50 お茶のお誘い
「セレーナ、早速なんだけど、ロクサーヌからお茶の招待状が来た」
「本気だったんですね」
ジェラール様から招待状の手紙を受け取る。
社交辞令的なものだと思っていたけど、招待状をもらったのなら断るわけにはいかない。
「“叔父様と一緒に”とあったから、気が進まなければ私を理由にして断る事もできるけど、どうする?」
「初めてのお誘いで、しかも王城だから緊張はするけど、行きたいです。だから、ジェラール様も一緒にお願いできますか?ジェラール様が一緒だと、心強いし安心するので……」
「素直なセレーナは可愛いね。勿論、一緒に行くから、ロクサーヌにも行くと返事をしておくよ」
ロクサーヌ様にまた会えるのは、本当に嬉しい。それに、タイミング的にも丁度良かったのかもしれない。
と思ったのは、私だけではなかった。
「きっと、向こうは気付いているから、セレーナを探している筈よ。そこで、セレーナが王都に現れたら……」
「きっと動くだろうね」
アデールさんもエルトン様もジェラール様も、私と同じ事を考えていた。
私は知らなかった事だけど、魔法陣の調査を始める少し前ぐらいから、パルティアーズ公爵邸にカイリーさんを監視させる密偵を潜り込ませているそうで、その人から“誰かを探しているようだ”と言う報告が上がっていたそうだ。それと、最近は体調も良く無いらしく、ジェイミーがカイリーさんを心配して学校を休む事もあるらしい。カイリーさんは、パルティアーズにとっては孫娘の恩人だから、手厚い医療を受けているそうだけど、体調はあまり良くはなっていないそうだ。
それは当たり前な話。ただの体調不良じゃなくて、呪詛返しを食らっているだけだから、医療で治る筈がない。勿論、『呪詛返しだから』と言える筈もない。
「このままだと、目は確実に見えなくなるだろうし、娘の存在もどうなるか分からなくなるから、セレーナを見付けたら直ぐに接触して来るだろうね。でも、そうなれば、もうこっちの思う壺……だ」
カイリーさんは知らない。私の周りにどんな人達が居るかなんて。きっと、私は未だに独りだと思っているに違いない。
「だから、これからはセレーナは1人で行動するのは控えるように。必ず、ジェラールかアデールか私と一緒に居るように。と言っても、絶対1人にはなれないと思うけど」
「1人になれない?」
どう言う意味なのか分からず首を傾げると、「気付いてなかったのね」と言って、アデールさんが説明してくれた話には驚いた。なんと、私には国王様から“影”と呼ばれる人が密かに付けられているんだそうだ。
「知らなかったし、全く気付かなかった……」
ロクサーヌ様が来た時も居たそうだけど、その時も全く分からなかった。
「普通は気付かない。寧ろ、気付く事の方が珍しいからね」
でも、その影さんに、私は常に護られていると言う事だ。
「えっと……いつもありがとうございます」
と、取り敢えず、どこへなりとも分からないけどお礼を言っておくと、少しだけ空気の流れが変化した気がした。
******
それから3日後
私はジェラール様と一緒に王城へとやって来た。私の存在がある意味極秘な為、特別に許可をもらって転移の魔法陣を使用してやって来た。
「王城……凄い……ですね…………」
「ゼロクシアの王城は、まだ比較的シンプルな方だと思うよ」
「マジで……すか!?」
これでシンプルなのか!?と、思わず口調が崩れたのは許して欲しい。
渡り廊下に並ぶ支柱は大理石だった。城内に入ると、所々に装飾品が置かれていて、それらを倒してしまったら!!と、廊下をただ歩くだけでも緊張してしまう。『歩くだけでは倒れないよ』と、ジェラール様には笑われた。
そんな立派な廊下を歩き続けて、王城の少し奥にある豪華な扉の前に辿り着くと、ジェラール様は何の迷いもなくその扉をノックした。その扉の前には両サイドに騎士が立っているけど、ジェラール様を目で確認しただけで、動く事も話す事も無かった。
「ロクサーヌ、入っても良いかな?」
と、ジェラール様が声を掛けると、内側から扉が開かれた。
「グリンデルバルド大公殿下、セレーナ様、お待ちしておりました。中へお入り下さい」
扉を開けてくれた侍女らしき人が、恭しく頭を下げている前を申し訳無く思いながら通ると、その先にロクサーヌ様が居た。
「セレーナ、来てくれてありがとう」
「こちらこそ、招待していただいて、ありがとうございます」
「ロクサーヌ、私も居るんだけど?」
「あ、叔父様もありがとうございます」
「うーん……納得いかないけど、まぁ良いか?」
と言いながら、2人とも笑っているから、いつもこんな気楽な感じの仲なんだろう。
「さあ、2人とも座ってちょうだい」
「ああ」
「はい」
ロクサーヌ様がそう言うと、数人の侍女達がお茶の用意を始めた。




