いただきますはちゃんと言いましたよ?
建物の中に入り、川田さんは俺が横に来ると、ニカッと笑い親指で奥へと続く通路を指し歩き出した。
歩みの遅い俺を気遣ってくれたんすね、ありがとうございます。
「あの、川田さん」
俺は横を歩く川田さんを見上げて話そうとすると川田さんが人差し指を口にあて、
「部屋でもうチョイゆっくりしてから、な!」
最後の『な!』のところで自然とウィンクかます川田さん…胡乱な目で見上げてしまった俺は悪くない。
でも、実際まだ俺の声が少し震えていたのがわかったんだろうな…。感謝。
俺が進む通路の左右にはいくつも扉があり、時々開いている扉がある。自然と視線が開いてる扉の向こうへとキョロキョロと動く。その動きが面白かったのかケラケラ笑いながら川田さんが先にある開いてる扉を指す。
「あそこ俺の部屋ね~」
といいながらその扉の前を通り過ぎる。一瞬見えた部屋の中は…どっかで見たことあるような道具が所狭しと並んでいた。ジム…?
「身体鍛えたくなったらいつでもおいでね」
――――だから、最後にウィンクはいらないって…
しばらく進むと大きな扉の入り口があり、両扉の片側だけが開いていてその中へと入る。
そこは途中あった部屋よりも断然広く、たくさんの机が並んでいた。入り口入って右側はカウンターがあり、その奥で数人が作業をしている。なんか良い匂いがそちらから漂ってくる。ハラヘッタ…
グリュウウウウウ~
「あっはっはっはっは、腹減ってるのか。よし、食べてから話すか!」
後ろから、眼鏡サラリーマンの声がした。匂いにつられてカウンターのほうに身体が向かっていたみたいで、振り返ると部屋の奥で眼鏡サラリーマンが一番大きな机のところに座って笑いながらこちらを見ていた。
「食欲あるならもう召還酔いも大丈夫かな?」
あ、杖持ってた人が俺の様子を見ながら寄ってきた。
「でも、一応食べる前にこれ飲んでね?」
と、コップを渡される。あ、温かい。俺はコップを受け取り礼を言うと、川田さんに眼鏡サラリーマンの横の席へ座るように連れて行かれる。
すると俺たちが入ってきた扉から、素手で戦ってた人が入って来て俺に毛布を被せてくれる。
あ、この人女の人だったんだ…平らだから男の人かと思ったけど近くで見たらわかるな。などと失礼なこと思ってたら相手にもばれたみたいでこめかみグリグリされた。体調悪いってことですぐにやめてくれたけど、これからは気をつけよう…っう ニ ラ マ ナ イ デ ク ダ サ イ 。
受け取った飲み物は甘くて温かくてほっとした…この部屋に来るまでにだいぶ落ち着いたと思ってたけど、まだ身体に力が入ってたんだな。飲み終わってやっと力が抜けたように感じた。
「はい!これ食べて、体力回復しよ~な」
と、ウィンクとともに川田さんが両手に4皿の大皿を持って現れた。
ドンッと置かれた各皿は、大量に食べ物が盛り付けられていた。どの皿に盛っている料理もすごく良い匂いがする。その後も次々と料理を持ってきてくれる。
トンカチのおっちゃんが大量の飲み物を持って俺の正面に座り、皆の前に飲み物を配ってくれる。「子供はこれな!」と俺の前にも飲み物を置いてくれた。
おっちゃんは美味しそうに泡の出てる飲み物をゴクゴク飲んでる。
「お茶飲むんじゃなかったっけ?」
と、川田さんがおっちゃんの横にひょいっと座って同じ飲み物を飲み始めた。
「飯食う時はこれなんだよ!」
おっちゃんは川田さんの突っ込みに対して、フン!と鼻を鳴らして答えた。
俺はそんな話を耳では聞きながら、もう俺の目は目前の食べ物に釘付けだ。
皿と箸は眼鏡サラリーマンが渡してくれたので、そこから俺は食べた。
「ふぅ~~~~」
腹いっぱい! ウ マ カった~~~~!!
俺は椅子の背もたれに寄りかかり、満足に膨れた腹を撫でながら一息ついた。
あれ?なんか静かだなと周りを見渡すと、皆が俺に注目している。あ、トンカチのおっちゃん飲み物が口から垂れてるぞ。
すると横の眼鏡サラリーマンからクックックッと堪える様な声が聞こえて、いっせいに皆が笑い出した。
「おっ、おまっ、だっはっはっはっは」
垂れたもの拭いてから笑ってくれ、トンカチのおっちゃん。正面に座ってる俺に飛ぶ!
「ふふっ、これだけ食べれたらもう大丈夫、太鼓判」
杖の人、心配してくれてたのね。優しい。
「うっわ~~~ちっせぇのに何処にそんだけ入ったんだ?すごいな!ぶふぁっ」
川田さん、あなたとは後できっちり話すことが出来たようですね。
「頬袋でもあるのかしら?あはははっ!」
素手のねぇちゃん、頬袋って小動物ですよね?…ア ナ タ モ カ !!
「くっくっ、育ち盛りなんだ、これぐらい食うよな、くっくっく」
よくわかってらっしゃる、眼鏡サラリーマン!!そうだよ、育ち盛りなんだ、これぐらい食うんだよ!!
「ってか、みんな笑いすぎ!!これぐらい普通に食べるってっ!!!」
俺は大いに講義したい!!だってまだ昼飯食ってなかったし!しかもさっき吐いたのって腹に残ってた朝飯だろ?だったら俺は朝飯食ってなかったって事と同じになるだろ?てことは、めちゃくちゃ腹へっててもおかしくないわけで。
そんなことを、未だに笑い続けてる皆に立ち上がって講義した。
…更に爆笑されたのは何故だ。
なかなか進まない…。川田にぃちゃんしか名前出てきてないけど、次こそは皆の名前を紹介できるようになるかなぁ…?(予定という名の未定)