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ぼっちが転移で自由人。  作者: 浅野陽翔
商業都市、思いがけない再会
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霧也のテール

 また訳の分からないサブタイを付けやがって、俺。

 その後霧也は、いじけるソニアをなんとか宥めてから、デリフに紹介された宿へとやって来ていた。

 しかしそこは、霧也のような冒険者用の、つまりは個人経営の宿というよりも――

「まるでホテル、だな」

「うん。ホント、おっきいねー」

 霧也の呟きに共感するように頷いたのは、この場にいる10数名の中で唯一「ホテル」という概念が通じる沙菜である。

 彼女は今、地球でそうだったように、髪型をツインテールにしている。ここに来る途中で見つけた髪ゴムを購入し、霧也が結んだものだ。実は霧也は、地球ではよく沙菜に強請られて彼女の髪型を整えており、少なくともツインテールを結ぶことに関して言えば、この場にいる女性全員が驚く程の手際の良さだ。実際、霧也が沙菜の髪を結んでいる姿を見て、ほとんどの者が驚愕をあらわにしていた。

 ちなみに、ツインテールが上手く結べるのならサイドテールも出来るのでは? と考えて、わざわざ髪を解いて霧也に髪を結んでもらったソニアだが、どうやら応用は上手く行ったようで、これまた驚く程の手際を見せていた。心なし、ソニアの髪がツヤツヤしているようにも見える。どんな魔法だ。

 そして、ポニーテールのリラが、髪を下ろして顔を真っ赤にしながら霧也に近付いていったのは、言うまでもない事だろう。彼女は今、彼女に最も似合う絶妙な高さに調整されたポニーテールを指でクルクルと弄って、とてもご満悦の様子だ。

 余談だが、最早霧也にとってはケモミミ少女達のリーダー的存在になってしまっているウサミミっ娘――改めイリヤも頼んでみたところ、彼女が提案した編み込みは、それはもうヒドイ出来だった。どうやら霧也は、「テール」ではない髪型に関しては、人並み以下のセンスを持っているらしい。それでも気丈に明るく振る舞うイリヤだったが、そのウサギらしい純白のウサミミは、彼女の内心を表すかのようにヘニョリ、としていた。

 それを見て困り果てる霧也。そこに助け舟を出したのは、まさかのアルク。彼の指示通り霧也は、ポニーテールを作り、丸めて――所謂、「シニヨン」という髪型を作り上げることに成功した。それはもう素晴らしい手際、出来だった。見栄えを良くするためにサイドを編み込んでいたりするのだが、どうやら霧也は、「テール」が少しでも絡む髪型に関しては、神憑り的なセンスを持っているらしい。イリヤも、その綺麗に纏められた純白の髪を鏡で見て、同じく純白のウサミミをピン、と立てていた。それはもう、嬉しそうだった。

 ちなみに、アルクがシニヨンのやり方を知っていたのは、よく姉がやっているのを見ていたから、らしい。

 閑話休題。

 宿という名のホテルに入った霧也達は、デリフが予め取っていたのだろう部屋に案内され、その扉を開ける。

 そこにあったのは、どこの貴族の寝室だよ! と言いたくなるような立派な部屋。

「スイートルームか? 初めてだな」

「……でも、それよりはVIPルームって感じだよね」

 そう。スイートルームというよりも、VIPルーム。沙菜の表現は的を射ている。まさにその通りなのだ。

「……なんていうか、すごく高そうね……」

「リラさん、そんな身も蓋もないこと、言っちゃいけませんよ」

 ソニアの言葉にはしかし、普段のような元気がない。仮にも霧也の専属メイドであるソニアの頭の中には、先程の奴隷購入の件も含めて、金銭面での問題が山積みである。さすがに、いきなり支出が多すぎた。それでも霧也の意向に沿うあたりは、ちゃんと専属メイドなのかもしれないが。

「……こんな立派な部屋を、3部屋も……?」

「さすがにこれよりは少しグレードが落ちるみたいだけどね。ここに慣れちゃったら、この後の旅が大変そうだ……」

 イリヤの呟きに反応したのは、彼女の髪型に関してアドバイスをしたアルク。彼は、さすがに今後ここまでの部屋に泊まれることはないだろうから、次回からの宿が酷く劣悪な部屋に見えてしまったらどうしようか、などと遠い目をしている。

 と、部屋の中を見回していた霧也が、さて、と言いながら手を叩き、注目を集める。

「これから、部屋の割り振りを決めたいと思う。今ここにいる人数は16人。この部屋に6人と、他の2部屋に5人ずつだ。幸い、それぐらいなら余裕で入りそうだからな。まぁ、どうしても俺やアルクと同じ部屋になっちまう奴が出て来るんだが、それは我慢してくれ。どっちも、美少女と同室だからって我を忘れるようなことはねぇからな。……ねぇ、よな? ……まぁいいや。という訳で、割り振りの決め方だが――」

 そこで霧也は言葉を切って、楽しそうに笑いながら《時空庫ストレージ》を発動する。

 アルクを除く全員が息を飲む。その目には、何がなんでも霧也と同じ部屋を確保してやる! とでも言うように、欲望でギラついている。

 それを敏感に察知した霧也は頬を引き攣らせる。同じく察知したアルクは、がんばれー、というように笑いながらも、別の意味で笑いそうになるのを必死に堪えている。

 しかし、そんな中でもしっかりと《時空庫ストレージ》を発動しきった霧也。

 そこから取り出したるは――

「くじ引き、だっ!!」

 いかにも、というような、それはもうシンプルなくじ引き。すなわち、木製の筒のような容器と、そこに入っている割り箸のような、1〜3の数字が書かれた16本の木の棒だった。

 ウサミミ→耳→イヤー→イリヤ。安直ですか? そうですね、適当です。

 ちなみに、イリヤの髪型ですが、生まれて初めて、女性の髪型なんてものを調べました。そう、調べたんです。何か「テール」系ないかなって。そしたらいつの間にか、「テール」を利用した髪型になっていた。

 え? 白髪ウサミミっ娘にシニヨンが似合うか? そんなん度外視だよ。

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