罪には罰を。
おかげさまで、日間1000PV突破しました! この倍続けてて300も行かなかった前作ェ……
まぁ、それは置いといて。この調子で自由気ままに書いていこうと思いますので、これからもよろしくお願いします!
それと、ブクマ・感想・レビュー・評価もどんどんお願いします! 感想、出来るだけ、返すよっ!
お祝い特別編みたいなのは、書かないよ? だって基本書き溜めて予約投稿だし。めんどいし。でも、もし1万とか行ったら書くかもね。だから、ほら、広めろ。
あぁ、そうそう。今更ながら、行間が無いと読みにくい! という意見が多かったら、全話修正しようと思います(露骨なコメ稼ぎ)。
……まぁ、あまり進み過ぎると直さなくなるんだけど。だって、量が多いと面倒じゃん?
うん、長くなってごめんね? 結構嬉しかったんだよ。
「あ、あのー……」
戻って来た職員の第一声がそれだった。お腹を抱えて笑っているおかしな男がいたのだから当然だろう。
「ご主人様。ご主人様!」
ソニアが霧也に呼びかけるが、反応が無い。
そこでソニアは、強行策に出る。
「そいっ!」
「ごふっ」
拳骨だ。いつかの借りを返すかのように、全力の拳骨。メイド的にそれでいいのだろうか。きっとよくない。
今度は頭を抑えてうずくまる霧也。ソニアが全力で殴ったのだから仕方ない。ステータスの差で考えて全力でも大したダメージではないという判断だ。もうこの際メイド的にいいかどうかは置いておこう。なにせ、残念系専属ビッチ吸血鬼メイドのソニアなのだから。新しいジャンルだ。
「い、いてぇ、頭があぁぁ……」
加えて、実はソニアには、今朝こっそり吸った霧也の血の影響がまだ残っている。霧也の目が覚める前に、貧血になるギリギリまで吸っていたのだ。メイド的に? 人間的にも全くよろしくない。
ともかくそんな訳で、現在のソニアの平均ステータスはあの焼き鳥(本気モード)と同等だ。それが、例えチート的防御力を持つ霧也が相手だとしても全力で殴ったらどうなるか。痛いに決まっている。というか、人間誰でも殴られたらそりゃ痛い。
霧也がソニアを恨みがましい目で見るが、失格メイドはどこ吹く風だ。
霧也は、返す金を少し減らすことにした。ソニアから見れば痛手でもなんでもないことには気付いていない。
「……え、えぇと、よろしいでしょうか?」
このままだと話が進まないと判断した職員が声をかける。それに反応して頭をさすりながら立ち上がる霧也と、自分の暴挙を棚にあげて霧也の頭を撫でるソニア。ちなみにボブは、2人の関係が全く掴めずおかしな顔をしている。
「……あぁ、いいよ。もうどうでもいいよ。で、何だ?」
霧也の顔から表情が抜け落ちている。
「ひっ!? あ、は、はい。あの、先程お預かりした品なのですが、少々貴重すぎるものが多く……鑑定も普段以上に慎重にならざるを得ず、代金も用意しきれないので、そちらの方は後日、という事に出来ないでしょうか?」
「あー……それは別にいいんだけど、今金がねぇんだ。先にいくらか貰えるか?」
これがそこらの商店であれば盗まれる可能性も考慮してこんな提案は受けなかっただろうが、ここが街の中心であるギルド本部ということで、霧也は提案を受けることにする。
「はい、それは大丈夫です。それでは、すでに鑑定が終了している分をお渡ししますね」
そう言うと、再び奥に引っ込んでいく職員。しかし、今度はすぐに、なにやら革袋を手に持って戻って来る。
「それでは、こちらが鑑定終了分の代金、50万リアとなります」
「あぁ、サンキュ」
そう言って手渡された革袋を受け取る霧也。中を見ると、100円玉くらいのサイズの銀貨が数十枚入っている。この世界の物価が分からない霧也にはこれがどのくらいの価値なのか分からないのだが。
ちなみにこの世界のお金である「リア」だが、日本円換算でどの程度の金額なのかは判断が難しいところだ。なにせ、この世界と現代日本とでは、物の価値も稼ぎやすさも全く異なるのだから。しいて言うなら、50万リアは程々に働いた銀持ちの月給相当、だろうか。ソースはボブだ。
そしてそのボブだが、嬉しそうに、もしくは楽しそうにニカッと笑うと(結構怖い)、
「ガッハッハッ! 良かったじゃねぇか! これでお前さんも大金持ちだなぁ!」
霧也の背中を叩いてくる。
そしてこれにはさすがの霧也も、堪忍袋の緒が切れた。まぁ、元々そこまで寛容という訳でもないし、ソニアにやられた分も多分に含まれているのだが。
「ひでぶっ!?」
ボブが回転しながら壁際まで吹っ飛んでいく。というか、壁に激突している。
何が起きたかというと、とても簡単なことだ。霧也の回し蹴りを顔面にモロに受けた。ただ、それだけ。
もちろん霧也も手加減はしていたが、それでも攻撃力は600程だ。しかし、敏捷に関してはこれっぽっちも加減していない。当然ボブは反応出来ないし、攻撃力的にそこまでのダメージが無かったとしても蹴りの勢いで吹き飛んでいくのは当然だ。
「……ふぅっ」
多少スッキリしたような表情をしながらパンパン、と手をはらう霧也。ソニアはボブの様子をチラッと確認して興味を無くし、職員はポカンと目と口を開いている。
「……あっ、あいつ平気かな」
「多分平気でしょう。仮にも銀持ちな訳ですし」
「あれ、ソニアさん結構辛辣だね」
「あれだけご主人様に危害を加えていた輩ですから」
当然のように言い張るソニアだが、霧也はそれを無表情に見つめている。
それに気が付いたソニアが若干うろたえ、
「ご、ご主人様、どうしました? あの、少し怖いというか何というか……」
「……なぁ、ソニアよ」
「は、はいっ?」
「俺が今日1番痛かったのは、何だと思う?」
分かりきった質問だ、と思って口を開きかけるソニアだが、ふと自分の行動を思い返し、顔を青ざめさせる。
「も、もしかして、私の拳骨、だったりします……?」
「あぁ、するな。超するよ。ところでソニア」
「はいっ、何でしょうかっ?」
ソニアがいつにも増して背筋を伸ばしている。
「俺は知ってるんだよ」
「な、何をでしょうか……?」
「今朝」
「ひっ!?」
今朝。思い当たる節がありまくるソニアが、少しずつ霧也から距離をとるが、霧也は彼女の肩をがっしりと掴み、それを許さない。
一応他人には聞かれたくない内容なので、そのままソニアの肩を引き付ける霧也。その顔の近さに、こんな時だというのにソニアが頬を赤らめるが、
「俺の血、吸ってたよな? それも結構な量を。あぁ、あれは辛かったなぁ……」
すぐに蒼白になる。
「なんか首筋に痛みが走ったと思ったら、急に体から熱いものが抜けていく感じがしてさ。あぁ、ソニアが血吸ってんだろうな、なんか起きづらいな、終わるまでこのまま待ってようかな、って思ってたんだよ」
ソニアが震え始める。
「そしたらさ、いつまで待っても終わらねぇの。なーんか意識が遠のいてきて、これヤバくねぇか、って思ったところでお前が離れてったんだけど、俺はその後すぐにまた寝ちまった……いや、落ちちまったんだよ。いやぁ、限界ギリギリを見極めるの、上手くなったよなぁ……」
霧也の目は優しい光を帯びているように見えるが、その奥の方が全く光っていない。
「まぁ、それは置いといて、地球じゃ、罪には罰を、ってのが普通なんだよ。と、言う訳で……」
霧也がソニアの頬に手を添えて、目を合わせる。普段ならソニアの顔が真っ赤になる場面なのだが、今に限っては正反対の色をしている。
しかしそんな事は気にした様子もない霧也は、楽しそうに、嬉しそうに、満面の笑みを浮かべ、反対に底冷えするような視線をソニアに向けると、彼女にとって最悪に近い宣告をする。
「罰として、お前しばらく吸血禁止な」
「いやああああぁぁぁぁっ!!」
悲鳴を上げてその場に崩れ落ちるソニア。大げさ? いやいや、とんでもない。最大の娯楽を、最大級の幸福を奪われたに等しいのだから。
そして、終始空気だった職員は、いつの間にか姿を消していた。その場には、「ごめんなさい」という書き置きが残されていたが、その真意を知る者は誰もいない。
どうでもいいが、ボブはその時、お星様とお花畑を見ていたと言う。
元メイド長+専属メイド+残念系メイド+ビッチメイド+失格メイド+吸血鬼+淫魔+わんこ=ソニア。何だそれ。そして、これからもガンガン増える可能性があるって言う……属性多すぎね? まぁ、ほとんどメイド関連なんだけど。
えっ、ボブ? 霧也の強さを誇示するための尊い犠牲だよ。まぁ、ボブの強さが描写されてないから比較対象にならないんだけど。ボブ、あいつは良い奴だったよ(遠い目)。……いや、死んでないけどね?




