第63話 ギミックの先
「ハァ……ハァ……ハァ……」
流石に疲れた。
俺は倒したリザードマンの上に座り込みながら荒い息を整える。
あれから現れた魔物を殲滅したところ、なんと池の水位が突如として下がったのだ。
そこからそれらしき木を見に行くと、新たに♢の記号が浮かび上がっていた。
その段階で俺はウェーブ戦のような感じなんだと察し、速攻で攻略するべく動き出したのだが人狼が居たダンジョンの防衛戦が脳裏をよぎるほどには危うかった。
何せ出てくる魔物の数が倍々に増え、最終的には最初の十六倍の数になっていたのだからな。
とはいえ防衛戦とは違い守るものが無かったので自由に動くことが出来、あの時と比べると幾分かましだった。
そして現在は池だった場所の水は全てなくなっており、下へと降りる螺旋状の階段まで現れている状況だ。
「流石に少し休んでから進みます。後このギミックを外の人達に伝えておいてもらえると助かります」
≪いやいやいや、無理だろこれ! 明らかに一人で攻略できる数じゃなかっただろ≫
≪そもそも複数人で挑んだとしてもあの数に包囲されて対処できる人間が今の日本に一体何人いるんだって話だよ≫
≪問題はこの数が攻略する人数によって変動する場合だろ。仮に複数人で挑んだ場合それに比例して最初の魔物の数が増えるならまずもって狐さんと同じ場所に到達できる人は俺の知る限り日本には居ないぞ! 配信とかしてない実力者が居た場合話は別だが……≫
俺の言葉にコメント欄にはそのようなコメントが流れる。
俺としては肉体的にも疲れたのはそうだが、次に行く前に使ったMPを多少回復しておきたいというのが本心だ。
そう思いながら俺はステータスを確認する。
★
名前 久遠 宗太
職業 魔法戦士
レベル 16
HP 54/65
MP 13/74
攻撃力 82
防御力 66
敏捷性 77
魔力 64
ステータスポイント 25
▼称号
【最強へと至る資格】【先駆者】【踏破者】【ネームドキラー】
【ジャイアントキリング】
▼スキル
UP[剣術 LV3][短剣術 LV1][盾術 LV2][格闘術 LV2]
UP[投擲術 LV2][火魔法 LV2][水魔法 LV1]UP[土魔法 LV2]
[風魔法 LV2][氷魔法 LV1][身体強化 LV2]
New[魔力操作 LV2]New[魔力放出 LV1][氷結武装 LV1]
New[気配感知 LV2]New[魔力感知 LV2][斬撃耐性 LV3]
[刺突耐性 LV3][打撃耐性 LV3][痛覚耐性 LV3]
[精神耐性 LV3][衝撃耐性 LV1]
New[属性付与]
★
これだけ倒して1レべしか上がらないのか……
明らかに15レベルを超えてからレベルが上がりづらくなっている。
とはいえ制限が解除されたことでステータスの伸び自体は良くなっていそうな気がする。
ただ敏捷を除いてだがな。
何せ敏捷は14レベルの時と比べても2しか上がっていない。
考えられるのは職業に対して適性のある能力値は上がり幅が大きいとかなのか?
そう考えれば他のステータス値の上がり幅はわからなくもない。
けれどまだ正確な事を断言できるだけのレベルアップをしてないから何とも言えないがな。
俺はそう思いながら軽く目を瞑り、瞑想するかのように回復に専念する。
「……そろそろ進みます」
どれぐらい経ったのか正確な時間はわからないが、ステータスのMPが40を超えたのを確認してから俺はそう言って元池の中に現れた螺旋階段を下りる。
≪動き出すまで結構かかったな? 何か準備でもしてたのか?≫
≪魔法も使ってたから恐らくMPの回復を待ってたんじゃないだろうか?≫
≪ていうか狐さんて魔法何属性使えるんだろう? 他の魔法を使える人の配信とか見てたけど、多くても二属性ぐらいだったんだよね≫
≪人狼と戦ってた時に人狼が「まさか三属性とはな」みたいなこと言ってたから三属性は使えるんじゃない? 土を操ってる以外は詳しくはわからないけど≫
≪恐らく風も使えるんじゃないかな? あの剣を振った先の相手が斬られてたのって風を操って飛ばしてたとかそういう事なんじゃないかと予想してる≫
「因みに外の状況がどうなってるか知ってる人いますか?」
俺はコメント欄が俺の能力を予想する流れになったのを見て、話題を変えるためにそう言う。
予想されるのは正直仕方ないが、俺の見えるところでされるのは余りいい気はしない。
しかもそれが的を得ていれば尚更だ。
≪☆外はダンジョンから出てくる魔物が少し落ち着いてきて、狐さんの配信から得られた情報をもとに中に入るかどうかの話をしてるところです。ただ全員で入るのではなく選抜したメンバーで入るという方向で話が進んでいるので、入るにしても回復や装備の修理等があるのでもう少しかかると思います≫
想像していた以上に詳しい情報が来て俺は少し驚く。
ただそうか……入ってくる方向で話が進んでいるのか。
他の人がどれぐらい戦えるかはわからないが、正直厳しいと思っている。
仮に入ろうとしているのが水野さんだったとしてもこの考えは同じだ。
数はそれだけで圧倒的な力だ。
ある程度まとめて敵を倒せるスキル等が無ければスタミナが持たず、ジリ貧になる可能性がかなり高い。
俺の場合ほとんどリザードマン以外は魔法や[魔力放出]等でまとめて処理してたしな。
それでも尚あそこまで疲れてたんだ。
「……どこから確認できているのか知りませんが、殲滅力のあるスキル持ちが居ないのであれば、ダンジョンに入るのは考え直した方が良いと伝えてくれませんか? 失敗に終わる可能性が高いので」
≪☆わかりました。その旨伝えておきます≫
≪やたら詳しい奴だな? もしかして現場に居る奴なのか?≫
≪現場の人間も見てます、と≫
≪そう考えるとこの配信システム情報共有のシステムとして優秀だよな。何せリアルタイムで中の情報を正確に伝えることが出来るって事だもんな。ギミックに関しても話で聞くのと映像で見るのとではかなり感じ方違うだろうし≫
とそんなコメントが流れる中、俺はこのダンジョンに他の人間が入らなくて済む様に祈りながら、速足気味に階段を下りていく。
ーーーーー
「…………」
螺旋階段を下りきった先の光景に俺は言葉を失う。
死屍累々。
そんな言葉が咄嗟に浮かぶような光景。
鍾乳洞のような場所に無数の魔物の死体が散らばっており、しかもその魔物達の血がそこらじゅうに飛んでいる。
そしてそんな中で大きな咀嚼音と共に散らばる死体に喰らいつく一体の魔物……
その魔物は今までに戦ったリザードマンのような見た目なのだが、ただ大きさがまるで違う。
今までのリザードマンは大体二メートルぐらいの身長だったのに対し、目の前に居るソイツは倍以上の大きさをしている。
しかも返り血の所為なのか、全身真っ赤に染まっておりより異様な雰囲気を感じさせられる。
とそんな事を思いながら見ていると、急に魔物を食べるのを止め俺の方を見てくる。
こちらを見て来たリザードマンの目は周囲が薄暗いせいなのか、真っ赤な光を放っている。
「……にん、げん。ここまで……たどり、ついた……か」
「!!」
一瞬同じ言葉を喋った事に動揺するが、即座に人狼の事を思い出し冷静になる。
魔物が喋るのは別に初めてじゃないんだ……
とはいえ人狼ほどしっかりとした感じじゃない。
片言で何とか喋れているという感じだ。
「何故同胞を食ってるんだ」
「どう、ほう? なにを、いっている? こいつらは……おれの、ちからだ。くえば、くうほど、ちからになる」
「何を言って……!」
俺はそこまで言いかけてハッとした表情で言葉に詰まる。
まさか……まさかとは思うがコイツ、魔物を食ってレベルアップしてるって言うのか!?
いや、そんな事があり得るのか?
クソ! わからん!!
ただ力……レベルアップでないにしても魔物を食う事で強くなれると言いたいんだろう。
今の強さはわからないが、態々強くなるのを待ってやる必要はない!!
俺はそう思い武器を構える。
直後凄まじい衝突音が聞こえたかと思うと、少し遅れて顔の横に風圧を感じる。
正面の真っ赤なリザードマンの手に持っていたカエルの魔物が居なくなっているのを見て、俺に向かって投げたのだと察する。
全く見えなかった……
これは不味い!!
俺は咄嗟にそう思い[魔力操作]で全身、特に目を強化し更には[身体強化]も発動する。




