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奪われたものは要りません  作者: みん


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86 ジェラールの困り事?

男爵となった私とオリビアさんだけど、今迄の生活と大きく変わる事はなかった。


ただ、少し変わった事と言えば、私がロクサーヌ様とお茶をする為に登城した時に、今迄よりも他人(ひと)からの視線が多くなったような気がする事。『気のせいでは?』と言われればそうかもしれないし、『自意識過剰だ』と言われればそれまでの話。

今迄は登城しても、2、3人とすれ違うかな?だったのが、5、6人以上の人達を見掛けるようになり、たまに声を掛けられる事もある。その声を掛けられるのも、だいたい3パターンに分けられる。

一つ目は『薬の事なんですけど』と、薬についての質問。

二つ目は『銀色の髪が綺麗ですね』と、私の容姿を褒めてくれる。

三つ目は『これからも応援しています』と、私へのエール。


一つ目に関しては、男爵を叙爵された薬師だから、色々相談してもらえるようになったんだろうと思うと、正直嬉しかったりする。

二つ目も、お父様と同じ色や私を褒めてもらえる事は、お世辞だとしても嬉しい。

ただ、三つ目の意味がイマイチ分からない。薬師としての応援かと思っていたけど、どうやらそうではないみたいで、『ありがとうございます。これからも薬師として頑張ります』とお礼を言うと、『隠さなくても大丈夫ですよ!』『憧れます!』と、予想外の反応が返って来る。

薬師と言う事を隠した事は無い。王城付きの女官が薬師に憧れると言うのは…少し無理がある。


それとは反対で、男の人からは避けられたりもする。以前は気さくに話し掛けてくれていた騎士の人も、最近では軽く挨拶を交わすだけになった。もう少し話をしようとすると『これから訓練があるから』と言って、すぐに去られてしまう。



「私、嫌われたのかなぁ?何かしたのかなぁ?」

「最近は、訓練の時間が増えたと言っていたから、その言葉通りの意味なんじゃないかな?セレーナが嫌われてる事はないと思うよ」


ピサンテでの夕食の時間に、ジェラール様に相談すると、そう言って頭を優しく撫でてくれた。


ーこの手の温かさに、今迄どれだけ救われただろう?ー


「ジェラール様は、私が名前を奪われて曖昧な存在だった頃から、私を信じてくれて優しくしてくれて、今でもこうして優しいままで……本当に感謝してます。いつもありがとうございます」


素直にお礼を言う。


「信じているのは、曖昧な存在だった頃から、セレーナの目が真っ直ぐ前を向いていたからだ。優しいかどうかは分からないが、優しいと思ってくれているなら嬉しい限りだ。私の方こそ、いつも料理を作ってくれてありがとう。ただ、困った事も一つあるけど……」

「困った事ですか?私に何かできる事はありますか?」


私が困っていると助けてくれるジェラール様。ならば、ジェラール様が困っていると言うなら、私ができる事なら助けたい。私にできる事なんて微々たるものだろうけど。


「セレーナの作る料理が美味し過ぎるんだ」

「ん?」

「王城で出される料理も美味しいんだけど、どうしても違う感じがして、あまり食が進まないんだ」

「ありがとう……ございます?」


ーそれは、喜んで良いのか悪いのか?ー


「私も、何を作ってもジェラール様が『美味しい』と言ってくれるから、作るのが楽しいんです。ジェラール様が居なかった時は、楽しくなくて……なので、ジェラール様が喜んで食べてくれているうちは、料理を作らせてもらいますね」

「それは、私が『これからもずっと作って欲しい』と言えば、ずっと作ってくれると言う事?」

「はい。なので、飽きたりしたら言って下さい」


本当に『飽きた』と言われたらショックかもしれないけど、その時はその時で受け入れるしかない。


「多分、いや、きっとこれから先も飽きる事はないと思う。だから、余計に困ったなぁ…」

「そう言ってもらえる事は嬉しいですけど……何が困ったんですか?」


ここでなら、いくらでも料理は作れる。


「これから先も飽きる事はない。だから、これからもセレーナの手料理を食べて行くには、どうしたら良いのかな?と思ってね」

「ジェラール様がここに居ると言うなら、これから先も喜んで作らせてもらいますよ?」

「私がここに居るなら?本当に?」

「はい」


と、私が素直に肯定すると、ジェラール様はより一層笑みを深めた。


「それなら、()はずっとここに居るけど、それでも良いのか?」


ーん?今、“オレ”って言った?何か…雰囲気も変わった?のは気のせいかな?ー


「そう…ですね……ジェラール様なら大丈夫です」

「そう言ってくれるなら、これから先も、俺は喜んでセレーナの側に居るから、俺の事を受け入れてくれる?」

「はい」


ーあれ?私、ひょっとして、何だか大変な事を口にした……かも?ー


なんて事を思っていると、ジェラール様が私の手に手を添えてから、改めて私と視線を合わせた。


「俺は、セレーナの料理だけじゃなくて、セレーナ自身の事も好きなんだ。だから、俺と結婚──は早いだろうから、俺と婚約して欲しい。これから先もセレーナの隣に居られる事を、確実なものにしたい」

「っ!?」


驚きのあまり、暫くの間、言葉を口にする事ができなかった。








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