第59話 突入
「キリが無いな」
俺は新たに倒したリザードマンを横目にダンジョンの入り口を見つめそう呟く。
あれからかなりの数のリザードマンを倒したが、一向に数が減る気配が無い。
その理由はわかりきっている。
倒しても倒してもダンジョンから新たに魔物が出てきているのだ。
とはいえ俺と水野さんが無線でリザードマンに関する情報を共有した事によって当初の危うさは無くなっている。
因みに俺が共有した情報はリザードマンの体は何らかの力で覆われており、通常の攻撃ではあまり効果がない事。
そしてその力は決定打になりうる攻撃を喰らいそうになるとその個所に集まりより強固なものになる事。
ただその際に意識外から攻撃すれば通常の攻撃でも有効であり、更には内側からその力が集まっている場所を攻撃し打ち破れば一時的にその力が無くなることを伝えた。
そして水野さんからは気付かれていても同時であれば二か所は守れないという情報が伝えられた。
ただこれらにはリザードマンが反応しなければという枕詞が付く。
相手は案山子じゃないんだ。
こちらの攻撃を見て反応して攻撃してくるし、防御もする。
例え同時に攻撃しようと片方を体で受け、もう片方を盾で受ければいいだけの話だからな。
つまり俺達の言った事を一人で実践するには、相当な技量が必要という事だ。
それなのに今戦場から当初の危うさが無くなっているのは戦い方を変えたからだろう。
先程までは三人一組でリザードマンを倒すために動いていたのを、進ませない……その場にとどめる動きに変えたのが大きいだろう。
そしてリザードマンに対して決定打を与えられる人間が動きその場に駆けつけ攻撃を加える。
勿論それは防がれるのだが、同時に他の三人が有効打を与え倒すという方向にシフトしている。
ただ俺や水野さんみたいに一人で倒せる例外も中には存在する。
そう言った動きと更には続々と駆け付ける戦える人達のおかげで、何とかダンジョンの入り口付近より先に戦線が広がるのを防げているのが現状だ。
とはいえそれも無限に続けられるわけではない。
無尽蔵に出てくる魔物に対して、俺達のスタミナや人員は有限だ。
余裕がある内に打って出なければ後々後悔するのは目に見えている。
ただそれが出来るのは一人でリザードマンを相手に出来る例外的存在なわけで……
更にダンジョンの中がどうなってるかわからない以上、色々な状況に対応できる人間でなければならないとなってくると自ずと答えは出てるわけで……
「……キリがないのでダンジョンに入ります」
『俺もついていこう』
無線で伝えた言葉に即座に水野さんがそう答える。
正直水野さんなら背中を任せられそうだから来てくれるなら助かる。
ただそうなるとダンジョンの外、この戦場を安心して任せられる人間が居なくなるわけで……
「気持ちは嬉しいのですが水野さんにはこちらをお任せしていいですか? もしかしたら誰かがダンジョンに入ることによって魔物の動きが多少変わる可能性もあるので」
俺は無線で最もらしい理由を伝える。
だが実際は不安だからに他ならない。
俺が抜けてもこの状態が本当に維持されているのか? と。
仮に俺がダンジョンを攻略して戻ってきたとき、辺り一面焼け野原になんてなってたら何のためにダンジョンを攻略したのかわからなくなってしまう。
その点水野さんが居てくれれば何とかしてくれるだろうと安心して進む事が出来る。
勿論一人でダンジョンを攻略するのにも不安はあるが、正直それは今に始まった事じゃない。
『確かに一理ありはするが……』
「頼みます、水野さん」
『……少年がそこまで言うならわかった。ただこちらがある程度片付いた後は俺の自由にさせてもらうぞ? 後中に入ったら配信はつけろよ? 中の様子を入る前に知っておきたいし、それに少年に何かあれば頼みなんか無視して助けに動くからな?』
「わかりました」
俺は心配そうにそう言ってきた水野さんの言葉にそう答える。
元々ダンジョンに入れば配信はつけるつもりだった。
今後の為にもダンジョンブレイクした中の映像は共有しておくべきだ。
それで助かる命があるかもしれないからな。
俺はそう思いながらダンジョンの入り口に向かって走り出す。
『我々の力不足の所為で少年に全てを任せるような形になり、大変申し訳ありません……ですがどうか……どうか……頼みます』
誰かはわからないが突如涙ながらに聞こえてきた無線の切実な声。
「任せてください」
俺はそれに対してダンジョンの入り口の前に居たリザードマンの湾刀による攻撃を避けながらダンジョンに飛び込む。




