらしい。

ボーッとしていた俺は今しがたそのことに気づいた。


「い、いつの間にか試合始まってたのか……」


HとBのそれぞれの代表の生徒が戦闘フィールド内で互いに戦闘を繰り広げている。

その様子を周囲のがや達が「やんややんや~」と盛り上げる。


「ハルゴく~ん、頑張って~」


隣で声をあげるカロナに俺はビビった。


「えっ!? 戦ってるのってハルゴか!?」


思わず叫んでしまった俺にカロナは呆れたようにため息をつく。


「さてはメナ君、この授業寝てたでしょ」

「ギクッ」


「今月の代表はハルゴ君にするって、さっきスウィンガ先生が言ってたのよ」

「すみません、夜あまり寝れてなくて。ついウトウトしちゃってました」


俺は素直に謝る。

本当のことを言えば、カロナたちとの旅で心踊りすぎて眠れなかっただけなんだけどな。

遠足の前日に楽しみすぎて眠れなくなるという、あの現象だ。

おかげさまでロクに授業聞いてなかったんだよなあ。


「睡眠は大事だからね」

「はい」


「そのことはいいわ。とにかく私たち勇者党のメンバーの一員であるハルゴ君が代表の一人として戦ってくれているわけよ。しっかりと応援しないとね」

「そ、そうだな」


俺は少し不満そうに呟く。

正直ハルゴには嫉妬するぜ。

まさか学園最強レベルのこの俺を差し置いて代表に選ばれるとはな、ぐぬぬ。


「何か納得いかない顔してるね」


俺の細かな表情をくみとった彼女は俺の心情を言い当てる。

この些細な顔の変化に気づくとは、よく俺のことを見てるじゃねえか。

カロナは観察眼がいいのかな。


「なんで俺が選ばれなかったのだろうって思うとな」


俺の落胆調の言葉にカロナは鼻で笑う。


「スウィンガ先生曰く、メナ君が強すぎるかららしいよ」

「は?」


「だって君の刀を使えば、B組の生徒など秒を数えるまでもなく一瞬で倒しちゃうでしょ」

「まあ」


「それだと意味がないからね。だから君には代表から外れてもらうって先生言ってたんだよ」

「な、なんだと!」


くそ、してやられたか。

俺の知らないうちにそんな話が進んでいたとは。

俺の刀技を御披露目する機会が……。


俺は悔しさで体育館のフローリングを軽く蹴る

……が、思ったより固くて痛かった。

俺はそれが顔に出そうになるのを隠しつつ彼女の話に耳を傾ける。


「それを聞いた瞬間にB組のみんなは喜びだしたわ。あのメナ=ソウドと戦わなくてすんだぜ~、みたいな感じで」

「マ、マジか。そんなに恐れられていたんだな、俺」


俺ってばいつの間にか学園でそんな存在になってたのな。

そういえばH組の魔王って呼ばれているんだっけ?

どうせなら勇者にしてほしかったけど。

やれやれ、その称号に負けてないな、俺。

もうこれ学園最強を名乗ってもいいんじゃないか?


など考えているとカロナが首をフィールドの方に向ける。


「ほら、もう試合始まっているからね。ちゃんと応援しよう」

「何を言う、もちろんさ。ま、本当は俺が出て無双してやりたかったが、まあいいだろう。今回はハルゴに譲るとしよう」


俺は指をくわえながら試合の応援をすることにした。



 目が覚めた俺はあらためてフィールドを確認する。

フィールドには戦闘準備を整えたハルゴとその対戦相手の女の子がただいま戦闘中だ。


その様子を俺はヒシヒシと眺める。


「おお、ハルゴは相変わらずカッコいいミスリルの碧盾(へきたて)か。んで、対戦相手は……っと」


対戦相手が気になった俺はハルゴの前方にいる女の子に視線をうつす。


なるほど、対戦相手の女子は魔法士だな。

魔法士用の三角帽子と深緑(ふかみどり)のローブを被っているし。

魔法士ということは遠距離タイプか。


ところで、女の子の見た目はどうだ?

頬にそばかすがついてい三つ編みの髪型で、なんか地味そうな子だな。

よく見たら可愛いけど貧乳じゃないか、だがそれもそれで良し。


その魔法士の女子がさっそく呪文を唱えだす。


「『いにしへから吹き出でし白妙の、天仰ぐ扇子となり清く吹きたまへ』、木枯らし!」


地味な見た目にも関わらず、彼女は壮大な魔法を発動させた。

風属性の魔法、木枯らしだ。

風系統の魔素が白色の竜巻となって、彼女の木製の太杖から吹き荒れる。


「なかなか高レベルの風魔法だな。面白い」


女の子の魔法のクオリティに思わず感嘆の声をあげる。

独特な呪文形式だ。

つまり、古語魔法といったところか。

たしかあれは東の国、ニチホン発祥の古式魔法だな。

これは結構厄介な攻撃だ。


「だ、大丈夫かな、ハルゴ君」


彼女の魔法を見たカロナが心配する。

俺はカロナの肩をポンと叩き、落ち着かせる。


「なあに、心配することはないよ。あいつは強くなったぜ」

「すごい自信だね」


「なんたってこの1ヶ月の間、()が直接特訓に付き合ってやったんだから。だからハルゴは負けないさ。俺が保証する」

「ふふ、たしかに」


この1ヶ月間、彼との修行に付き合った俺が言うのだから間違いない。

なにせこの俺(・・・)が直々に指導してやったんだからな。

彼がとても強くなるのも当然の結果だろう。

だから俺は1ミリも彼を心配してなどいない。


俺はその自信を持ちながら、彼の試合に視線を戻す。

さあ、木枯らしがそのハルゴに襲いかかる。


「はあっ!」


ハルゴは強い恫喝とともにその大きな盾を木枯らしの軌道を完璧に捉えて防御する。

彼を襲う風はその盾にぶつかると直ちに散乱する。

彼は見事に相手の魔法を防ぎきる。


「「すげえ」」


「あいつあんなに強かったのか。あの竜巻を完封しやがった」

「やるじゃないか、ハルゴ=シルディ君」

「素晴らしい防御でござる」


彼の防御に驚いたのはクラスメイトたちだ。

ハルゴの盾使いに圧倒されているようだ。


ふふふ、だが驚くのはまだ早い。

今から真の修行の成果を御披露目することになろう。

行ってやれ、ハルゴ=シルディ。

この1ヶ月間の訓練の集大成を見せてやるのだ!

そして指導者としての俺の能力をB組のやつらに知らしめさせてやれ!


俺の期待に応えるかのように、防御し終えたと同時にハルゴは盾をはずすと女の子に向かって一目散に走り出した。

魔法撃ったあとの衝撃で相手が動けなくなった隙を、はなから狙うつもりだったようだ。

攻撃に転じた彼の巨体の足音がドシンドシンとフィールドに鳴り響く。


「おい、シルディ君が女子に向かって走り出したぞ」

「もしかして襲うつもりなのかしら」

「いやいや、そんなはずはない。彼、大人しくて優しい子だから」

「でもあの絵面はマズイでしょ。まるで女の子に一直線の暴漢だわ」


クラスメイトたちが彼を誤解する。


たしかにパッと見たらそんな感じに見えないことはないけれどもね。

でもね、これが彼の得た攻撃スキル、ジャンボタックルなんだよ。

要するにただの体当たりさ。

彼、この技しか使えないからね。


性別とか関係ない。

相手が女の子だろうが、男女平等にタックルする。

なまじそういうことにためらいのないハルゴだから、たとえ相手が女の子だろうが手加減はしないと思う。

これが真の男女平等タックルだ。


"ドーン"


ハルゴは女の子にジャンボタックルをかました。


「ジャンボタックル! のしかかり!」


相手と激突したハルゴはそのまま自分の巨体を生かして、地面に押し倒された女の子の上にのしかかる。


「んっ……お、重たい。逃げられないよぉ……」


のしかかられた女の子はもがき苦むが、約90kgの肉圧から逃げることができない。

これが彼の必殺コンボ技、ジャンボタックルからののしかかりの脅威だ。


夏故、ぽっちゃりのハルゴの大量の汗が女の子の生肌にベッタリついてしまうという、ちょっといかがわしい感じになっちゃってるが、そのことには目を瞑るとしよう。


ハルゴは相手が降参するまで、彼女の上に密着し続けた。


「こ、降参……」


女の子が降参し、ハルゴの勝ちとなった。


上位クラスに勝利した彼は高々と拳を挙げた。



 俺たちの特訓の成果を確認することできる試合となった。

だがこれはまだ成長の一歩にすぎないのかもしれない。

これからももっともっと修行して精進してやろうじゃないか。

これが最下位クラスからの下克上だ。



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