21章 奇跡の戴冠へ
ゲートが開き、年末グランプリが幕を開けた。ドーブルハントはスタートで少し出遅れたが、諸星の手綱と気迫でリズムを取り戻す。前方にはライバル馬、そしてノワールスターに乗った諸星の兄が迫る。
諸星は田中の声を心に思い浮かべる。
「諦めるな、信じろ……お前とドーブルはできる」
その声が心を温め、力を与える。
直線に入ると、ドーブルは全力で加速する。ノワールスターが外から並びかけ、諸星の兄も必死に手綱を操作する。互いの馬が接近し、肩をぶつけるような勢いでせめぎ合う。
諸星は冷静に、ドーブルの呼吸と動きを感じ取りながら手綱を操る。
『行け、ドーブル!諸星!』
どこかから田中の声が聞こえた気がした。
ドーブルは前脚をさらに伸ばし、最後の一歩でノワールスターをわずかに抜き去る。観客席は歓声に包まれ、ゴール前の空気は一瞬で止まったかのような緊張感に満ちた。
ゴール後、諸星は肩で息をしながらドーブルの首を抱きしめる。振り返ると、ノワールスターに乗った兄が馬上から静かに笑った。
「お前ら二人には負けたよ……」
諸星は息を整えながら微笑む。 「いや、三人だよ……田中さんも、一緒だ」
涙が頬を伝う。田中の声と手紙が、ここまで導いてくれたことを実感する瞬間だった。ドーブルも鼻先を寄せ、諸星の胸の鼓動を感じ取る。
悲しみもあったが、二人と一頭の絆は確かで、これからも田中の想いを背負いながら前へ進むことを誓った。




