表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奪われたものは要りません  作者: みん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/91

88 補充

**セレーナ視点**



『お互い少しずつ慣れていこうか』


と言ったのは誰だったか──



あれから婚約が調ったのは、あっと言う間だった。噂が広まっても、概ね良好な反応だとは聞いていたけど、一代限りの大公とは言え、ジェラール様を狙っている令嬢は居るだろうから、婚約が調う迄には色んな問題が出て来るかも?と覚悟をしていたけど、何の問題も無く国王様とロクサーヌ様からも『ジェラール(叔父様)を受け入れてくれてありがとう』とお礼を言われた。


国王様と王太女様が『よし』と言ったのだから、他の誰かが反対するような事はなく、ジェラール様との婚約は直ぐに調った。しかも、それと同時に大公の爵位の返納の話も進み、これは色んな手続きや引き継ぎがあるから、正式に爵位を返納するのは1ヶ月後となった。



「その手続きや引き継ぎやらで、その1ヶ月間は王城に滞在する事になった」

「それは仕方無いですね。私の時間がある時は、差し入れを持って行きますから、1ヶ月間頑張って下さいね」

「ありがとう、セレーナ。でも、1ヶ月も離れて過ごすのは寂しいから、少しセレーナを()()させてもらおうかな」

「補充?」


“私を補充する”とは一体どう言う意味なのか?全く意味が分からなくて首を傾げていると、ジェラール様に抱き寄せられた。


ーこれが……補充?ー


確かに、抱きしめられるのは恥ずかしいけど、ジェラール様は温かいし、その温かさは安心するし心も満たされる。だから、私もジェラール様の背中に腕を回して抱きつくと、ジェラール様の体がピクリッと反応した。抱きつかれるのは嫌だったのか?と焦っていると──


()()()()で済ませようかと思ったけど、受け入れてくれるならもう少しだけ──」


と言って、ジェラール様が私の頬に手を添えて顔を上に向けさせると、そのまま軽くキスをされた。




**ジェラール視点**



「何故1ヶ月も王城に縛り付けられないといけないんだ!?」

「諸々の手続きがあるからだと言っただろう」

「魔法陣があるから、通いでも良いですよね?」

「浮かれている叔父様から、セレーナを守る為です」

「…………」


兄上ではなく、ロクサーヌにピシャリと言われて、口を噤む。

確かに、俺は浮かれている。もう毎日セレーナが可愛くて仕方無い。昨日も正直、危なかった。抱きしめるだけで終わるつもりが、まさか腕を回してもらえるとは思わず──


「ロクサーヌ、ありがとう」

「理解してもらえて良かったです」


1ヶ月も離れるのは辛いかもしれないが、気持ちを落ち着かせるには丁度良いのかもしれない。そんな事を思いながら、久し振りの王城での生活が始まった。




王城生活5日目



『叔父様、今日の昼食は私の庭のガゼボに来て下さい』とロクサーヌから誘いを受けた。なんでも、アラールが王城に戻って来ているそうで、一緒に昼食を食べる事になった。ナディーヌについての報告を兼ねてなのかもしれない。



「叔父上、お久し振りですね」

「元気そうだな」


久し振りに会ったアラールは、以前よりも逞しくなったようだ。報告では、騎士としてはまだまだひよっこも同然だが、真面目に訓練を受けて力も付いてきているようで、パルティアーズの騎士達とも上手くいっているようだ。


「父上にも報告しましたけど、先代のパルティアーズ公爵が亡くなりました」

「そうか……」


森の巡回中に行方が分からなくなり、捜索をした結果、その翌日に片足が無い状態で発見されたそうだ。魔獣にやられたのだろう。


「その先代の葬儀は、現当主の意向で密葬に近い形で執り行われました」


“パルティアーズの恥晒し”


先代はパルティアーズの当主でありながら、剣すら持てなかったから、パルティアーズの騎士達からは陰ではそう呼ばれていた。だから、密葬と聞いても驚きはない。


「何と言うか……アリシア公女は少しホッとした感じでした」


最後の最後にようやく母親らしい事ができた公女。実父が亡くなった悲しみより、もうセレーナに害を及ぼす者が居なくなった事に安心したのかもしれない。もっと早くに気付いていれば、セレーナ(大切なもの)を失わずに済んだのに。


「ナディーヌですが……彼女はおとなしくなってはいるけど、相変わらずと言ったところですね」


罪の意識があるのか無いのか。世間には“本物の公女の娘”となっているから、貴族からのお茶会の誘いもあり、それにも普通に参加しているそうだ。ジェイミーはもともと外面は良く、外でトラブルを起こす事も傲慢な態度を取る事もなかったから、評判も良い方なのかもしれない。

そんなジェイミーに、俺は全く納得はいっていないが、セレーナが名を渡して生かしたのだから、俺から何かを言ったりする事は無い。



多分────



「あ、遅くなりましたけど、婚約おめでとうございます。彼女は元気ですか?」

「ありがとう。元気にしている。アラールの事も気にしていたから、元気にやっていると伝えておくよ」

「叔父上の都合で良いので、一度謝罪の場を設けてもらえたらと思ってます」

「分かった」


アラールは、パルティアーズでの生活でマトモになったようだ。


「アラールのお花畑も、ようやく無くなったのね。これから、どうしたいのか……決まったの?」

「うん。私は、これからは騎士として父上やロクサーヌや国を護っていきたいと思っている。だから、もう暫くの間はパルティアーズで過ごしながら、力を付けていきたい」

「分かったわ。私からもお父様にお願いしておくわ」


これで、兄上も一安心と言ったところだろう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ