43 王太女の訪問
「急なお願いの訪問を受け入れてくれて、ありがとうございます」
「ようこそいらっしゃいました。王太女殿下なら、いつでも大歓迎です」
「ロクサーヌがここに滞在中は、私もデミトリア邸で過ごす事になって申し訳無いが、よろしく頼む」
「畏まりました」
以前、大公様から知らされていた通り、王太女様がデミトリアにやって来た。
第一王子とは双子だから似ているのかと思っていたけど、あまり似ていないように見える。第一王子は国王陛下と同じ白髪に赤色の瞳だったけど、王太女様は金髪にピンク色の瞳で、王妃様に似ている。
「貴女がセレーナね?」
「はい、セレーナと申します。宜しくお願いします」
「先日は、愚弟が失礼な態度をとってごめんなさい。許してもらえるなら、私とはゆっくり話をしてもらえると嬉しいわ」
「はい、時間のある時に呼んでいただければ、すぐにお伺いします」
「ありがとう」
王太女様はにっこり笑うと、ルチア様の案内で屋敷の奥へと進んで行った。
「セレーナ、ロクサーヌを受け入れてくれてありがとう。私も今日から5日間はこの邸に居るから、ピサンテに行く時は一緒に行こう」
「はい、分かりました」
大公様もそう言うと、邸の奥へと進んで行った。
「それじゃあ、今日はポーションの作成をしましょうか」
「はい!」
私はオリビアさんと一緒に調合室に向かった。
お父さんの配合で作ったポーションのうち、いくつかのポーションでは副作用が減少するものがあり、今はそのポーションを作っている。
「エルフの知識で調合されてるから、臨床試験をしなくても大丈夫なのは助かったわ」
「エルトン様のお陰ですね」
エルトン様がハーフエルフじゃなかったら、こんなにも色んな事が前に進んでいなかっただろう。私にも、目を介した呪術が掛けられていたなんて──アデールさんがいなければ、知らないままだった。
「アデールさんにも感謝ですね」
本当に、私は運が良かった。
「どこかに神様が居て見てくれていて、良い子には必ず良い事を与えてくれるのよ。だから、きっと悪い事をした側も、それ相応の報いを受ける事になるわ。なるに違いないわ。ならないとおかしいでしょう?」
「そうですね……ふふっ…………」
特に仕返しは考えたりはしていない。もう、あの人達と関わらなければそれで良い──なんて言えば『緩すぎる!』『優し過ぎるのも駄目!』と怒られそうだから言わないけど。正直に言うと、周りの人達が私の代わりに怒ってくれているだけで、今迄のモヤモヤやイライラや悲しみが消化されてしまっている。“私の事を思ってくれている人が居る”と言うだけで、心が温かくなるから、それだけで良い──と思っている。
「セレーナのお父さんが研究していた、魔力暴走を抑えるポーションは、結局完成されなかったけど、セレーナはどうしたい?」
「できれば、引き継ぎたいと思ってます。アデールさんが居る間に、少しでも助言をもらいながら」
魔力暴走は本当に辛かった。私は運良く生き延びたけど、あのまま訳が分からず死んでしまっててもおかしくないほどの苦痛だった。対処する側にも技量が必要で、誰もが対処できる訳じゃない。それが、ポーションを飲んで済むのなら安心だと思う。
「それじゃあ、今度街に出て魔力暴走に関する本や、薬草の買い付けにでも行きましょうか」
「行きます!行きたいです!」
そうして予定を立てた後、オリビアさんと私はポーション作りに励んだ。
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翌日は、王太女様と一緒にピサンテにやって来た。
村のあちこちには、未だ焼き焦げた後や瓦礫が残っている所もあり、王太女様はそれらを目にする度に足を止めて、その光景を目に焼き付けるように見つめていた。そして、その後は何かを祈るように目を瞑っていた。
「ここがセレーナの家なのね。聞いていた通り……凄いわね」
本当に。この家とその周辺だけが、何事も無かったかのように存在している。
「私も中に入って良い?」
「勿論です。どうぞ」
私が玄関の扉を開けると、王太女様と大公様とエルトン様とアデールさんが家の中に入って行った。ちなみに、王太女様の護衛さん達は外で待機となっている。
中に入った後は、大公様とエルトン様が調べた物を纏めたノートを見せたり、実際に魔法陣を見せながらアデールさんが魔法陣の補足説明をしたりしている。その間、私はお昼ご飯の準備をしている。何故か?
『久し振りにセレーナのランチと、ティータイムにはセレーナの焼き菓子が食べたい』
と、大公様にお願いされたから。
『食べたい』と言われたら、断れる訳が無い。いつも『美味しい』と言って食べてくれる大公様とエルトン様の為に作るのは、本当に楽しい。
ーアデールさんと王太女様の口に合えば良いけどー




