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17.王宮にて、服の洗濯をお願いした

 「ここがカロナの家……」


町の中心部にそびえ立つのは非常に大きな王宮。

俺はその荘厳(そうごん)さに圧倒されている。


(なるほど、ここが王宮というやつか)


金色の豪邸だ。

学園にも負けず劣らずの大きさ。


門前では自国と他国の貴族たちが入れ替わり立ち替わりで出入りしている。

その様子を多数の衛兵たちが巡回しながら監視している。


「あっちは正門だから。裏門から入りましょ……ほら、こっちよ」

「あ、ああ……」


少し萎縮(いしゅく)しそうになるが、ここまで来たら引き返すわけにはいかない。

俺はカロナに続いて進んだ。



 俺たちが王宮の中に入ろうとすると、黒服姿の執事(しつじ)らしき人たちが数人やってきた。

そして俺たちの前でひざまずく。


「「おかえりなさいませ、カロナ様!」」


執事全員が一糸(いっし)乱れぬ動作でカロナの帰宅をもてなす。

なんという規律正しさ。

俺はその臨場感に表情が固まる。


その光景にポカンとしていると、執事の中からいかにも(じい)やっぽい感じの白髪のじいさんが前にでてきた。


「カロナ様、そちらのお方は?」

「私の友人ですわよ、セバスじいさま」

「左様でございますか」


カロナが丁寧な口調で応対する。

俺はそのギャップに笑いそうになったが、必死にこらえる。


「まさかカロナ様がご友人をつれてなさるとは……私めも嬉しく思います」


セバスというじいさんは驚いている。


「い、いえ。しかる用件がありましたので、連れて参りましたのですわ」

「ほう……その用件とは?」


「はい。事情がありまして、彼……メナ=ソウド君の制服がお汚れになられたので、それを我が家で洗濯していただこうと思いまして」

「なるほど左様でございましたか」


カロナから訳を聞くと、セバスというじいさんがこちらをじろじろ見てくる。

そしてセバスさんは口を開く。


「君は……メナ=ソウド様でよろしいですか」

「あ、はい」


「おほん。カロナ様のご友人、メナ=ソウド様。たしかにあなた様の御服(おんふく)が汚れているようにお見受けします。ぜひともうちで洗濯させていただきたいっ!!」

「よ、よろしいのであれば構いませんが」


セバスさんは俺に対しても物腰低く接する。

この凄そうな人に敬語を使われてしまうとどこか落ち着かない。


そしてセバスさんはメチャメチャ洗濯したそうな顔をしている。

さすがにこれを断るわけにはいかない。


「はあ~、ありがとうございます。……職業病と言いますのか、汚れしまったものをみるとキレイにしたくなるんですよ」

「なるほど、そうでありましたか。ではお願いします」


このじいさん、ただのキレイ好きらしい。

それゆえ俺の汚れた制服を洗濯しかったみたいだ。

まるでエサを()かれた金魚のようだ。


まあこちらとしてもキレイにしていただけるのならありがたい。

winwin(ウィンウィン)というやつだな。


俺が快く承諾すると、セバスさんははりきりだす。

セバスさんはしたっぱ執事たちに指示する。


「みな、仕事にかかるのです。メナ=ソウド様に客室を用意せよ。そして、着替えさせるのです。洗濯もお願いします。さあ分担してください! あと余った者は彼のために夕食を用意するのです!」


「「はい、セバス執事長!」」


したっぱ執事たちは敬礼すると持ち場へ向かった。


そして着替え担当の若いお姉さんメイドがこちらへやってきた。


「メナ=ソウド様、私はお着替え担当のキエ=オーガルと申します」

「よ、よろしくお願いします」


彼女がペコリと頭を下げてきたので、俺も同じように返す。


「早速ですがドレス室に向かいます。私についてきてください」

「は、はい」


これからドレス室なるところへ連れていかれるらしい。

カロナとはいったんここでお別れのようだ。


「行ってらっしゃい、メナ君」

「おう、また後でな」


俺はカロナに手をふった。





 ドレス部屋に着いた。

目前にあるのは赤色の超高級そうなドア。

学園のドアとは格が違う。


それに驚きながらも入室する。


「ほは~、これがドレス室か~。広い、そして服ばっかだ!」


見事なまでの服景色である。


男物から女物、子供用から大人用、地味なやつから派手なやつまで全てがそろっている。

ここにある服だけでコスプレパーリィができそうだ。


また、どれもこれもが一級品の素材でできているということも一目でわかる。


それほどにすごい一室にお邪魔できただけで貴重な体験である。

少し恐れ多い。


俺が無邪気にこの部屋に感心していると、隣のキエさんが話しかけてきた。


「素晴らしいでしょ?」

「はい」


キエさんは自慢げな様子でいる。

それほどにこの部屋が誇らしいようだ。


「自国はもちろん、他国からの服装も用意されいますの。他国の文化を尊重することは大事ですから。まあ国同士のつながりというやつですね」

「なるほど」


他国の服か。

たしかに見たことない服もたくさんある。


興味を抱いた俺はドレッサーを漁る。

そして、そのなかで気になった服についてキエさんにたずねてみる。


「これってなんという服ですか?」

「それは振り袖(ふりそで)と呼ばれています。女性用の服ですね。遠い東の国、ニチホンのものです」


「じゃああれはなんという服ですか?」

「それはセーラー服と呼ばれています。それは西の国のものですね」


俺の素朴な質問にキエさんは笑顔で答える。

彼女は服のことが好きみたいだ。



 さて、俺は服を見学しにきたのではない。

今着てる服を洗濯してもらいに来たのだ。


「メナ=ソウド様、こちらの服を着用くださいね」


キエさんが服を用意する。

白色の上質な貴族服だ。


「この服でいいのですか?」

「ええ、客人用の服ですよ」


キエさんはコクッとうなずく。


「では着替えます」


俺は試着室に入った。




 数分後、無事着替え終えた。

はじめてきる貴族服に違和感を感じるが、じき慣れるだろう。


「お似合いです、メナ=ソウド様」

「あ、ありがとうございます」


試着室の鏡を見て、自分でも似合ってる気がしていた。

それでも他人から言ってもらうとやや気恥ずかしい。


俺は下を向きながら照れた。


「あ、そうだ。キエさん、これをお願いします」


俺は脱いだ服を彼女に渡す。


「スンスン。なるほど、冒険者の匂いですね」


彼女は俺の服を鼻にあてるとその匂いを()いだ。

そのことにどんな目的があるのだろうかと、疑問に思った。

俺は彼女にたずねた。


「どうかしましたか?」

「はい。きちんと匂いに対応させた洗濯を致すのが当家の方針でして」


「なるほど、ご配慮ありがとうございます」

「いえいえ」


かなり理にかなったサービスをしてくださるようだ。

匂いに合わせた洗濯法というのが存在するらしい。

まさか洗濯がそこまで技術発展しているとは思わなかった。

この俺ですらしらない情報だった。



 俺がそのことに納得したとき、誰かがノックしてきた。


"トントン"


「キエさんいらっしゃいますか? カロナです」


カロナが訪れてきたようだ。


「カロナ様も準備できたようですね。今からメナ=ソウド様を引き合わせます」

「はい。ではここでお待ちしています」


キエさんがカロナに伝えると、今度は俺の方を向く。


「洗濯まで時間がかかります。ということでメナ=ソウド様、これよりカロナ様と夕食を召し上がっていただきます。私はこの服を洗濯室へ持っていきますから。あなたはカロナ様と一緒に食事室へ向かってください」

「は、はい。わかりました」


キエさんは言い残すと、部屋を出ていった。


このあと俺は部屋の前でカロナと合流すると、食事室へ向かった。



キエ=オーガル⬅お着替える

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