次の行き先
霧也と関わりのある人達とのイベントをダイジェストでお送りします。
紘輝達が霧也と再会して、およそ2週間が経った。
霧也と再会した後、もう一度会って話をしたい、と言い出した琴音と共に、勇者としての強権まで使って霧也の宿を探したが、見つかったときにはもぬけの殻だった。逃げられた、と感じた紘輝だったが、琴音はなんとなく予想が付いていたようで、やっぱりね、と苦笑するばかりだった。
つまりは、霧也の判断は彼自身にとっては正解だったという訳だ。
さて、この2週間、紘輝達は様々なイベントに遭遇した。イベント、というよりも、個性豊かな人達だが。
顔から体格から声から、何から何までギャップしか感じない龍殺しのギルドマスターと模擬戦を行い、戦闘経験の差からか敗北を喫した。
装備を見直そうかと訪れた武具店の立ち並ぶエリア、その案内所にて、紘輝を見ても特にこれといった反応を示さない受付嬢に遭遇した。紘輝からすればとても珍しい存在である。時折遠くを見つめてため息を吐いていたが、あれは何だったのだろうか。頬を染めていたし。
とりあえず片手剣を扱う店を回っていたら、頑固そうなドワーフの刀工が営む店を見つけた。入ってみたら、何が気に食わなかったのか紘輝は速攻で追い出された。泣きそうになった。ちなみに、その後彼によく似たドワーフが営む防具店を発見したが、紘輝はすぐに出てきた。もう関わりたくなかったようだ。
同じく色々な武器を試してみようかと回っているときに訪れた店で、恐ろしい男性に絡まれた。逃げようとしたものの一瞬にして捕まり、勇者のフルパワーを以てしても何故か抜け出せなかった。その後紘輝は着せ替え人形にされた挙句、彼が選んだ服を全て買わされた。この店には二度と近づかないと誓った。
とまぁ、そんなこんなで散々な目にあった紘輝達(というか紘輝)だが、そろそろこの街を出ていこうか、ということになった。
それというのも、実戦経験を積む意味では良かったかもしれないが、冒険者としてのランクの問題で、高難易度の依頼が受けられなかったのだ。
ならば依頼は受けずに強力な魔物を倒しに行こう、となっても、そんなものは発見された途端に依頼が発注され、すぐさま高ランク冒険者に倒されてしまう。ここは冒険者の街であり、高ランク冒険者も多い。そのため、この街の周囲は結構平和なのだ。
という訳で紘輝達は、次どこに向かうべきか、エステリアに助言をもらうことにした。こういう時は自由に頼っていい、と言われたので、じゃあ早速頼ろう、となったのだ。
『なるほど……やはりキリヤさんは、そちらにいましたか』
ここは、紘輝達が寝泊まりしている宿の大部屋。
その壁に、エステリアの端正な顔が映し出されていた。
その前に置いてあるのは、一見なんの変哲もない箱。しかしその一面には穴が開いており、そこから壁へと投影されている。
これは、「通信石」と「投影石」という2つの鉱石を組み合わせ、遠く離れた場所の光景を映し出せるようにした魔法具。あまり有効範囲が広くない念話石とは違いかなりの距離まで通信が出来るので、エステリアとの通話用に持たされていたのだ。もちろん、エステリアの方からは紘輝達の姿が見えている。
「はい。残念ながら、再会した次の日には逃げられてしまいましたが」
そして今は、本題に入る前の近況報告。というより、主に霧也の話だが。
『そうですか……それはなんというか、キリヤさんらしいですね』
紘輝の言葉を聞いたエステリアが苦笑する。
紘輝もそれに同意するように頷いてから、少し真面目な顔になって口を開く。
「……それで、村崎君なんですが……この短期間で、ランクⅣまで上り詰めていました。なんでも、ギルドマスターのゴレフさんに圧勝した、とかで……」
『えっ? あのゴレフさんに、圧勝、ですか……?』
エステリアが驚いたように問い返す。
「はい。本人からも聞きました。手も足も出なかった、と……俺も闘いましたが、そう簡単に倒せる相手じゃありませんよ、あの人は。俺でも勝てなかった……」
ギュッと握りしめた拳をエステリアから隠しつつ、紘輝は悔しそうに話す。
紘輝のその様子には気づかなかったエステリアが、どこか嬉しそうに微笑む。
『そうですか……キリヤさんは、そこまで強かったのですね……』
恋する乙女、と呼ばれても否定できなさそうなそのエステリアの様子に、案の定反応するお調子者共が。
「おい、おいおいおい、やっぱあれじゃねぇか、完全に落ちてるじゃねぇか!」
「……やめておけ、もう分かってることだ。これ以上、これ以上傷口に塩を溶かしまくった熱湯をぶっかけるような発言をするんじゃねぇ……!」
「うっわ何その具体的な……いや、結構痛そうだなおい」
「んなこたどうだっていいんだよ! なんだよ、顔じゃなかったのか!? 強さか!? モテるためにゃ強さも求められるってのか!?」
「……なぁ、うちの勇者ってイケメンで強いんだよな……?」
「ねぇ君達、何が言いたいのかは大体分かったから、静かにしてくれないかな?」
「「「さーせんっした勇者様っ!!」」」
ため息を吐く紘輝に、楽しそうに笑う琴音。ぽけーっとする恵、興味なさそうに寝っ転がる大吾。エステリアは、そんな気の抜ける光景に苦笑している。
紘輝は、緩んだ空気を戻そうと咳払いをする。
「こほんっ。……それで、エステリア様。本題なのですが、実はこの街をそろそろ出ようかと思ってまして……」
『次の行き先、ですね』
「はい」
紘輝が頷くと、エステリアは少し考えるようにしてから口を開く。
『それでは、アルカイナ王国などはどうでしょう? 「迷宮」と呼ばれる建造物がある国で、その迷宮には強力な魔物も多いと聞きます。鍛える、という意味なら、うってつけでしょう』
「他国、ですか?」
『はい。ですが隣国ですし、友好国でもあります。こちらから通達は入れておくので、歓迎されると思いますよ』
紘輝は、他の皆の意見を聞こうと後ろを振り向く。と、ほぼ全員が、目線で行きたいと訴えてくる。例外は恵と大吾だ。先程から体勢が全く変わっていない。
それに紘輝は頷きを返し、再びエステリアを見る。
「では、そうしようと思います」
『分かりました。それでは、馬車の手配をお願いしておきますね』
「ありがとうございます」
紘輝達は知らなかった。
エステリアが、霧也と遭遇する可能性が高そうだな、と考えながらアルカイナ王国を提案したことを。
――そしてその予想は的中し、アルカイナにて、紘輝達は霧也と再び会うことになることを。
徒歩が基本、かつのんびり観光しながら進む霧也達に対して、紘輝達は馬車での移動となる。
アルカイナに先に到着するのは、紘輝達。霧也に逃げ場はない。
という訳で、半ば無理やり終わらせました。
とりあえず幕間を入れて、隔日更新にて第3章が始まります。
第3章、迷宮国編(仮題)は、もう全力で伏線とも呼べないような伏線張っちゃった通り、紘輝達が結構出てくると思います。というか、霧也と一緒に迷宮攻略させることも視野に入れてます。多分一緒になるかな?
まぁそういう訳で、最初の頃よりは更新ペースが落ちますが、第3章からもよろしくお願いします。
……あっ、もう一作も一緒に読んでれば、俺の作品は毎日更新になるよ(露骨な宣伝)。




