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Sランク魔力持ちの天才冒険者、刀というユニーク武器とともに学園最強を目指す   作者: メナ=ソウド
第2章 魔法刀製作:西の町ウェルトラ編
33/74

33.勇者党の初日、はじめてのクエスト

 研究党。

これは我がアルメナ学園内において自由に設立することが認められている研究チームだ。

現在学園内では78の研究党が存在している。

研究党の目的は文字通りいろんなことを研究し更なる高みを目指すことである。


その研究の内容は多岐に渡っている。

新たな魔法理論の形成などの学術的な研究はもちろん、仲間内で筋トレや摸擬戦を行うなどの己を強くするための研究をする党もある。

他には武器や防具作りなどの装備作りをメインとした党や、清掃活動などボランティア主体の党も存在する。

またこれらをマルチに行うパターンもあったりする。

といった具合に多種多様な個性を持った研究党がこの学園には設立されている。


そして俺たち勇者党もその中の一つとして本日はじめて活動を始める。



 王様からアイデアをいただき、これから仲間たちと研究党、勇者党の活動をすることができるようになった。

仲間たちとの新たな生活に心を踊らせた俺たち4人は研究党設立の申請が終わると、真っ先に体育館と講堂の間にそびえたつ白色の学塔、通称ラボ塔の中に入った。

ラボ塔に研究党が収容されている。


そして俺たちは自分たちの党室にやってきた。

これからその部屋の中を確認する。


「楽しみだね、メナ君」

「開……封」

「早くあけようよ」


「わかってる。じゃあ開けるぞ」


“ガチャ”


俺はドアを開けた。

新品の部屋の光景が目に飛び込んできた。


「おお、ここが俺たち勇者党の部屋かあ」


「きれいだね~」

「僕たちだけの世界」

「だけどなんか思ったより狭いわね」


俺たちが感動の声を漏らすなかシホがサラッと水をさすが、彼女の言うとおりだ。

間取りは12畳。

この中にメンバー4人が収容されるわけだから一人当たりに換算すると3畳である。

そう考えると狭いことこの上ない。


さらに俺たちは細かく部屋を視察する。

部屋の四隅には勉強机があり、部屋の真ん中にはホワイトボードが一つあるようだ。

それ以外はまっさらな状態だ。


「ふむ、これは別の日にでも家から荷物を持ってくる必要がありそうだな。ま、今はいっか。というわけで今から机決めのジャンケンをする。負けても駄々こねてすねるんじゃないぞ」


「「おお」」


机が4つあったので俺たちはとりあえずどこの机にするか適当にじゃんけんで決めた。

そして俺が最下位となった。

おかげさまで一番日当たりの悪い席になってしまった。

俺は駄々をこねてすねた。



 さてそれが落ち着いたところで、党首である俺の先導のもとこれからの我が勇者党の活動方針を決めるための議論を始める。


“キュッキュ”


俺はマジックペンで真ん中のホワイトボードに『これからの勇者党の活動方針』という字を書いてやった。

この動作の感じがなんともリーダーっぽくてカッコいい。

フフ、こういうのを一度だけでもいいからやってみたかったんだよなあ。

俺は自分の振る舞いのかっこよさに酔いしれながらみんなに発言する。


「さあここに書いたように勇者党のこれからの活動を決めたいと思う。何か意見をあげてくれ? ちなみに俺は魔法刀の製作だ」


俺が問いかける。

たしかにこの研究党は俺が魔法刀を作りたいという目的のもと設立することになりはしたが、それでも仲間たちの抱く目標を達成できるように手伝うことも義理である。

なんせ俺だけのものじゃないからな。

それにきちんと活動しないとお金もらえないし。


俺の問いに3人は一斉に挙手する。


「私は魔法士としてもっと強くなりたい」

「いい案じゃないかカロナ。俺と似たようなものだな。『特訓』だな」

「ありがとう、メナ君」


俺はボードに『特訓』と書く。


「僕は……試験の赤点回避……のための勉強」

「それもいいね。勉強も大事だ。『勉強』だな」

「うん」


俺はボードに『勉強』と書く。


「フフフ、アタシはメナっちと一緒にいれるならなんでもいいわ」

「……」

「ちょっと反応しなさいよ、メナっち」


黙った俺はボードに『俺』と書く。


このように三者三葉の意見をいただいた。

それぞれ良くも悪くも個性的な意見だと思う。

とにかく俺は彼らの要望にこたえるために全力をつくそうと思う。

これらの目的のもと活動しようと決意した。



 掃除当番やその他諸々のことを決定させると、俺はメンバーに告げる。


「よし、色々決まったところで……。初日の今日は近場のクエストに出たいと思う。いいかい?」


俺は学園に入学して以来、彼らの実戦的な能力を確認したことがない。

だからこそ強くなりたいという目的のためにもお互いの能力を知っておくべきだと俺は党首として判断した。

そこで俺は今日の活動はクエストにしようということを提案してみた。


「いいわよ」

「うん」

「オッケー」


全員オーケーのようだ。


「じゃあ早速クエストを受注しに行こう!」


俺たちはクエストを受けることになった。




 実は王都にやってきて以来はじめてのクエストだ。

なのでクエスト受注のための冒険者ギルドがどこかわからなかったので他の3人に教えてもらった。

田舎者だねえ~と3人に……とくにシホにいじられながら、なんやかんやで王都の冒険者ギルドまでやってきた。


「おおお、ここが王都の冒険者か。メチャメチャでかいな」


故郷のそれとは比にならないくらいの大きさだ。

5階……いや6階立てか。

さすがは王都だ。

それに驚きつつも中に入る。

一般クエスト受注科は2階にあるそうなので2階にやってきた。


「おお、流石王都じゃないか~。依頼の種類が半端なく多い。しかも報酬金すげえ高いじゃん。同じ難易度のクエストでも村のやつよりも何倍ももらえるのか」


田舎者の俺はまたしても驚かされた。

まさか王都ではこんなにも太っ腹な報酬金を与えているとは。

Eランクのクエストですら10000円もらえるとは。

村だと2000円だぞ。


うん、これは格差だな。

これは是正するべきだ。

王様……じゃなかった、行政を司る貴族にいつか文句言ってやる!


「じゃあ適当にその辺のクエストを受けてみるとするか」


「「おお」」


俺たちはあくまでも王国最高峰のアルメナ学園の生徒だ。

たとえ学園の中では落ちこぼれ扱いされているH組であったとしても、いざ学園の外に出てみれば神様扱いされる。

この制服姿を見ただけで周囲の雑魚一般冒険者たちは俺たちに尊敬の眼差しを向けてくる。

そのくらいに俺たちは実は優れた冒険者なのだ。


なので今から受けるEランクのクエストなどは取るに足らないレベルであることは分かっているが、軽い腕慣らしにはちょうどいいレベルだろう。

俺たちはクエストの手続きをすませると足早に目的地であるそばの平原へ向かった。




 今回受注した依頼は王都のそばに広がる平原に生息しているゴブリンの群れの討伐である。

ゴブリン系の種族は弱いが理性がないのでやたらと繁殖力が強くポコポコポコポコ子孫を残すので、冒険者がいくら狩っても狩っても殲滅されることはない。

ゆえに老若男女、素人玄人とわず幅広い冒険者たちに人気のクエストである。


「よし、あそこにゴブリンたちがいる。倒しに行ってくれ。今回は3人の力を知りたいからな。余程のことがない限り俺は戦闘に参加しない。オーケー?」


「ふふ、私の魔法の威力をみてなさい、メナ君」

「オーケー……メナ」

「オッケー、アタシがんばるよ、メナっち」


ゴブリンを見つけた俺たちは戦闘にかかった。


「ムフフ。戦闘よ、戦闘。ワクワクするね。あのゴブリンの群れに私の究極魔法、『邪竜の炎眼フレイムアイ・オブ・ザ・ディスドラゴン』をおみまいしてあげるわ!」


一足先にゴブリンたちのところに突っ込んでいったのはカロナである。

その表情はいつになく活き活きしている。

彼女は恍惚(こうこつ)の笑みを浮かべながら呪文をつむぎ始める。


「汝、真の理をここに示せ。闇夜に潜みし異界の竜よ、その赤き眼ですべてを焼き祓え。碧龍神牙、強羅切別、暗黒玄夢、天下天上。さあ、時は来た。その力は最強にして究極である。ここに、力を振るうときが来た。……………………かくかくしかじか」


カロナは非常に長い呪文を唱えだす。

カロナから発せられる魔素の共鳴によって周りから激しい風が吹き荒れ、周囲の草葉をしならせる。

長い呪文ゆえ、その凄い雰囲気を醸し出すだけ出しといて、その魔法が放たれるまで非常に時間がかかる。

俺はこれをスーパーカロナタイムと呼んでいる。


入学試験のときにその戦闘スタイルを知った。

そして彼女の魔法が発動されるまで5分くらいかかるということも同時にわかった。

うん、こいつ使い物にならないな。

それを確信した俺はハルゴに指示する。


「すまないハルゴ、カロナが勝手に魔法を唱え始めたからしばらく無防備になる。だからそれまでの間彼女を守りながら、襲ってくるゴブリンたちを倒してくれ」

「了解」


ハルゴはコクリとうなづいた。

それを確認した俺は次にシホにお願いする。


「そして、シホ。君は向こうのゴブリンたちを足止めしていてくれ」

「わかったわ、メナっち!」


シホは敬礼で返すと猛スピードで走り去った。



 さて、ハルゴがカロナのもとへ到着したようだ。


“カンカン”


ゴブリンたちの振るう棍棒に盾を上手く合わせてハルゴは完璧に防御する。


「なるほど。ハルゴは素直で良かった。防御もうまいし助かる……ってあれ?」


ハルゴはゴブリンから身を挺してカロナを守ってくれているのはいいが、なぜかやり返さない?

盾を用いて彼らの攻撃を完璧にしのいではいるのだが攻撃に移る気配がまるでない。


「おい、ハルゴ。攻撃は?」

「御免……防御は得手だが攻撃不得手」

「そ、そんなに下手なのか……」

「うん……攻撃スキル未所持」

「な、な、なるほど。それは厳しいな。わかった……頑張って守り続けてくれ」

「御意」


マジかよ。

予想外だった。

彼の防御力のすばらしさは以前戦ったときに知っていた。

その防御の上手さから攻撃もそこまで下手じゃないのだろうと予想していた。


しかし、問題はそこじゃなかった。

こいつそもそも攻撃スキルを会得できないレベルだったのか。

確かにそういう偏ったタイプの人は一定数存在するのだけどね。

といっても今はどうしようもないので、彼には防御だけを任せることにした。



 しかし、まもなくしてハルゴを襲うゴブリンの数が増していった。

ハルゴ一人では防ぎきれないくらいに。

彼にダメージが入り始める。

ハルゴが苦しそうにうめいているのが分かる。

血がポタポタ落ちているのが見える。

このままではまずいな。


「さて、ここはシホに回復を頼もうか……シホ、戻ってきてくれ!」

「あ、は~い」


向こう側で戦っていたシホがもどってくる。

俺はシホに頼む。


「シホは確か回復士だったよな。ハルゴに回魔法を与えてやってくれ」

「ごめん、無理!」

「は?」

「MP不足よ。さっき向こうのゴブリンたちを相手に考えなしに攻撃魔法にMPを使いまくっちゃったからMPが空になってしまったの、アハハ。ごめんね、メナっち」

「え、今の一瞬でか!?」

「まあね、上級の魔法はMP食うからね」

「お、おお……」


俺と同じく新歓戦のメンバーとして抜擢されていた彼女ならその実力は十分に期待できるはず。

だと思っていたが俺がバカだった。

どうやらこの女子にも欠点があるみたいだ。

彼女は考えなしに上級の攻撃魔法をバカスカうつという、アホのバーサクヒーラーだった。


なんで雑魚モンスター相手にそんな強スキルうっちゃうかな?

それ、オーバーキルだよ。

ああ、こんなことなら先日の新歓戦の彼女の試合を見ておくべきだった。

俺は彼女の出来損ないぶりにガックリと肩を落とした。



 たかがEランククエスト。

俺たちエリート冒険者なら楽勝だぜと思っていたが、そういうわけにはいかなかった。

まさかこんなに苦戦するとはな。

まったく、これほどに歯車がかみ合わないこともあるのだな。

やれやれ。

彼らにはまだ改善の余地があるようだな。


俺はため息をつきながら刀を抜くとゴブリンたちを一閃しクエストを終了させた。





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