表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ライフレーン

作者: 右手の光明
掲載日:2025/12/24

 とある電車は、少々年季の入った風貌で、今日も人を乗せて運行する。

 木枯らしで紅葉が散る様と高く登った太陽を背に、扉から一人の人物が現れ、一番近くの席に腰を下ろす。その人物は、辛うじて人の形を持っているが、どうも定まらないでいる。

 電車は何事もなく走り始め、乗客のいない車内に、レールを転がる車輪の音が大袈裟に反響する。駅はまだ先にあり、顔を外に突き出しても見える気配はない。

 外に広がるのは、田畑に挟まれたコンクリートの道、疎らに並んだ枯れ木、遠く方には山が見え、少しの緑を含んだ茶色が一面を飾っていた。

 駅が近付くにつれて、少しずつ自家用車が映るようになるも、歩行者が現れず、民家もまだ見えてこない。それら全てが見えてきた頃には、人物の足は定まっており、何の変哲もない運動靴を履いている。

 そして電車は、とある駅で停車した。

 その駅では、物心がついて間もない、小さな子供たちが二、三十人乗ってきた。仲良さげに会話をする集まりがあれば、玩具を使って遊ぶ集まり、あちこちへ動き回る者など、様々な人間模様がある。

 扉が閉まり、電車が動き出すと、各々で時間を使っている中、人物は車窓を見つめる。隣や向かい、近くに座る者には、一切興味を示さない。それでも子供たちは、時々喧嘩をしながらも、皆笑っていた。

 電車が走り出してから少し経った頃、人物の周りから子どもが遠ざかり始めた。誰一人として、人物の近くに座ろうとはしなくなり、それどころか、人物に対する嫌悪の気持ちを遠巻きに話すようになっていた。

 しかし、一人だけ人物に積極的に話しかける者が現れた。

 後方の車両から移動してきたその人は、人物の向かいの席に座り、駅に到着するまでの時間、何度も話しかけ、時には隣に座って触れたりもした。

 ところが、駅に着くとその人は、人物に挨拶をして降りて行った。他にも降りていく人は多かったが、殆どが変わらず席に着いたままでいる。そして、新たに乗ってくる客は、現時点の乗客よりも少しだけ多い。

 今度の乗車客は、小学生。相も変わらず人物の周りは空席のまま、電車は発進する。未だに人物に対する嫌悪の会話は消えず、別の車両でも、人物に対する悪口は横行している。

 人物の座る車両に、一人の大人がやってきて、言葉を発する。

「元から80点取れて、努力で100点にするよりも、元が30点だけど、70点まで上げられた方が良いでしょ?」

 その言葉に、周囲の子供は頷き、一様に納得した姿を見せる。大人の前では、誰もがただ黙って過ごし、通り過ぎればまた、嫌な会話が人物に届く。

 時間が経つにつれ、周囲の会話は小さくなっていき、人物に微かに届く程度の声量へと変わっていった。

 駅を出発してから、三度目の雪景色を通り抜けた頃、前方の車両から、一人の男の子がやってきた。その子は、常に人に囲まれ、色々な話をしていた。

 更には、人物にも分け隔てなく話しかけ、人物の周りには、少しずつ人がやってくるようになった。しかしそれは、人物に対する偏見が無くなったことを意味するものではなかった。

 その証拠に、小さな声量での会話は一向に消えず、人物の周りには、数人だけが残った。その数人は、人物の他にも話し相手が沢山いたが、最終的に人物の元へ行き、人物に向けて声を出していた。

 次の駅が見えてきた頃、人物の足の全容が定まり、黒い長ズボンを履いている。

 そして、いつまで経っても消えない周囲の会話は、次の駅に着いても続き、それどころか、また大きくなっていき、誰も隠そうとはしなくなった。

 電車の停まった駅では、たった二人だけが降り、二十人近くの人が乗ってきた。初めは、人物の隣に座る者も現れ、向こうから話しかけることも多かったが、それも束の間、電車が少し進めば、また人物の周りは空席になり、周囲の会話の数も声量も増していった。

 ただ中には、輪の一員ではあるものの、その会話には参加しない者もいたが、やはり人物の周りには誰も寄り付かない。

 駅に到着するまでは、人物の近くにいた人の内、数人が人物を遠巻きに罵る輪の方へ移動しており、結果として、人物の近くには、五人が残っていた。

 その五人も、自ら人物に話しかけるといった行動は起こさず、どの輪にも属せなかったあぶれ者の傍観者や、その反対に、どの輪にも馴染めるが、一時的に輪を離れた人気者が人物を気にかけていた。

 その態度の真偽は定かではないが、人物は、静かな揺らぎを見せた。

 輪の会話に参加しない者は、密かに人物たちを窺い、人物から離れていった者は、お構いなしに人物への遠回しな悪口を続けていた。

 車両のほとんどが、人物をまるでばい菌のように扱い、嘘の情報まで流しだす。当然、それを真に受けているのは、情報を流している当人たちだけだが、その人数故、是正しようとする誰かは現れない。

 次の駅が見えてきた時、電車は大きく揺れ、横転。乗客のほとんどが大怪我を負い、中には、立ち上がる事すら出来なくなる者も大勢いた。

 しかし、人物を気にかけた五人と輪の会話に参加しなかった一部の人には、一切の影響が出なかった。そのため、無事に動ける者は電車を降りて、駅へ自力で歩いていく。

 無傷で済んだ者がいなくなった車内に取り残された者は、人物から広がる無数の手に足を引っ張られ、ここではないどこかに連れていかれるのだった。

 車内が再び、人物一人になった直後、何事も無かったかのように電車は、駅に停車して、全く知らない高校生を数十人を乗せて走り出す。

 人物の服装も定まり、軽くシワのついたワイシャツを着ている。そして、しばらくの間は、人物の周りは空席だったものの、直ぐに人が座るようになり、人物を罵る者は、別の車両に少しいる程度だった。

 途中、乗り換えもあったが、人物はそのまま乗車を続けるも、その表情は、時間と共に曇っていく。扉の上の電光掲示板には、”文系線”と表示されている。

 ただ、今までとは違い、人物の周りには、確かに人がいる。人物に向かって積極的に話しかけ、別の輪へ行っても、悪口を言わず、最終的には人物の元へ戻ってきていた。

 決して多くはないが、間違いなく、人物にとって友人と言える存在達だった。

 駅が近づき、電車が停まると、人物を含めた全ての乗客が降りて、改札を抜けて行く。

 各々が違った道を歩いていき、人物もまた、乗客とは別の道を歩く。そして、人物の長く伸びた髪が、春一番になびく。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございます。いかがでしたでしょうか。


 今回は、私の活動一周年を勝手に記念して、短編作品を書いてみました。

 私の実体験を基に、人物を取り巻く、人による環境をテーマにしたお話でした。

 また、今回は学校生活にのみ焦点を当て、家庭環境については一切言及しませんでしたが、特に意図は無いです。単に今回の話では、学校環境の事しか書けなかっただけです。

 小学生の頃に、「得意科目より苦手科目を勉強した方が良い」と教えてきた当時の担任を、私は絶対許しません。高校のコース選択で、「理系に行けば良かった」と何度も後悔した覚えがあります。

 ここから先は、私の家庭環境について少しだけお話するので、興味の無い人は、閉じてもらって大丈夫です。


 私には、兄が三人いて、私は末っ子です。ですが、甘やかされた経験などは無く、厳しくされた経験も無い、かなり放任的な親の元で生まれ育ちました。

 母は、仕事で常に家に居らず、家事は全て父がしておりました。そのため、母に関する思い出や印象が全く無いです。

 夫婦が揃って会話をしている所も、1、2回しか見たことないです。

 ただ、両親は比較的まともな人でしたが、問題は兄達です。長男は、理不尽な暴力を日常的に振るうクズで、小学生の頃は、ほぼ毎日殴られ、蹴られ、時には髪の毛を毟られたり、頭を壁に打ち付けられたりされました。

 私が中学に上がるタイミングで、高校を卒業し、家を出たので、内心「二度と顔見せんな。どっかで死んでくれ。」と真剣に思っていました。

 次男は、精神的に追い詰めてくる奴で、色々人に文句を言う癖に、自分は一切改善しないロクでなしで、冷蔵庫から取り出した飲み物を自分の手元に置いて、片付けないのが当たり前の、救いようの無いデブでした。

 おまけに、自分の非を認められず、他人の粗を探して、下げることしかしない自分勝手で傲慢な陽キャ気取りだったのを憶えています。

 三男は、全く干渉して来ない人だったので、特に思うことは、当時も今も無いです。傷つける事が無ければ、助けてくれる事も無いそんな人でした。


 可哀相アピールをするつもりはありませんが、私はこういった経験があるからか、協調性や感受性が他者と比べてだいぶ乏しいです。それで苦労した経験もあるので、実りのある幼少期を過ごせるかどうかで人生変わってくると思います。

 もし今後、幼児と関わる際には、成長の妨げにならない程度に守ってあげてください。


 改めまして、ここまで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ