45 機転
*訪問3日目*
今回の訪問は公務扱いではない為、3日目の今日の王太女様は、学生時代に同級生だったロイド様とマリッサ様と3人で街に出掛けて行った。
その間、私は大公様とエルトン様とアデールさんとでピサンテの調査を続けた。その結果、昨日見付けた不自然な木がもう一つ見付かった。
「詳しく調べてからじゃないと分からないけど、おそらく、この2つの木が出入り口だった可能性が高いわね」
2つの木は、ピサンテの北側と南側とにあり、2つとも近くに家が無い所に立っていた大木だった。2つとも真っ二つに裂けて倒れているけど、燃えた跡は一切無い。燃えてしまうと魔獣を返還できないから、出入り口の木が燃えないように魔法を掛けていたのかもしれない。そのお陰で、カイリーさんの悪事の証拠が手に入るかもしれない。
それと、2、3日おきにアデールさんが目に掛けられた呪術を少しずつ解いてくれているお陰なのか、私の魔力が少しずつ多くなって来ているようで、他人の魔力が分かるようにもなって来た。
「何となくですけど、この木から嫌な魔力を感じますね」
ドロッとしたような、変に絡みつくような重たい感じの魔力。決して良いモノではないと言う事だけは分かる。
「おそらく、禁忌の類の闇系の魔法だろうね。痕跡が残っているならラッキーだ」
「2人ずつで二手に分かれて調査をしよう」
そうして、私とエルトン様、大公様とアデールさんの二手に分かれて大木の調査を始めた。
「魔法陣の痕跡が僅かに残っているけど………」
「読み取れませんね」
強く描かれた魔法陣や、魔力が多く必要とされる魔法の痕跡は残りやすい。今回、この木に刻まれた魔法陣が未だに微かにでも残っていると言う事は、かなりの魔力が必要とされた証拠だ。でも、かなり薄くなっているから、どんな魔法がかけられていたか迄は、読み取れそうにない。感じる魔力も殆ど無い。
描かれた魔法が読み取れなければ、どんな魔法が組み込まれていたのかが分からない。分からなければ『これが出入り口だ』と証明する事ができない。
「もう少し早くに気付いていたら………」
「どうにかして、組み込まれた魔法を読み取れないか、色々試してみようか」
「はい……」
エルトン様が“復元魔法”を掛けてみたけど、魔法陣は反応しなかった──と言うよりは、魔法が弾かれた感じだった。
「上書き除けもされてるみたいだね」
ーとなると、もうこの魔法陣に手を加える事ができないと言う事だよね?ー
「闇魔法だろう──と言う事ぐらいしか分からないね」
痕跡がもっと残っていれば、その魔力を辿って魔法の使い手を見つけ出す事もできるけど、辿れる程の魔力も残っていない。
このまま、カイリーさんの罪は闇の中に消えてしまうのか。
「魔力………あ!エルトンさん!」
「何かあった?」
「上書きが駄目でも、この魔法陣に魔力を流せば発動させる事はできますか!?」
「どうだろう?それはやってみないと分からないけど、この魔法陣を発動させるには、闇属性の魔力が必要に────あぁ!無属性か!!」
私の魔力は無属性で、自分の魔力だけでは何も創り出す事はできないけど、魔法陣のような媒体を発動させる事はできる。属性によって相性があって、威力が変わったりはするけど、魔法陣を発動さえさせれば、その時に組み込まれた魔法が必ず浮かび上がる。
「1つ問題があるとすれば、もし、これが出入り口だったら、魔法陣を発動させると魔獣がやって来るかもしれないって事ですね」
「そうだね。だから、今すぐ試すのは止めておこう。まずは、ジェラールとアデールも連れて、一度デミトリアに戻ってルチア様に報告して、これからどうするのか話し合おう」
「そうですね」
無属性の魔力でも発動するのかどうかは分からない。それでも、少しでも可能性があれば試したい。発動させて魔獣がやって来るのは困るけど、やって来れば、アレが人為的な出来事だったと証明する事ができる。
私とエルトン様は、急いで大公様達の元に向かった。
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ルチア様とエリック様と話し合った結果、魔法陣に魔力を流して発動させるのは、王太女様が王都に戻ってからする事になった。
魔獣が出て来る可能性があるから、その対策をしっかり立てて国王様の許可を得てからになる。
「セレーナ、王太女殿下が、明日時間があれば一緒にお茶をしたいと言っていたわ。2人が嫌なら、ロイドとマリッサも同席で良いからって」
「2人で大丈夫です」
ロイド様とマリッサ様は知らない事が多いから、王太女様と2人だけの方が話しやすいだろう。
「それと、可能であれば、昨日食べたドーナツが食べたいそうよ」
「ふふっ……分かりました」
私は、王太女様ご所望のドーナツと、クッキーを作る事にした。




