第5話 ユイトの罠
「いやぁ、ご迷惑をおかけしました」
いけしゃあしゃあと言うユイトの笑顔を、サナは睨みつけた。
第一発見者だという客人と話をしていたのはユイト。
何の話をしていたかは分からないが、第一発見者の彼は、取り乱していたところをユイトに話を聞いてもらったことで落ち着いたのだと感謝していた。
何かがおかしい。
ミキもその人も、口々にユイトに感謝を述べるのだ。笑顔で。
「つかぬ事をお伺いしますが、あなた方は…何者なんですか?」
「ん?」
サナが淹れたお茶を飲むユイトは笑みを崩すことなく、首をかしげた。
「何と言われましても…しがない旅行者ですよ?」
「…カナタ様はどこにいますか?」
どうやら教えてくれるつもりはないらしい。
サナは諦めて別の話題に切りかえた。
カイトの居場所は部屋に戻ったら教えると言われたのに、それも教えてくれる気配はない。
「いやぁ、やはり、サナさんのお茶はおいしい」
「聞いてますか?お客様は外出禁止になっているんです」
「ええ、そうでしょうね」
ユイトは別に驚きもしていない。
まるで最初から知っていたかのように。
「大丈夫、すぐに帰ってきますよ」
「帰ってくるって…」
『ガラッ』
「ほら」
思わぬところから音が鳴ってサナは顔を上げた。
「今戻った」
「え⁈」
現れたカナタは庭に面する窓を開けて部屋に入ってくる。
「ああ、お帰りなさい。サナさんがお茶をいれてくれてますよ」
驚くサナとは反対に、眉をピクリとも動かさず、席に着く。
何事もなくお茶を飲む姿にサナの思考はついて行けない。
「え、あの、どこから…?というか、どこに行ってたんです?」
「隣の部屋」
「隣の部屋って、え⁈」
つまり、隣の、事件があった蘇芳の間に?
「あの、立ち入り禁止にしたのはあなた方の指示では?」
「私達は別です。関係者ですしね」
「関係者?」
ユイトがケラケラと笑いながら言うが、訳が分からない。
サナは思考を整理しようとするが、とん、と新たな湯飲みが置かれた。
「さて、サナさん、お話をしましょう」
ユイトが急須を掴んで、三つ目のお茶を淹れた。




