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ぼっちが転移で自由人。  作者: 浅野陽翔
迷宮攻略とか何そのヌルゲー
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W癒やし

 ……ふむ。途中からイチャコラさせてたら、長くなった。

 エルガド王国王城、第一王女・エステリア=メルフラ=エルガドの寝室。

 つい先程、急拵えで整えられたその部屋のベッドに、部屋の主であるエステリアがどこか緊張したように腰掛けていた。

 と、そんなエステリアの目の前に、扉のような、しかしそう呼ぶには実体感のない何かが現れた。

 そこから出てくるのは、異世界から勇者として呼ばれた少年・村崎霧也。

 霧也は、辺りを見回して呟く。

「――よし、転移成功」

 そしてそのまま、霧也が現れてから、立ち上がってピシッと気を付けの体勢になっていたエステリアを見て、首を傾げる。

「エリー、お前、何やってんの?」

「あ、その、えっと、久しぶり、だったから……」

 その答えを聞いて、更に首を傾げる霧也。

「……それはよく分かんねぇけど、とりあえず、改めて久しぶり、エリー」

「……うん、久しぶり、えっと、キリヤ……」

 照れ臭そうに霧也をそう呼ぶエステリアに、満足げに「よろしい」と呟いて頷きながら、彼女の頭を軽く撫でる霧也。とても自然に。

「あっ、えへへ……」

 嬉しそうに笑うエステリア。

(……小動物みてぇだな。ペットに欲しい)

 なんて馬鹿なことを考える霧也だが、実はエステリアの素を知る者は大体こんなことを考えていたりする。

 霧也に撫でられてだらしない顔を見せていたエステリアが、ハッ! と正気を取り戻したように顔を上げると、軽く咳払いをする。

 そのまま先程のようにベッドに腰掛け、霧也にも隣を勧める。それに従いエステリアの隣に座る霧也。

 この部屋には他に椅子なんかもしっかりあるのだが、わざわざベッドを選んだのは、霧也と少しでも近づいていたい、という乙女心の表れだったりする。

「キリヤ、通信石は持ってきた?」

「当然」

 そう返しながら通信石を《時空庫ストレージ》から取り出す霧也。

「[空間魔法]……それって、どれくらい入るの?」

 エステリアのそんなふとした疑問をぶつけられ、少し考える霧也。

「そうだな……ランクとかステータス考えると、そこらの倉庫は余裕で超えるよな……うーむ」

 正確な容量が掴めず、唸る霧也。

「……でも、シロナガスクジラくらいなら入れる自信あるぞ。見たことねぇけど」

「しろながすくじら?」

 霧也の呟きに反応し、エステリアが聞き返す。

(そうか、こっちにはシロナガスクジラいねぇのか)

「俺達の世界の生き物だよ。世界一デケェっつわれてた。確か、ニ、三十メティアはあったかな?」

「ドラゴンと同じくらいだね」

「……マジで?」

 ドラゴンとは、そこまで大きなものなのか。いや、それは大きいか。となると、あの龍殺しドラゴンスレイヤー氏は短剣でそれを倒したのだろうか。霧也は、恐らく初めてギルドマスターの凄さを知った。

「うん。えっと、火竜サラマンドラが確か二十メティアくらいで、水竜リヴァイアサンは四十メティアはあるって本に書いてあったと思う」

「マジか……あーでも、なんか読んだことある気がするわ」

 そもそも、科学が発展した現代の地球と、ファンタジーな異世界を比較するのが間違っていたのだ。

「……いやでも待てよ……水竜リヴァイアサンが四十メティアか。それでもまだ入りそうだしな……超大型○人行けるか? いや、行きてぇな」

 いきなり謎の願望が入り始めた。

「超大型○人? ……キリヤ、私、何故か駆逐したくなってきた」

「お姫様がんな言葉使うなよ……つかなんで知ってんの?」

「?」

 どうやら、エステリアはよく分かっていないようだ。分かっていても困るが。

「っていうか、キリヤ!」

「おうっ?」

 いきなり大声を上げたエステリアに、霧也が驚きながら返事をする。

「話がすごく逸れてると思うの」

「……確かに。んーと? 通信石の接続リンクだっけか? どうやんの?」

「え? キリヤ、通信石は持ってるのにそれ知らないの?」

「適当に競り落としたヤツだからな」

「……キリヤが今まで何してたのか、全く分からない……」

 霧也の行き先を二ヶ所も当てた癖に、よく言ったものだ。

 なんてことは霧也は知らないので、とりあえず「まぁ、色々とな」と誤魔化しておく。大したことはしていないのだが。

「あ、でも」

「あ?」

 ポン、と手を叩くエステリアに顔を向ける。

「ベルメルタの魔物襲来をほとんど一人で片付けた黒髪黒目の美少年がいるって聞いた」

「ぶふっ!」

 エステリアの言葉を聞いて、霧也は思わず吹き出してしまう。彼女がそれを知っていることに対してではない。王女である彼女がこの国の重要な都市であるベルメルタの危機について知っているのは、何の違和感もないのだ。霧也が反応したのは、噂の流れ方。つまり、「黒髪黒目の美少年・・・」というところだ。

(美少年て。いや、美少年て。確かに、周りに、つか主に沙菜にイケメンだ何だと言われることはあったぜ? 自分で言っちゃアレだけど、まぁ見た目は良い方だと思ってる。でも、でもよ、)

「美少年っつうのは、何か違ぇだろ……」

 思わず頭を抱える霧也。

「イケメン」と「美少年」で意味に大差はないと思うが、まぁ、それは受け取り方の違いだろう。霧也的には、美少年というのはどちらかというと中性的な見た目のイメージなのだ。

 そして、それにはエステリアも同意なようで、少し苦笑している。

「……でも、凄いね、キリヤは」

「今度は何だよ……」

 疲れ果てたように聞き返す霧也。

「城を飛び出して行ったと思ったら、いつの間にか大活躍してるんだもん。凄いよ。だって、冒険者になってからおよそ一ヶ月でランクⅤなんて、異例のことだよ? ねぇ、〈ニ刀の紫デュアル・パープル〉さいひゃい(痛い)いひゃい(痛い)ごめんなひゃい(ごめんなさい)ゆるひてくだひゃい(許して下さい)おねがいひまふ(お願いします)

 霧也の黒歴史第一号(多分)を口走ったエステリアの頬を思わず抓る。むにっと。

「…………」

「……あにょあの、キリヤ?」

 むに。

 むにむに。

「えっと、いふまでいつまで

「悪ぃ、なんか楽しくなってきた。これロウとどっちがいいかな……」

 どっちが、というのは、あれだ。癒やし的な意味だ。

 エステリアの頬。なんとなく摘んだそれは、なんと、ふわふわもちもちとかいう、とりあえず素晴らしい感触だったのだ。何故かソニア、リラ、沙菜の三人全ての頬を摘んだことがある霧也だが、その誰をも上回っていた。さすが王女。

 なので、もふもふふかふかのロウとどちらが癒やされるだろう、と、ふと思った次第である。

 という訳で、

「検証してみっか。ロウ!」

「わぅっ?」

 ひょこっ、と、精霊界に続くと思われる穴から顔を出すロウ。

 片手をエステリアの頬から離して、ロウをちょいちょい、と手招きし、膝に乗せる霧也。そのまま撫で始める。

「これは……甲乙付け難い……あー、いいわぁ」

 すっかり癒やされモードに入ってしまった。

 すっかり道具のようになってしまったエステリアは少し不満げだが、ロウに興味津々な様子。

 霧也がエステリアの手を取ってロウの上に置くと、エステリアは恐る恐る、といった感じで撫で始める。

 そして、

「ふへぁ……」

 意味不明な言葉を発して、エステリアは考えるのを止めた。

 というか、よくよく考えてみれば、霧也に頬を弄ばれているこの状況、彼と触れ合っているのだと見れば決して悪いことではないのだ。むしろ歓迎すべき状況である。

 それに気が付いたところにロウの毛並みによる癒やし攻撃で、エステリアは思考を放棄したという訳だ。

(……あとはあれだな、ここにソニアのマッサージでも加われば完璧だな)

 なんてことをふと考える。

「……ふあぁ」

 エステリアとロウのW癒やしに加え、今霧也が座っているベッドも王女が使用するものなだけあって極上。それと、さりげなく霧也をリラックスさせているこの部屋の香り。……多分、香水とかアロマとかじゃなく、女の子の香り的な。

 そして、実は霧也、どうせやることないからと琴音が訪ねてくるまで寝ていたのだ。その後琴音に頼まれて紘輝の様子を見に行って、ここに来て――まぁつまりは、寝起きと言っても過言ではないレベルなのだ。

 なので、有り体に言えば眠い。とても。

 思わずあくびをした霧也は、その眠気に逆らうことをせず、次第にウトウトとし始める。

 ふと隣を見れば、エステリアも似た様子であった。

 結局、通信石を接続リンクして帰ったのは、昼を大きく過ぎてからであった。

 その間何があったのかは、言う必要はあるまい。

 という訳で、唐突に始まったイチャイチャ回でした。いや、ホントはね、せっかく王城行ったんだからアイシャあたりも出そうかななんて考えてたんだけど。気が付けばこんなことに……。

 アイシャが好きだというそこのアナタ(いるか知らないけど)、もうしばらくお待ちを。その内ちゃんと出すから。

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