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奪われたものは要りません  作者: みん


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47 可愛い願い事

訪問5日目の朝は、皆揃っての朝食となった。

平民の私やオリビアさんが居ても、王太女様は特に気にする事もなく楽しそうに話をしながら食べていた。大公様もだけど、王族でも平民を普通に受け入れてくれる人も居るのかと思うと、少し複雑な気持ちになったり……しない事もない………。


王都への帰りは魔法陣で転移すると言う事で、王太女様とごく少数の護衛以外は、朝食後すぐにデミトリア邸を後にした。

残った王太女様は、昼食を食べてから帰る予定で、それ迄はロイド様とマリッサ様と3人でゆっくり過ごしている。


コンコン


「セレーナです。入っても良いでしょうか?」

「良いわよ」

「失礼します」


王太女様の許可を得てから部屋に入る。


「どうしたの?」

「あ…の、もし良かったらお土産にと思いまして…」


わざわざ出迎えてくれた王太女様に、持って来た篭を手渡す。中には、王太女様が気に入ってくれたドーナツをはじめ、クッキーなどの焼き菓子を詰め込んでいる。


「王た──ロクサーヌ様が美味しいと言って下さったので、日持ちのする焼き菓子を色々作って詰め込みました。要らなければ、誰かにでも──」

「嬉しいわ!誰かにあげるなんて事はしないわ!ありがとう、セレーナ!!」


笑顔で受け取ってくれた王太女様。作って持って来て良かった。


「このお礼も兼ねて、お茶に誘うから、必ず来てね」

「は……はい」


ー王太女様に誘われたら、断れないよね?ー


「そろそろ昼食だよ──と言う前に、もう名前呼びをする仲になったのか?」

「叔父様!」

「大公様!?」


そこへ、私の後ろからひょこっと現れた大公様。昼食のお誘いに来たらしい。


「そうなの。それで、今度は私がお茶に誘う予定だから、叔父様と一緒に来てくれるようお願いしてるの。だから、叔父様、その時は宜しくお願いします」

「そうか……分かった。可愛い姪の為なら、セレーナと一緒に行くよ」

「叔父様、ありがとうございます!」


ーこれは、もう絶対断れないやつ!ー


「セレーナ、嫌なら嫌と言っても良いよって言いたいところだけど……」

「ロイド様、大丈夫です。勿論緊張はしますけど……お茶に誘われるのは初めてで……少し嬉しい気持ちもありますから」


王太女様と友達──とは烏滸がましい事だけど、年の近い同性からのお誘いは初めてで、正直に言うと嬉しい。


「そっか」


と言って、ロイド様はニコニコ笑って私の頭を撫でてくれた。



それから、昼食も皆と一緒に食べた後、ロクサーヌ様は少数の護衛さん達と一緒に魔法陣でデミトリアを後にした。




******



「皆、お疲れ様。今日は片付けが済んだら休んでもらって良いわ」

「「「承知しました」」」


ルチア様がそう言うと、使用人達が一斉に動き出し邸内の片付けや掃除が始まった。そんな中、オリビアさんは調合室に行き、私と大公様とエルトン様とアデールさんは応接室にやって来た。


「ロクサーヌに付き合ってくれて、ありがとう。また、これからは引き続き調査を宜しく頼む。あの木の魔法陣に関してだが───」


どうやら、国王様から、あの木の魔法陣に関して調査を進める許可は下りたとの事だった。ただし、魔力を流してみるのは、安全対策を十分に立ててからで、その周りに結界を張る事と、魔獣に対抗できる者を十分に確保、配備させる事が必須条件となった。


「結界を張る事は問題無い。後は、どれだけの人員を配置するかだ」


魔獣が出て来た時の為の人員だから、それなりに武に長けた人じゃないといけない。だからと言って、誰でも良いと言う訳にもいかない。ならば──


「魔獣を“やっつける”んじゃなくて、“眠らせる”とか“何処かに閉じ込める”じゃ駄目……ですか?」

「あぁ、それなら、それなりの魔法使いが居れば問題無いと言うか、私とジェラールとアデールが居れば大丈夫だね」

「しかも、時間で強制送還されるかどうかも確認できるわね」

「それじゃあ、セレーナの案を兄上に報告して、許可を得られたら実行しよう」


それから、他にもいくつかの安全対策を加えた物を纏めてから報告書を作成し、その日のうちに大公様が国王様へと飛ばした。


「それじゃあ、私は部屋に下がるわ」

「私も部屋に戻るよ」

「アデールさん、エルトン様、お疲れ様でした」


アデールさんとエルトン様を見送った後、私も大公様に挨拶をして部屋に戻る事にした。


「大公様、お疲れ様でした。私も部屋に戻りますね」

「うーん……納得いかないんだけどね?」

「はい?」


ー私、何かおかしな事を言ってしまった?ー


「私とセレーナとは、それなりに同じ時間を過ごして来たし、それなりに仲良くやってると思うんだけどね?」


“仲良く”とは、少し烏滸がましいかもしれないけど、それなりに同じ時間を過ごしているのは間違いじゃない。


「会って数日のロクサーヌの事は“ロクサーヌ”と呼んでいたよね?」

「えっと……ロクサーヌ様に言われたので……」


ーやっぱり、王族として、平民の私が王太女様を名呼びするのはアウトだった?ー


「それじゃあ、私の事も名前呼びしても良いと思わない?」

「え?いや………思わな………いですよね?」


ー年上だし、王弟だし、異性だし、無理だよね?ー


「そうか……エルトンもアデールもオリビアも皆年上でも名呼びなのに、私だけ“年上の王族だから”と言う理由で呼んでもらえないんだな……そうか……私だけ………」

「ゔっ……分かりました。頑張って……名前で呼ばせていただきます……」

「うん、ありがとう。これでようやく、私も仲間になれた気分だ」


ニコッと笑った大公様改め、ジェラール様は、なんだか少し可愛らしかった。





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