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奪われたものは要りません  作者: みん


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74 パルティアーズ領での日々

*アラール視点*



『お前の王位継承権を剥奪する。それと、お前は暫くの間、パルティアーズ領でのナディーヌの監視を命じる』



もともと、自分が王位を継承するとは思っていなかったし、ロクサーヌが立太子した事は当たり前で、私も心から祝福した。そのロクサーヌが即位した後は、私が側で支えていけたら良いな─と思っていた。

だから、王位継承権を剥奪されても、今迄通りで何も変わらないと思っていたけど、王都から離れてパルティアーズの領地での監視役を命じられた。


これは、罰なんだろう。


パルティアーズの領地はゼロクシア王国の最南端に位置している。隣国との境にある広大な森のお陰で、隣国から攻め入られる事は滅多に無い。その理由は、その森は魔素が多く発生していて、魔素が溜まりやすいせいで魔獣の出現率が高い。おまけに、溜まり過ぎた魔素が穢れになりやすい為、隣国とはお互い協力し合って、魔獣討伐や穢れを浄化しなければ国を護れないし、生きていけないからだ。そんな理由から、パルティアーズに居る騎士は、国の1、2を争う程の精鋭揃いだ。そんな所に、“監視役”としてだとしても、まだまだ見習い程度の実力しかない私が居ても、迷惑にしかならない。

それに、監視役と言われていても、おそらく、討伐にも参加するようにと言われるだろう。全ては、自分が招いた事だと理解はしている。でも──と思ってしまう自分も居る。


もし、ナディーヌが嘘をついていなければ

もし、カイリー夫人が闇魔法を使っていなければ


もし


()()()


生きていなければ




「私は一体何を考えているんだ!」


自分で自分が嫌になる。護るべき民の死を望んでしまう自分に嫌悪する。そんな毎日を繰り返している自分に腹が立つ。だから、パルティアーズ領行きの命は、自分のそんな気持ちを戒める為にも良かったのかもしれない。



『自分の愚かな小さな失言が、どれ程大きな危険を招く事になったのか、よく考えて反省しなさい』



ロクサーヌの言う通りだ。もう二度と、愚かな失態を繰り返さないようにしなければ。


そんな事を決意して、私は公女母娘から2日遅れでパルティアーズ領へと向かった。





******



パルティアーズ領の、パルティアーズ家の邸に着くと、公女とナディーヌが出迎えてくれた。

2人に、これから私が過ごす部屋に案内してもらうと、公女は直ぐに下がっていったが、ナディーヌはそのまま部屋に残っている。


「アラール様が一緒だと、心強いです」

「そう……か……」


以前なら、その言葉1つで舞い上がっていただろうけど、今ではその言葉も私の心には響かない。ただ、ナディーヌが公爵令嬢である事には変わらないし、今迄の自分の事を考えると、無碍にする事もできない。


「お茶でもお持ちしますか?良かったら一緒に──」

「いや、私はこれからする事があるから、それは……また……」

「そう…ですよね!すみません。私もこれで失礼します」


と言って、ナディーヌは慌てて部屋から出て行った。



******



それからのパルティアーズ領での日々は、それなりに忙しいものとなった。


公女は部屋に引き篭もる日が多く、夕食の時に一緒に食べるぐらいしか顔を合わせる事がなかった。ナディーヌは、邸内では自由にしているようで、庭園などでお茶をしている姿をよく見掛ける。そのお茶に誘われたりもするが、私は私で忙しいから、その誘いに応じる事は殆どなかった。


監視とは名ばかりで、実際は毎日、パルティアーズの騎士達と一緒に訓練をし、1日置きに森を巡回し、時には魔獣と遭遇する事もあり、怪我をする時もあった。ここは実力が物を言う世界で、私が第一王子であろうと容赦は無い。最低限、自分の身は自分で護らなければならない。


そんな日々を送る私とは対象的に、ナディーヌは贅沢をする事はないが、特に何かを科せられている事もなく、穏やかそうな日々を送っている。


ーパルティアーズ公爵も、偽者だったとしても、ナディーヌが可愛かった──と言う事か?ー


ピサンテの惨事や呪術を掛けたのも、カイリーの単独だったから、嘘をついていた事実はあるが、ナディーヌが大きな罪を犯した訳じゃない。それでも、何のお咎め無しと言うのは納得がいかない。


でも、()()パルティアーズ公爵が、ただただ黙っているのも腑に落ちない。勿論、父上の手前、始末したくてもできないと言う事もあるだろうけど、あの公爵の性格なら、秘密裏に動いてもおかしくない。


「………いや……もう動いているのか?」


だから、公爵がおとなしいのかもしれない。もし動いているなら、()()()にまた危険が迫る可能性がある。


「少し調べてみるか……」




それが償いになるとは思っていないが、少しでもあの子が危険な目に遭わないように。





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