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ぼっちが転移で自由人。  作者: 浅野陽翔
商業都市、思いがけない再会
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絶体絶命

 ヤバい、ストックが……。

「……ん、これは」

 戦場のほぼ中心。

 魔力も回復し、そろそろ戦おうかな、なんてうっすら考えていた霧也がふと発動した[索敵]にかかった反応。

「またサイクロプスか」

 霧也が呟いた通り、サイクロプスだ。霧也が倒した個体よりは弱いようだが、それでも通常よりは強い。ランクⅣ中位程度のステータスはあるだろう。

 しかもそこにいるのは、ソニア達だ。

 確かに彼女達もランクに見合わぬ強さを持っているが、それでも少し荷が重い、と判断した霧也は、念話で話しかける。

『ソニア、リラ、沙菜』

 すると、すぐさま反応が。

『はい、何でしょう』

『……ちょっと今、それどころじゃないのだけれど』

『分かってる。ちょっと待ってろ、今から――』

 向かう、と言おうとしたところで、沙菜から制止が入る。

『待って、霧兄』

『どうした?』

『あたし達にやらせて』

『……本気か?』

 沙菜の台詞に、霧也はそう聞き返す。

『本気も本気だよ。多分、あたし達ならやれる。霧兄は他の、もっと危ない人のところに行ってあげて』

 霧也は、3人がいる方に目を向ける。離れてはいるが、見えない距離ではない。

 すると、彼女達もこちらを見ていたようで、目が合う。サイクロプスは、他の人達に関心が向いているようだ。

 ゆっくりと頷く沙菜。それに続き、ソニアとリラも頷く。沙菜の独断ではなく、合意の上、ということだろう。

『……分かった。ただし、自分の身の安全が最優先だ。それだけは絶対に忘れんなよ』

『はい』

『了解よ』

『うん』

 その三者三様の返事を聞きながら、霧也は[索敵]に意識を向け、劣勢と思われる場所を探し始めた。


==========


「さて、霧兄にあんなこと言っちゃったし、勝たなきゃね」

 沙菜が、短剣を握り直して呟く。

 目の前では、サイクロプスに大勢の兵士・冒険者が攻撃を仕掛けているが、ほとんどの攻撃は当たる前にその豪腕に吹き飛ばされ、運良く当たっても硬い皮膚に阻まれ、大したダメージを与えることが出来ない。

 彼女達が見ている間にも、1人、また1人と殴り飛ばされ、戦闘から離脱していく。もう、片手で収まる程度しか残っていない。

「作戦は今まで通りでいいわね?」

「はい。恐らくあれがベストかと」

「おっけー。それじゃ、そろそろ行こう」

 気合を入れなおし、各々の武器を構える。

 と、そこで、サイクロプスがこちらを向く。周りに人の姿はない。全員やられてしまったようだ。

 霧也があまりにもあっさりと倒してしまったので実感がわかないが、本来サイクロプスというのは、通常の個体でもかなりの強さを誇っているのだ。通常個体のランクがⅢなのは遠くから魔法で攻撃すれば比較的簡単に倒せるからで、魔法を禁止するのであればランクⅣ下位、今目の前にいる個体でいえばランクⅣの上位からランクⅤの下位程度の強さはあるだろう。

 そしてどうやら、運の悪いことに、このサイクロプスに挑んた者達の中に魔法を得意とする者はほとんどいないようだった。全くいなかった訳ではないが、知能も上がっているのか、そういう者は優先的に攻撃しているようだった。

「グオオォォォォッ!」

 そして今回も、ソニアが魔法使いであることに気が付いたのだろう。雄叫びを上げながら突進してくる。

 その勢いは、トラックにも引けを取らない程。当たればひとたまりもない。

 が、

「《風爆バースト》!」

 いくら勢いがトラック並といっても、その重量自体は比べるまでもない。元よりステータスが高めで、かつ、種族上風魔法に普通の人以上の適性があるリラであれば、止めることは容易である。

「グオッ!?」

 驚愕の声を漏らしながら、突如足元で炸裂した風に足をすくわれて倒れるサイクロプス。

「今よ!」

「うん!」

 リラの号令を受け、沙菜が走り込む。

 自身の間合いまで一気に距離を詰め、短剣を振りかぶり――吹き飛ばされる。

「きゃあっ!?」

 サイクロプスが振るった腕に当てられたのだ。

 咄嗟に短剣を間に入れたし、リラが風のクッションで衝撃を吸収したものの、それでも沙菜の軽い体など簡単に吹き飛ばされてしまう。

「うっ……」

 そのまま気を失ってしまう沙菜。

「くっ……ソニア、まだ!?」

 それを見たリラが、弓で牽制しながら、ソニアに問いかける。が、返事はない。一瞬目を向けると、何やらブツブツと呟いている。

 リラは今、ソニアの詠唱を待っているのだ。

 ソニアはついこの間[魔属性適性]がランクⅣに上がり、新しい魔法を手に入れた。それは魔属性魔法の本質であり、強力な魔法なのだが、詠唱に長い時間がかかってしまう。

 それを待っている間にも、サイクロプスはその手に持った棍棒を振り回し、リラを追い詰めていく。

「ここまで近付かれるとっ……!」

 完全に弓の間合いではない。だからといって離れれば、サイクロプスのターゲットがソニアに移ってしまう恐れがある。

「《風刃エアカッター》!」

 リラは、風属性魔法ランクⅠ、《風刃エアカッター》を放つ。これは名前の通り風の刃を飛ばす魔法で、中々の切れ味だ。

 それはサイクロプスに直撃するが、皮膚を浅く切り裂くに留まってしまう。魔法攻撃ではあるが、この魔法は物理攻撃としてのものが強いのだ。

「ガアァァァッ!」

 しかも、中途半端に傷をつけたのが悪かったのか、サイクロプスが怒りをあらわにする。

「動きが速くなった……っ!」

 さっきまでもやっとのことで捌いていたのに、更にスピードが上がってしまうと、いよいよ捌き切れなくなってしまう。

 それでも[風読み]や直感でなんとか回避していくが、ついに攻撃を当てられてしまう。

「うぐっ!」

 たまたまあまり強い攻撃ではなかったが、女性の体を倒すには十分な威力。

 すぐさま起き上がろうとするリラだが、体が言うことを聞かない。

 サイクロプスが迫ってくる。リラの体は動かない。ソニアの詠唱もまだ終わっていない。

(私、もう……こいつの相手は無茶だったの……?)

 サイクロプスが棍棒を振りかぶり、振り下ろす。リラは、反射的に目を瞑ってしまう。轟音。しかし、覚悟していた死は訪れない。

 恐る恐る目を開けると、サイクロプスは何故か、棍棒を横から弾かれ、リラのすぐ横に振り下ろしていた。

「え……?」

 その直後。

「リラさん! 詠唱、終わりました! 行けます!!」

 待ち望んでいた知らせが入った。

 ん? 棍棒がなんで当たらなかったかって? そう遠くないうちに出てきますよ。まぁ、あの人なんですけど。こういうの大体。

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