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現実世界にステータスが現れたので、何が何でも最強を目指します  作者: 黄昏時


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第52話 教え

「フン!」


 水野さんはそう言いながら大きく一歩を踏み出し、木刀で上段から斬りつけるように振ってくる。

 それに対して俺は木刀を両手で持ち、少し傾けながら横にして受け止める。


「うっ!」


 ただ予想していたよりも重い攻撃に思わず声が漏れる。


「力を逃がす判断は悪くない。ただこうも綺麗に流すと返す刀も速いぞ?」


 水野さんはそう言いながら受け流された木刀の勢いを殺さず、流れるように俺の左横腹めがけて振ってくる。

 それに対して俺は木刀を縦にして、木刀の先の部分に左腕を当て受け止める。


「やはり咄嗟の判断力が異常だな。本当に武術の経験はないのか、少年?」

「そうです、ね!」


 俺は水野さんの言葉にそう答えながら、受けた木刀を力尽くで押し返す。

 それに対して水野さんは抵抗することなく力を受け入れ、更には左足を軸にして体を回転させながら自身の力を乗せて勢いを増しながら俺の逆サイドに木刀を振ってきた。


 俺はその攻撃に対して受けるのではなく、後ろに跳び距離を取ることで回避する。


「やはりあの訳の分からない武器の出し入れや魔法等の遠距離攻撃手段が多いせいか、距離を取る癖のようなものがついてるな。恐らく手加減せずにこれが本当の実戦だった場合、ここで魔法やら武器が飛んでくるんだろうな」


 水野さんの挑発するような言葉に俺は思わず眉間にしわを寄せる。

 実際水野さんの言ってることが正しいだけに何とも言い返せない。

 これが実戦だった場合、水野さんの言った通りここで恐らく俺は魔法を使っていた。


 何せ距離を取り、俺には遠距離からの攻撃手段がある。

 ならばその有利を活かすのは当たり前だろう。


「やはりまだ若いな。そんな若者に道を示すのが年上の務めでもある」


 水野さんはそう言うと、先程と同じように俺に対して距離を詰め木刀を上段から振り下ろしてくる。

 先程と全く同じ攻撃に俺は多少驚きながらも先程と同じように木刀を両手で持ち、少し傾けながら横に持つ。


 そして俺の木刀に水野さんの木刀が当たり同じような流れが繰り返されるかと思った瞬間、突然水野さんの木刀が軌道を変え俺が木刀を構える方とは逆側に振り下ろされた。


 余りにも速い動きに反応が遅れ、水野さんの木刀が俺の右肩に直撃する。


「おいおい、どうなってるんだ? 痛みで木刀を落とすと思ったんだが……痛くないのか、少年?」

「いえ、痛いですよ」


 水野さんのそんな驚いたような声に俺はそう返す。

 確かに痛くはある。

 ただ正直、多少痛みを感じるって程度だ。


 恐らく木刀で叩かれたので打撃判定になったのだろう。

 そして[打撃耐性 LV3]と[痛覚耐性 LV3]が発動しほとんど効いてない感じになったのだろう。


「ダンジョンを攻略していればここまで変われるのか……」


 水野さんはどこか険しい表情でそう漏らす。

 恐らく色々と思う所があったのだろう。

 水野さんは手に持つ木刀を腰に差し俺を見据える。


「まぁ正直効いた効かないはどうでもいいんだ。今の攻撃で俺が少年に伝えたかったのは、成功体験に囚われるなという事だ。相手は同じ動作を繰り返すロボットじゃない。感情で動き思考する流動的な生き物だ。相手が全く同じ攻撃をしてきたのなら何らかの打開策があると考え、受け方を変えるか別口の手段を用意しておくべきだ。とはいえこれが実戦なら少年の場合恐らく咄嗟に木刀を捨て、盾を出して受け止めていただろう」

「はい」


 俺は水野さんの言葉に素直にそう答える。

 確かに反応が遅れて攻撃をもろに受けてしまいはしたが、それは木刀のみで対処しようとしたからに他ならない。


 水野さんの言う通り木刀を捨て指輪から盾を出していれば容易に受ける事は出来たし、魔法を使っていれば攻撃をはじくことも出来ただろう。


「ただそれが配信を見てただけの俺に予想出来てしまうのが良くない。今までその戦い方で負けなかったが故に、戦い方が少しワンパターン化し始めている。攻撃を受けたら距離を取り遠距離攻撃、そして距離を詰めて攻撃を当てまた距離を取り遠距離攻撃……それではあまりに単純すぎて読みやすすぎる。戦いとは効率ではなく、如何に相手に択を迫れるかの心理戦だ。勿論、圧倒的に力の差があれば話は別だが……今後もそうだとは断言できないだろう?」

「……はい」


 俺は水野さんの言葉に真剣に考えながらそう答える。

 言われてみれば最近の俺は最初と違い無意識的に戦いに効率を求め始めていた。

 態々斬り合って命を危険にさらすより、より安全に遠距離から魔法を撃ち消耗させて倒す……と。


 ただそれでは成長できない。

 水野さんの言った通り、それが通用するのはこちらが優位である場合のみだ。

 格上相手には通用しない。

 それどころか無駄にMPを消費してジリ貧になるだろう。


「なら今の俺みたいに攻撃を読まれている前提でフェイントとして使うなり、受けられる前提で同時に別の攻撃を準備しておくなりするべきだ。恐らく戦いの中でそうなることはあっても、最初からそうしてることは無いだろ?」

「はい」

「少年の場合迫れる択はかなり多いんだから、それを有効活用すべきだ。しかもそういった無数の択を迫る戦いが、咄嗟の状況での判断力がある少年には向いてると俺は思うから尚更な」


 水野さんはそう言いながら俺から距離を取るように歩き出す。

 

「そしてこれもそんな少年の一つの選択肢として組み込んでくれると嬉しい」


 水野さんはそう言いながら姿勢を低くし、腰に差した木刀に手をやる。


「まずここで自身の発動するスキルを意識するんだ。俺の場合[抜刀術]のスキルを意識しスキル発動の感覚を感じ取る。……そして感じ取ったスキルの感覚に自身の思い描く力の動線を合わせ、乗せる事で……こうなる!!」


 水野さんがそう言いながら力強く木刀を振り抜くと、振り抜いた軌道上に青っぽい粒子のようなものが流れ、そして木刀自体も青白い光に包まれている。

 ただ水野さんの言葉に俺は頭が?になる。


 うん?

 スキル発動の感覚?

 魔法関係ならわからなくもないが、武器系統のスキルに関しては使うという感覚は無くむしろ自動で効果が発動してる気がするんだが……どういうことだ?

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