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13.vs先生

 いよいよスウィンガ先生との試合が始まろうとしている。

周囲のクラスメイトから緊張した視線を感じる。

ここまで注目されるのは入学式以来かな。

その視線が少し気になる。


「気にするな俺。周囲は空気だ」


クラスメイトのことは考えないでおこう。

俺は彼らの視線を無視し、刀を構える。

そして、先生の方を見た。

先生はモンクであるが、ガントレットを装着しておらず素手だ。

加えて(よろい)などの防具も一切身に付けいない。

それを見て問う。


「先生、素手なんですか? 防具は一切つけないのですか?」

「そうだ。俺レベルのモンクとなると、この方がしっくりくるのだよ」


くっ、これはずいぶんと舐められたものだな。

この俺の刀を相手に素手でくるとは。


しかし、それは別の意味でマズイ。


なぜならこの刀は生身(なまみ)の肉体をもいとも簡単に切り裂くことができてしまうからである。

もし、いまの状態で先生に刀技を当ててしまえば、間違いなく先生は大ケガをする。

それほどにこの刀という武器は優秀な反面、危険なのだ。

そこで俺は武器を変えることにした。


「どうしても防具は着けないのですね、わかりました。ではこちらもやり方を変えます。時間をください」

「わかった。3分間待ってやる」

「ありがとうございます」


3分もかからないのだがな。

先生から許可を得ると、俺は持っていた鉄製の刀を(さや)に戻した。

そして、左の腰に指してあった木製の刀、木刀(ぼくとう)に持ち替えた。


いつも使っている鉄製の刀では相手に傷をつけてしまう。

その点この木刀はそこまで殺傷能力は高くない。

そんな木刀であってもスキルを用いれば十分なダメージを与えることができる。

これなら先生を傷つけずに戦える。


「それは木でできたものかい? 相変わらず妙な形をしてやがる」

「はい。先生が丸腰で戦うとおっしゃったので、傷つけないようにと思いまして」


「よくわからんが、気遣(きづか)いありがとう」

「はい、もう大丈夫ですよ。いつでも試合開始できます」

「わかった。では気をとり直して……試合開始!」


さあ、試合が始まった。

さてどのようにして戦おうか。

俺は作戦を練ろうとした。

しかし、そんな時間を先生が与えることはなかった。

先生は合図するとともに一目散(いちもくさん)にこちらへ攻めいってきたのだ。

不意をつかれた俺は思わず叫んでしまう。


「えっ!?」

「ふっ、試合開始って自分で言っときながら申し訳ないけれどね、さっそく攻めさせてもらうよ……【能力活性(のうりょくかっせい)(きゃく)】!!」


足を金色(こんじき)に光らせた先生は全速力でこちらへ来る。

おそらく魔素によるブースト系の補助スキルだろう。

かなりの速さだ。

よける選択肢を奪おうということか。


「くっ……」

「残念だったな、メナ=ソウド君。君お得意の魔法は封じさせてもらうよ。遠距離技は使わせない」

「え……?」


お得意の魔法だと?

それは間違っているよ、先生。

刀を持ってるのに、なんで魔法を使うことになるのか。

少し先生の発言に疑問を感じる。


「Sランクの魔力持ちの君のことだ……どうせその刀とかいう武器でとんでもない魔法を発動させようとでもしていたのだろう。……くくく、しかし、その(すき)は1ミリたりとも与えるつもりはないぜ。ゴリゴリの近接戦でいくからな。魔法士に対する戦いかたはそう決まっているのさ。これまで格上の魔法士にはこの作戦を使い勝ってきた」


「そ、そうですか」


なるほど。

俺は先生の意図を確信した。


"どうもこの人は俺の刀技が魔法系の技だと思い込んでいるらしい。"


しかし、それは間違い(ミステイキング)

刀士はゴリゴリの近接物理職なのだ。

たしかに俺はSランクという魔王級の魔力を潜在的には持っているが、魔法というものを使うつもりはない。

……いや、正しくは使えないのだけどね。


まあ、何はともあれ先生は勘違いしているわけだ。

俺のステータスを知っているゆえ、先入観にとらわれているのだな。

そうとも知らずに先生は目の前までやってくる。


「ここまで近づいたら魔法を放てないだろう。……能力活性、(わん)!」


拳にものすごい力を蓄えた先生は豪快な攻撃技をかまそうとする。

明らかに上級レベルの技がくる。

そのことからもこの人がかなり腕利きの冒険者であるということがわかる。


「くっ」

「魔法を撃つ暇さえないだろう。どうやら俺の勝ちのようだな、ソウド君」


先生は俺がこの状態で反撃できないとおもいこんでいる。

そこから余裕の笑みもこぼれている。

しかし、それは裏を返せば、油断しているということ。

先生はこの刀技が近接スキルであることをご存知ない。

そこに付け入る(すき)がありそうだ。


(ふっ、残念だったな。スウィンガ先生、勝つのはこの俺だ!)


勝利を確信した俺は笑った。


「それは(あきら)めからの笑いかい? 終わりだっ!! 覇道拳(はどうけん)!!」


先生は拳を向けてきた。

しかし、俺はそれに対抗する。


(ふう、まずここは軽くよけるとするか)


たしかに先生のスピードは半端じゃない。

能力活性という補助スキルも使っているせいで、より速く感じる。

Bランクくらいはある。


しかし、所詮(しょせん)はBランク。

実は俺はそれよりも速いのだ。

俺の敏捷のランクはAランク。

先生の攻撃をよけることくらい造作(ぞうさ)もない。


"ドオオオーン"


先生の剛拳が地面にぶつかり、轟音を響かせる。


「なにっ、よけただと!?」


先生はよけられたことに驚く。


(さあ反撃だ)


スキルの反動によってできた一瞬の隙をついて、俺は先生の頭に刀技を全力で決め込む。


清刃鋭斬(せいじんえいざん)!!」

「なつ!?」


"ゴンッ"


「ぐはあああっ、いてええっ!! やられた……」


先生を一撃でノックアウトさせた。

まあ、それほどに鋭い一撃だった。

もし、これが鉄製の刀だったら間違いなく殺していただろう。


「俺の勝ちです、先生」


俺は刀を(さや)にしまった。


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