表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奪われたものは要りません  作者: みん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/91

71 温かい人達

地下牢を出た後、ロクサーヌ様の案内でやって来たのは庭園だった。


「一緒にランチをしようと思って、庭園に用意させているの。花を見ながら食べるのは気持良いでしょう?」

「ありがとうございます」

「セレーナの作った料理も美味しいけど、ウチの料理も美味しいから楽しみにしてて」


きっと、色々と気遣ってくれているんだろう。全く落ち込んでは無い。これでスッキリした──と言いたいところだけど、少しだけ悲しい気持ちが残っている。後悔も未練も無いけど、最後に“お母さん”の言葉が聞きたかった。


「あら…やっぱり来てたのね」

「やっぱり来てた?誰が──」


と、ロクサーヌ様の方を見ると、その先にジェラール様が居た。


「ジェラール様?」

「セレーナ、お疲れ様。大丈夫?」

「はい…言いたい事は全部言えました」

「そうか……」


ぽんぽんと優しく頭を撫でるジェラール様の手が温かくて──


「結局、最後迄あの人は、私自身を認めてはくれませんでした……」

「そうか……」

「だから、私から………捨てて来ました……」

「うん……頑張ったんだな……」

「はい……」

「泣きたければ泣けば良い。誰も見てないから」


どうやら、涙が出ているようだ。

そう言われて周りを見ると、ロクサーヌ様の姿もなく、私とジェラール様だけになっていた。ロクサーヌ様は、何処に行ったのか?


「でも……ジェラール様に見られてます」

「なら……こうすれば見えない」

「え?」


そう言うと、ジェラール様は私の顔を自分の胸に引き寄せてから、私を抱き寄せた。


「これで私も見えないし、セレーナの顔も隠せるだろう?ここで、思い切り泣けば良い」


ーどんな理屈なの?ー


と思いながらも、やっぱりジェラール様は何もかもが温かくて優しくて──


「ありがとうございます」


と言って、暫くそのままジェラール様に身を預けた。






今の自分が、本来の姿に戻っていた事をスッカリ忘れていた。傍から見て、どう見えていたか──なんて事は、その時の私は全く気付いていなかった。





暫く泣いて、落ち着いた頃に、ロクサーヌ様とアデールさんが戻って来た。


「さぁ、泣いた後は美味しい物を食べましょう」

「はい……」


やっぱり、私が泣いていた事はバレバレだった。恥ずかしいけど、スッキリしたのも確かだ。


「まさか、私と同い年とは思わなかったわ」

「私自身も驚きました」


学生生活をすっ飛ばして成人してしまった。平民は、家族でお祝いをするぐらいで、貴族のようなデビュタントの為のパーティーはない。


「遅くなったけど、お祝いをしないとね」

「別に───」

「アデールの言う通りだな。成人のお祝いは一生に一度の事だからね」


こうやって、私の事を思ってくれている人達が居る。


「ありがとうございます。嬉しいです」

「そのお祝いには、私も呼んでね。勿論、アラール(バカ)は呼ばなくても良いから」

「「呼ばない(わ)」」

「ふふっ………」



それから4人で、ランチを食べながら楽しい時間を過ごした後、ジェラール様とアデールさんと私がデミトリア邸に帰ったのは夕方だった。


久し振りのデミトリア邸でも、“お疲れ様会”と称して沢山の料理が用意されていた。私が好きな物がズラリと並んでいる。『好きです』と言った事はなくても、私が好きな物を分かってくれているのかと思うと、本当に私は幸せ者だなと実感する。きっと、公女様は私の好きな物なんて知らないだろう。


その日の夕食は、久し振りにエルトン様とロイド様とマリッサ様も居て、大人数での夕食になった。皆が色んな話をしてくれて、ここでも楽しい時間を過ごす事ができた。あまりにも楽しくて、時間を忘れていたせいか、疲れていた事もあったようで、私はそのまま机に突っ伏して眠ってしまった。




*ジェラール視点*



「寝てしまったな」

「今日は色々あったから……」


地下牢でどんなやり取りがあったのかは、アデールから聞いていた。まさか、名前を取り戻した後、ジェイミーにあげるとは思わなかった。


「このままだと可哀想だから、マーロンにでも運ばせて──」

「私が運ぶよ。ピサンテの家の部屋に」

「グリンデルバルド大公様が?ピサンテに?」

「今日は…ピサンテの家の方が良いだろう」


デミトリア辺境伯は『どうして?』と言う顔をしているが、アデールは『そうね』と呟いた。

あんな母親でも、切り捨てた事に全く傷付いていないと言う事ではないだろう。だから、せめて父親の思いが詰まった家でゆっくり寝た方が、セレーナの心も落ち着くかもしれない。


「それじゃあ、私が連れて行くから、皆はゆっくりしてくれ」


「明日、そっちにセレーナの様子を見に行くから」

と言ったのはエルトン。


「ジェラール、セレーナの事、よろしくね。また明日……ふふっ………」

と、何故か笑うアデール。


何故アデールが笑ったのかはわからないが、俺はセレーナを抱き上げてピサンテの家へと転移した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ