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013「ルルちゃんとデート」

9/10:ユーザーネームを変えたので、雪乃の部分を空明に変更しました。

 ちょうど、太陽が真上に昇った頃だろうか。

 建物の中からは分からないけど、お腹の虫が存在を主張し出した頃、ルルが膝の上で目を覚ました。

 誰も何も言わないのに、慌てふためくルルが可愛らしい。ある意味、このメンバーでルルが奴隷であることを一番気にしているのはルル本人だ。

 ……しかし最近、私の思考が「ルルは可愛い」一色になっている気がする。恋煩悩か、という感じだ。

 まあルルが可愛いのは事実だし、嬉しいので放置。

 ルルも起きて私も本を読み終えたので、図書館をあとにする。良くしてくれた司書さんに挨拶して外に出る。


「はー。半日ぶりの外だよ」

「はー……。三千年ぶりの外だよ……」

「……ごめん、もう驚けないや」


 武術スキルを習った時より長いんだ……。

 ちなみにスキルの名前は「魔導」らしい。当然レベルは10だ。全属性の魔法を最高位の魔法師並みに扱えるようになったと言っていた。

 でも、魔力と神力は違うものらしく、使えても実用に耐えられる訳ではないという。カミサマはこれまで通り、ポチ化か弓で戦うようだ。


「で、どうする? ボクとしては三千年頑張ってきたご褒美にちょっと休みがホシイナナンテオモッタリ」

「うん、これからルルちゃんとデートしてくるから休んでていいよ」

「ヤ、ヤッタネ。酒場ニイルヨ」

「……なんかごめん。本当にありがとね」


 カミサマに魔回路の開発スキルもお願いとか、口が裂けても言えないね。私の事情で、こんなになるまでやらせたくない。

 今日のデート、カミサマにはとびっきりのお土産を買って行ってあげよう。



 ◇◆◇



 さて、デートである。

 お相手は女の子であるが、デートである。

 打ち合わせも全くなく、サプライズ的に『命令』で連れ出した奴隷な相手だが、デートである。



 デート(英:date)とは、恋愛関係にある、もしくは恋愛関係に進みつつある二人が、連れだって外出し、一定の時間行動を共にすること。(wikiより抜粋)



 ここで重要なのは、性別が指定されてないところである。たとえ女の子同士で百合百合しい光景に見えても、好き合っている二人が一緒に出かければデートなのだ。


「ルルは私のこと、好き?」

「ふぇ!? わ、私は……」


 ちょっと確認。

 人差し指を唇に当てて上目遣い。男子ノーサツ用のあざとい仕草で聞いてみた。


「わ、私などがお嬢様のことを好きになるなどそんな烏滸がましいことーーーー」

「……じゃあ、嫌いなの?」

「そんなことっ」


 目を伏せて悲しそうに。全身から落ち込んだオーラを出してみる。

 慌てるルルちゃんが可愛かった。

 でも、私はそれでは満足しない。

 やっぱり、こういうのは直接聞きたいのだ。ルルに拒否権がなくて答えが分かっているとしても。


「どっち?」

「あ、あぅあぅ……。す……好き……ですっ」

「ありがとうーっ!」

「きゃっ」


 ガバッ! と、感謝を表すために思いっきり抱きついた。

 んー、やっぱりルルちゃん大好きだ!

 そんなルルちゃんには、お金持ちのご主人様が色々買ってあげちゃうぞっ。

 まずはこのお店!

 デートの定番・ランジェリーショップだ。

 ……はい、私の趣味です。ちょっと変態チックな親友ユリカと長い時間過ごしたせいで、色々私にも感染してるんだよね。

 直すつもりもないんだけどさ。

 てな訳で、ルルちゃんには勝負下着を幾つかプレゼント。脱がしちゃうから関係ないけどさ。

 その際にボディタッチが入ったり変な声が出たりと色々あったが、細かい描写は全年齢板につき割愛。

 どうしてもという方はR18へどうぞ(ありません。by空明さくしゃ)。

 真っ赤なルルちゃんを堪能させていただきました。



 ◇◆◇



 次に行くのはピンクのホテル……といいたいとこだけど、真昼間だから自重。代わりにちょっと高級そうなレストランだ。

 直接店主と交渉して、個別席×追加料金でルルの入店を認めさせた。金額は割愛。守銭奴どもめ。

 そこまでしてなお、一般席を通る時はフードを被れと言う始末。潰してやろうか。物理的に。

 そんな私の物騒な考えも、料理を幸せそうに味わうルルの笑顔に溶かされてしまうのだった。



 ◇◆◇



 腹ごしらえを終え、雑貨屋に。

 本当は服飾店に行くつもりだったけど、メイドコスのルルちゃんが最強無敵なので良し。毎日その服を着てください。

 洗う時は、ずっと裸でいいよ。

 私と一日中ベッドで過ごそう。

 雑貨屋では、置物を色々と見た。でも宿も決まってないから買いはしない。

 でも、恋人用のストローが二つ出ているコップは買った。

 言うまでもないが、私の趣味だ。



 ◇◆◇



 そして最後に、不動産屋。宿の斡旋とか売り家の紹介とかをしてる店だ。

 ルルちゃんとの愛の巣を……。グヘヘ。


「あの……お嬢様、涎が……」

「おっと失礼」


 いけないいけない。


「それで、どんな家がいいとかの希望はありますか?」


 この男、仕事人だ。

 私の涎を華麗にスルーして話を進める。流石である。


「そうだなぁ。まず、二人部屋とダブルのベッドがあること。お風呂が……まあ、これはなくてもいいや。一人部屋があること。あと……亜人差別がないこと」


 最後の一言は、ちょっとだけ威圧を込めた。一番重要なポイントだ。

 正直、ここだけ満たされればどんな宿でも構わない。


「……了解です。探してみましょう」


 男がパラパラと書類をめくる。さっと目を通し、手元にある全てを見終わると次の束へ。

 そして、三束目の中程まで目を通す。


「……これなどいかがでしょう」

「えーと、どれどれ。長期滞在者用宿屋『風来坊』。一月以上から」

「部屋の問題は、合致する部屋を取れば解決します。料金は別途で必要になりますが、風来坊には大浴場があります。さらに、亜人差別はほとんどないと考えていいでしょう」

「本当に?」

「はい」


 私の確認にも、男はしっかりと目を見て応じてくれた。


「ただ、欠点が一つ。これは亜人差別が少ない理由でもあるのですが……スラムに近いのです」

「スラムねぇ」

「はい。治安という意味では、決して良い物件とは言えません」


 治安、か。

 私とカミサマはいい。問題はルルの身が安全かどうかだ。

 一番戦闘力がないのはルルだから。


「一つ確認したいんだけど、ルル……私の奴隷が狙われることってあるかな?」

「いえ、それは考えなくてもいいでしょう。奴隷を手に入れても、食費などを用意できるものはスラムにはいませんから」


 むしろ彼ら自身が奴隷落ちすることの方が多いです、と男が呟く。

 やはり、スラムは奴隷の供給源の一つらしい。

 なら、私やカミサマが体目当てに襲われることもないか。来ても返り討ちだけど。


「じゃあ問題ないよ」


 そもそも、貴重品は物質収納ストレージ無限収納インベントリだ。殺す以外に奪う方法がない。

 とりあえず、案内してもらう。見なきゃ分からないことも多いからね。



 ◇◆◇



 宿屋『風来坊』。

 スラムの近くという立地の弱点はあるが、設備、食事とともにこのリリアの街最高峰を自負している。実際、食べてみろばかりに出された一品は非常に美味だった。

 また、この宿は、『誰であろうと客は客、区別はしない』というスタンスを貫いている。金が払えるなら亜人でも泊まれるし、悪い態度を取れば、相手が亜人だろうが、その人が人族であろうが関係なく叩き出される。

 店主の快活な性格もあり、個人的に非常に好感の持てる宿だった。


「それで、どうするんだい? うちに泊まってくれるなら、代金は三人で一月銅貨三十枚だよ。亜人を泊めるのには苦労するだろうし、悪くないと思うけどね」

「そうだね。ここに決めたよ」


 にっこりと笑ってそう告げると、店主のおばさん……もとい、お姉さん(本人談。実年齢不詳)はガハハと笑った。


「はい毎度! 三人部屋でいいのかい?」

「ダブルを一つとシングル一つでお願い」

「はいよ! なるほど、あとの一人は嬢ちゃんの良い人かい」

「いやいやいやいや」


 側から見るとそうなのは分かるけどさ。

 私とカミサマが付き合うとか、ないよ?


「ダブルは私たちが使うんだよ」

「……まさかアンタ、そういう趣味が?」


 ドン引きしている店主にルルがオークに捕まっていたことを耳打ちする。

 だから、ルルは少し不安定だとも。


「……なるほどね。変なこと言って悪かったよ」

「いや、分かってもらえれば良いんだよ」


 ニコニコと笑う私。

 実際には、しっかりと見抜かれていたことに内心冷や汗である。


「すぐに入るかい?」

「ううん、晩ご飯を外で食べる約束をしてるから、そのあと来るよ」

「ん、承知したよ」


 私とルルは不動産屋の男に頭を下げるとギルドの酒場に向かった。

 そこで私は、見覚えのある男と再会する。

 その男は、首に隷属の首輪をはめられていた。

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