3.入学試験のための試験、ステータス鑑定
学園の門についた。
さあこれから学園内に入って入学試験だ……といううもりだったのだが、どうもその前に抜き打ち試験を受けなければいけないみたいだ。
つまり、入学試験を受ける資格を得るための試験があるのだ。
俺とカロナはそのことに驚いた。
うわさ通りこの学園では高水準の教育が受けられる。
なので、そこから卒業した生徒たちはエリートな冒険者としての将来が約束される。
しかし、それゆえこの学園の入学希望者はとても多いそうな。
万単位の受験生がいるらしい。
そこでその大勢の受験者を一気に減らすため、校門で抜き打ちの試験、ステータス鑑定試験というものが行われているらしい。
今しがたその説明を目の前の試験スタッフさんから受けたところだ。
というわけで今からステータス鑑定試験がはじまる。
(ステータス鑑定試験か……。なかなかに厳しそうだな。周囲の受験生はことごとくおとされていたしなあ……。もしかしたらカロナも落ちちゃうんじゃないか。せっかく可愛い女子と仲良くなれたのに)
俺がカロナを心配するなか、まずは彼女のステータス確認が始まる。
「合格を言い渡されたら学園内へ入場してください。不合格を言い渡されたら即座に帰ってください。ではステータスカードを見せてください」
「はい」
スタッフの指示に従い、カロナはステータスカードを取り出すと、それを渡す。
もちろんステータスはプライベート事項なので、俺は彼女のそれを確認できない。
ただひたすらに彼女が不合格にならないことを祈る。
「……ご、合格!」
スタッフから合格の声がでた。
よかった、合格だ。
どんなステータスなのかはわからないが、とりあえずカロナは合格を言い渡された。
さきほどまで襲われていた彼女であるが、実は優秀な冒険者だったようだ。
彼女が試験をパスしたことに俺はホッとした。
「カ、カロナ」
「どう、メナ君。これが私の実力。さあ、次はアナタの番よ」
カロナは俺に笑顔とドヤ顔が混じった表情でいい残すとさきに学園の中に入っていった。
◆
さて、俺の番となった。
はたして俺は大丈夫なのだろうか?
落とされたりしないだろうか?
……などと不安を抱くことはない。
ふっふっふ。
なぜなら俺のステータスは優秀だから。
自信満々なようすで俺は合否を待ち望む。
「ではステータスカードを見せてください」
「はい」
俺はスタッフにステータスを見せる。
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●基本情報
名前 :メナ=ソウド
年齢 :15
性別 :男
ジョブ:刀士
ランク:B
●能力情報
項目 :数値 ランク
筋力 :47 E
魔力 :95 S
敏捷力:81 A
知力 :87 A
耐久力:33 F
センス:84 A
平均 :71 B
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「…………こ、こっ、これはっ!?」
俺のステータスを見るやいなやスタッフは思わず声を発す。
「も、も、もうしわけありません。こ、このステータスカードは本物ですか!?」
「え? そうですけど……なにか?」
失礼なことに俺が偽物のステータスカードを使ってステータスを偽装しているのではないか? とスタッフは疑ってきた。
まあ、それもそうだろう。
なんたって、人類最高レベルのAランクやSランクの文字が、当たり前のように羅列されているのだからな。
それほどに俺のステータスは化け物じみている。
そう考えると今のスタッフさんの反応というのは、自然なものだといえよう。
「……あれ、おかしいですね。こんなランク……ありえませんよ。ヘルムーボ先生、ちょっと来ていただけますか?」
あれ?
なにやら大事になりだしたぞ。
あくまでもただのステータスチェックのはず。
それなのにスタッフは上官の先生を召喚した。
「おやおやどうされたのですか? なにか問題でも起こりましたか?」
ヘルムーボ先生という奥のパイプ椅子に座っていた少しポッチャリした優しそうできれいなおばさんがこちらへかけつけてきた。
「ヘルムーボ先生、彼のステータスカードを確認していただけますか?」
「ん、偽のカードかどうか鑑定してほしいのですか? ん、承りました。では失礼しますね少年君。ステータスカードを拝見します。『汝、真実を示せ』、チェック!」
ヘルムーボ先生が専用の魔法を使って、俺のステータスカードを鑑定する。
カードが青い魔方陣に囲まれる。
「ん、なるほどね」
「どうです? 彼のカードは本物ですか?」
10秒ほどで判定がすんだ。
ヘルムーボ先生は驚いた様子でささやく。
「本物ですね。やれやれ、おそろしい子が受けに来たものですね。彼の冒険者ランクはBランク……王国精鋭部隊、《国軍》レベルのランクね」
「ヤバいですよね、スゴすぎますよね!」
「ええ、この歳で国軍に匹敵する能力があるなんて……」
「それに魔力にいたってはSランクですよ。Sランクッ!!」
「魔王クラスってことですよね。こんな子を我が学園が……いえ、我が王国が放っていられるのかしら?」
なにやら試験官同士が興奮した様子で話を進めている。
やはり俺のステータスに驚きを隠せなかったみたいだ。
そして話し終えたヘルムーボ先生は俺の腕をガシッとつかむ。
「ん、メナ=ソウド君、あなたのステータスは国軍に匹敵します。すごいステータスよ。私は今すぐにでも特待生枠としてあなたを合格させたいです。しかし、あなたの意思も尊重したい。特待生となってしまえば、卒業後あなたは必ず国軍に属さねばなりません。それが嫌ならばこのステータスのことを黙って、一般試験を受けてもらうことになるのだけど、どうしますか?」
ヘルムーボ先生は唐突な話を持ち出してきた。
特待生だと?
国軍だと?
なんかエラい次元の話だな。
さて、どうしたものか。
特待生となってしまえば学費も免除されるし、他にも多くの面で優遇されることは間違いないだろう。
この道を選べば間違いなく立派な冒険者になれる。
しかし、その場合将来必ず国軍に属さないといけないそうだ。
《国軍》とは魔王討伐のために王家が直接設立したアルメナ王国一番の最強集団。
国中のトップレベルの冒険者が集められている。
言うなれば誰しもがあこがれるエリート軍団だ。
そんな国軍ではあるが、彼らは魔王討伐のために日々熱心に鍛錬を積み重ねているらしい。
いわばとてもストイックでMな集団なのである。
たが、俺はそこまで身を挺して鍛えることは好まない、俺めんどくさがり屋だから。
俺は自由きままに修行しながら魔王討伐に貢献したい。
誰にも縛られたくはないのだ。
そういう意味では俺にとって国軍に入るメリットは一切ない。
というわけで特待生にはならないでおこう。
「ヘルムーボ先生、お心遣いありがとうございます。ですが特待生にはなりません。自分の道は自分で決めます」
俺の選んだ決断に先生は笑顔になる。
「そうですか。じゃあ頑張って下さいね。ここで第1の試験の合格を言い渡します」
「ありがとうございます」
こうして俺は第1の試験を突破した。
俺はアルメナ学園入学試験の受験資格を得た。
俺は多くのギャラリーに見送られながらその学園内に足を踏み入れた。
あとがき
ステータスのランクについて
一般冒険者の平均が40のEランクです。
そこから10増えるごとにD、Cとランクが上昇します。
Dランク、Cランクでも相当強いです。
Aランクのある主人公は化け物です。
ちなみに40より下はFランチです。