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043「目覚める幼女」

ちょっと短め。

 背後から攻撃の気配。

 ひらりとその場を離れる銀狼。

 着弾とともに撒き散らされる暴威。


「……飽きた」


 ポツリとこぼれた私の言葉。


「いや、飽きた言うてもねえ」

「だってさ、攻撃単調だし、解決策浮かばないし。もう現状維持で良くない? 二日もすればみんな、第三領域抜けるでしょ」

「二日走り続けるのはボクなんだけど!?」


 カミサマは睡眠いらないでしょ、と思ったけど、それを言うのは流石に自重した。というか曲がりなりにも命の危機に直面しながら眠りたくない。

 なんかカミサマがジト目だけど、気にしたら負けだよね。


「で、解決策として新しい魔法を習得してみました」

「はっ!?」


 驚きの声を上げるカミサマに構わず解説を始める。


「まず一つ目は《索敵》だよ。これは《探知》の改良版で、範囲内に存在する生物全てじゃなくて敵意を持つ相手だけを発見できるようにしたみたんだ」

「……へ、へぇ」

「で、もう一つは《領域》。生物に限らず、無機物を含めた全てを知覚できるようになったよ。範囲狭いけど」

「…………一応言っておくけど、新しい魔法の開発って歴史に名が残るレベルの偉業だよ」

「この世界のレベルが低いんじゃない?」


 いやあ、日本の妄想力って偉大だよね。ていうかこの世界、感知系統の魔法がなさすぎるんだよ。なんで冒険者なんて職業があるのに警戒の魔法がないのさ?

 戦争だって戦術のせの字とないし、おかしいと思う。


「それはあれだね……先史文明から継承した知識が虫食い状態だったからだろうね」

「無ければ作ればいいじゃない」

「それが出来る方がおかしいんだよ」


 はあ。そういうものなのかな。


「そういうものだよ」

「そういうものなんだー」


 とりあえず、せっかく作ったのだから《索敵》と《領域》の魔法を連発してみた。

 敵意があるのは……アイツだけだね。他の魔物は引っかからない。で、《領域》の方は、これはすごい。半径500メートルくらいの範囲の情報が頭に流れ込んできた。


「ッ、くぅ〜」


 情報過多で頭が痛い。涙目で頭を抑えながら、手に入れた情報を伝える。


「右前方、400メートルくらいのところに隠蔽の結界があるよ」

「隠蔽の?」

「うん。何が隠してあるのかまでは分からないけど」

「何故分かったし」

「原理まで話すと長いので却下。それよりどうする?」


 目の前で突然標的が消えたら、私ならどうするか。

 当然、何か仕掛けがあるのだと思ってその場を調べる。

 逃げ切るのではなく、この結界をうまく使えば、時間を稼ぐことがてきるのではないだろうか。


「このままだとジリ貧だからね。中に入ってみようか。もしかしたら、役に立つものがあるかもしれないし」

「そうだね。では、全速力だー!」


 アイツの知覚範囲は数キロあることだし、500メートルくらいは引き離しても大丈夫でしょ。

 一気に加速し、結界が張られている場所に近付くと、僅かにカミサマの進路が変わった。


「カミサマ、もう少し右」

「……え? ああ、本当だ」


 どうやら隠密、というか人払いの効果に呑まれかけたようだ。

 魔法が管轄ではないとはいえ、上級神の一柱であるカミサマにまで効果のある結界って、一体なに!?

 というか、なんで私は大丈夫なんだろうね。ルルの魔法もそうだけど、私の魔法耐性は一体どこから……?


「グルァ?」


 結界の範囲内に飛び込むと、追ってきていた化け物が戸惑いの声を漏らした。効果はきちんと発揮されたようだ。

 皆と別れてからずっと感じていた背後からの圧迫感が消え、安堵のため息を漏らす。

 カミサマが守護してくれるから死にはしない。

 そんなこと言ったって、私の本質は平和な現代日本で暮らしていた一般人だ。戦うのは怖いし痛いのは嫌だ。


「さて、問題は……」


 カミサマの背中から降りると、カミサマは銀狼から少年の姿へと戻る。


「ここが一体何なのか、ってことだね」

「うん。《魔の森》の奥にある、カミサマすら騙す結界。これだけでも不思議なのに……っていうか、そんな結界の中にこんなのがあるから余計に不思議なんだよね」


 私は、目の前に広がる建物に目を向ける。

 白亜の石材で作られた、アテネの神殿を思わせる巨大遺跡。

 そ広間の中央には巨大な祭壇があり、そこに、一人の少女が横たわっていたのだ。



 ◇◆◇



 確実に厄介事である少女の事は一先ず置いておき、遺跡の中で一息つく事にした。

 幸いというか、張られている結界は外部からの知覚のみを遮断するもので、内部から外部を見る分には何の問題もない。私の《索敵》も機能するのでアイツがまだいるのかどうかの確認もできる。

 恐ろしく高機能な結界だった。


「……はあ」

「どうかしたの?」


 思わずため息が出る。数日とは言え、図書館に引きこもって必死で無属性魔法について学んだのだが……この結界は、仕組みの一端すら紐解けない。いくつかオリジナルの魔剣の作成に成功し、カミサマに褒められて伸びていた鼻っ柱を叩きおられたようだ。

 ……命の危機、街の危機に関わらず、そちらに目が行く職人気質にも苦笑を禁じ得ないけどね。


「なんでもない。で、これからどうしようか?」


 一番の問題は、あの祭壇で眠る少女である。

 彼女が一体何者なのか、それが分からなければどうしようもない。


「カミサマ、あの魔法陣解析できないの?」

「あー……うん、出来る。っていうか、もうやった」

「はあ!?」


 何それ!?


「その、ごめん。で結果だけど、あれは眠りの魔法陣だね」

「あ、うん。いいけど。……詳しくお願い」

「簡単に言えば、内部にある生物を眠りに導いて仮死状態にする効果があるよ。体の成長も止まるから、いつまでもそのまま。効果としては封印と似てるかな……。違うのは、この魔法陣は封印よりも簡単な代わりに、内部からしか魔力を注げないから眠らせる対象が自分以外選べないってところ」

「ってことは、あの女の子は自発的に眠りについたってこと?」


 私の問いに頷いて答えるカミサマ。

 それを聞いて、私はますます混乱する。

 自発的に封印するって何!? そんな物好きいるの!?

 ……と。

 ただ一つ安心したのは、彼女が魔王だとかいう最悪な可能性は消え去ったということだ。

 伝承では、魔王はこの世界のどこかに、勇者によって封印されたという。ということは、魔王に使われた魔法陣は封印であって眠りではない。


「解くことはできる?」

「できるよ。眠りの魔法陣は簡単な分、魔力の許容量が少ない。全く隙のない完璧な陣だけど、アリサちゃんの魔力量ならオーバーフローで破壊できる」


 ……それ、中の人大丈夫だよね?

 ま、まあ、カミサマ言うなら大丈夫……なんだろう。こんなでも魔導レベル10だし。


 それで、しばらく悩んだ結果、眠りを解いてみることにした。

 彼女が何者なのかは分からない。敵になるか味方になるかも、分からない。

 だけど、あの化け物を私だけでどうにかするのは無理だ。カミサマも、『私のことを助ける』とは言ってくれても『アイツを倒す』とは言ってくれてないし。

 それに、原因を放置しておいたらまた同じことが起きるだろう。

 振り切ってしまえばいいと思っていたけど、落ち着いて考えたらそういう結論になった。

 第三領域まで進んでみて思ったけど、魔物の量が少ない。きっと、あの魔物の群れモンスターパニックで出尽くしてしまったのだろう。

 餌がなくなれば、アイツはどうする?

 別の場所に移動する、というのが答え。

 またそこで餌がなくなれば? また移動するだろう。

 その行先は?

 闇の領域へと戻っていくのなら良い。けれど、あり得ない。死ぬと分かっている場所に戻るような獣がいるはずがない。

 残るは、商業都市ベルギア。

 その先、独立都市リリア。

 この二つだ。

 だったら、この少女……幼女? に賭けてみるのも手だろう。カミサマの見立てでは魔王がいたとされる年代に生きた人らしいしね。今よりも強い魔物がいた時代の人なら、私たちよりも強い可能性が高いでしょう。


 とまあ、これが理由。

 そういうわけで、遺跡の地に描かれた魔法陣の上に手を置くと、一気に魔力を流し込んだ。

 膨大な魔力によって魔法陣がオーバーフローを起こし、バチバチと放電にも似た現象を起こす。


 そして、光が完全に収まった時、祭壇に眠る少女は、ゆっくりと目を開いた。

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