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12. 4時間目、クラスメイトたちに興味を持たれた

 生徒会室から解放された俺は4時間目の授業を受けるために急ぎで体育館へ向かう。


「くそう、完全に遅刻だあ。実戦系の授業だけは真面目に受けようと思っていたのにー」


生徒会室に呼び出されたのは昼休みの終わりごろだ。

そこから逆算してわかるように、今は4時間目が始まってからけっこう時間が経っている。


事情はどうあれ初回から遅刻を決め込んでしまえば、明らかにクラスメイトや先生に悪印象を与えてしまう。


「ただでさえ他の授業は簡単すぎてテキトーに受けていたから、これだけは真面目に受けようと決心していたのだがな。はあ……」


1時間前の理論魔法学もそうだが、俺にとってどの授業もお遊びレベルの内容でしかなかった。

それゆえ退屈すぎたので学園での授業が始まって以来、俺は授業中によく居眠りをするようになっていた。

そのせいでクラスからは居眠りキャラとして認識されていたりもする。


悪く言えば不真面目な俺ではあるが、この実戦闘学だけはしっかりと取り組もうと思っていた。

しかし、その矢先にこの遅刻。

俺の不真面目さもここまでくると、周囲から嫌われるかもしれない。

それが少し不安だ。


「でも事情が事情だからね。これはきっちりと弁明しなければ」


あれこれ考えても仕方ない。

ときには開き直ることも重要。


素直に遅刻した理由を述べれば、みんなわかってくれるはずだ。

俺は覚悟を決めると、歩く速度を速めた。





 体育館に着いた。


「あ、もう始まってるな」


すでに授業は始まってるらしく、担当のスウィンガ先生がクラスメイトたちに熱心に講義している。


「よーし、では話を続けるぞ。君たち冒険者は魔王軍の手先である魔物と戦うことになる。そこで大事なのが戦闘能力だ。戦闘ってのはな…………って、メナ=ソウド君じゃないか。待っていたよ」


「あ、本当だ。ソウド君だ」

「来た」

「もしかして本当に生徒会に呼ばれていたのかな?」

「ひそひそ」


先生とクラスメイトは俺に気づいた。


(おや……? 反応が予想と違う)


クラスメイトから冷たい視線が集まると思っていた。

だが彼らが俺を見る目はそのような軽蔑(けいべつ)のものではなく、興味のまなざしだ。


「メナ君!」


ひときわ大きな声で俺を呼んだのはカロナだ。

カロナは立ち上がると大きな胸を揺らしながらこちらへ近づいてきた。


「どうしたんだ、カロナ?」


俺は彼女の胸元に視線をチラチラ向けながら返答する。


「セイラお姉さまに呼び出されたらしいわね」

「えっ、なんで知ってるの?」


「ハルゴ君が報告してくれたのよ。上位クラスとの決闘に勝利したあなたがセイラお姉さまに呼び出されたって」

「ハ、ハルゴが?」


俺はハルゴの方に視線を向けた。


「もしかしてハルゴが言ってくれたの?」

「う、うん……。無断遅刻……良くないと思った」


「そうか、ありがとうハルゴ。助かったよ」

「うん……」


これは助けられた。

さっきの場面の当事者であったハルゴが俺のことをしっかりと先生に伝えてくれていたらしい。

だからクラスメイトたちが俺を冷たく見ることはなかったわけだ。

ハルゴのお陰だ。


「で、どんな話をしていたのかしら?」


安堵(あんど)した俺にカロナが興味津々にたずねてくる。

もちろん彼女だけでなく、他のクラスメイトたちもそのことに感心があるみたいだ。


生徒会長に呼び出されたということはそれほどにインタレスティングなことらしい。


「ああ、生徒会に入ってくれないかと誘われた。断ったけど」


俺は生徒会室であったことをそのまま話した。

そのあと、周囲がどよめいた。


「「ええええっ!?」」


「生徒会に勧誘されてたのかよっ!?」

「しかもそれを断るなんて」

「すげえ……」

etc。


驚く先生とクラスメイトたち。


それくらいにおかしな話だよな。

こんないい加減な俺が生徒会に勧誘されるなんてよ。

でもちゃんとした理由があったのだけどな。


「やっぱりソウド君すごいんだね」

「たしかに。入学式でも新入生代表をつとめていたしなあ」


クラスメイトは俺についてあれこれ話始める。

どうやら俺、メナ=ソウドという存在について気になり出したみたいだ。


「うわさだと、学術試験で受験者のなかで一番だったらしいよ。そのかわりに実戦試験が全然ダメだったからH組になったって聞いたことがある」

「ほえ、なんだか面白いやつだな。普段は授業中に居眠りばかりするやつだと思っていたけど」

「勉強はできて、戦闘は苦手なタイプなのかな?」


あっ、入学式のところまでさかのぼり出したぞ。

みんなはこの俺がH組にいることの訳を考察している。


「だけどハルゴ=シルディ君が言うには、メナ=ソウド君は上位クラスの生徒に決闘で勝ったそうだよ。戦闘が不得意というわけではないんじゃない?」

「それホント?」

「いったいなんなんだよっ、メナ=ソウドは?」

「ソウド君がどれほどの実力なのか私気になる~」

etc。


なんか話が脱線しているような。

俺が実戦ができるやつなのかどうかが話の中心になってきている。

クラスメイト全員の視線が俺に突き刺さる。



 "パンパンッ"


その状況を見かねた先生は大きく手をたたく。


「よしよし、みんなメナ=ソウド君のことが気になるようだな。実は先生も気になっている」


先生もみんなと同じ意見らしい。

どんだけ俺に興味あるんだよ。


「まあちょうどタイミングだったからね。メナ=ソウド君、君には今から授業の手伝いをしてもらう」

「え?」


「問題ないだろう。みんなも君のことを知りたがっているし。それに手伝いといっても面倒なものじゃない」

「そ、そうですか」


「ああ。君にお願いしたいのはな……俺と戦ってくれないか?」

「は?」


まさかの先生との対決かよ。


「そりゃ手伝いといえばそうなるだろう。だってこれは実戦闘学だぜ。体育館を使用してまで行ってるんだから」

「なるほど、そうですよね」


「ちょうど今から戦いの手本を見せてやろうと思っていたんだよ。その相手を誰にしようか考えていた。そのときに君が来たのんだ」

「はあ」


「それにみんな君の実力を見たいそうだからね。文句はないよな?」

「ええまあ」


またしても戦闘か。

別に戦うのは大好きだからいいのだけれどね。

ただ、さっき戦ったばかりなので少々面倒に感じる。


(さっきのセマカ=ログにつづいて、実質2連戦だな……仕方ない、サクッと決めてやるか)


遅刻していきなりのできことだが、俺は試合を引き受けることにした。



 さて、俺とスウィンガ先生は試合の準備を始める。

その準備がてら先生が話しかけてきた。


「君と戦うのは入学試験以来だな」

「覚えていただいてくれたのですね」


「そりゃそうだ。変な武器を用いていたからね。あのときはどんな生徒かなって楽しみにしていたんだよ」

「どうも」


「それなのに試合早々に足をつりやがって……印象的過ぎんだろ」

「うぐ、すみませんでした」


「といってもそのおかげで俺は君の担任にもなれたしな。今ではこの大事なH組の生徒たちの一人だ」

「ありがとうございます」


「そういうことだ。君とはきちんと戦ってみたいと思っていた」

「俺もです」

「ふっ、戦闘狂だね」


俺も先生とはぜひともお手合わせ願いたかった。

この人はこの王国最強のアルメナ学園の先生だ。

しかも実戦系の専門の先生だ。

絶対に強いはず。

聞いた話ではあの国軍に所属していたことがあるそうな。


そんな凄腕相手にこの刀技がどこまで通用するか確認したい。


「で、どうだ? もう準備はできたか?」

「はい、バッチリですっ」


「オーケー。じゃ今度は足をつんなよ」

「はい」


俺は刀を持つ。


いつものことだが、刀を見てクラスメイトが驚いているということは言うまでもない。

もうその光景にも慣れつつある。


「では、はじめ!」


そして、先生の合図とともに戦闘が始まった。

今度こそ足はつらないようにしよう。


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